Home 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)

第98時
エネルギー問題、放射線

     2019 2 18(月)、19(火)、20(水)
     普通教室

はじめに
 エネルギー問題は、人類が自然物を人工物に変えることによって生じます。自然物どうしなら、エネルギーは自然な流れに従うので問題は起こりません。


本時の記録


図1:エネルギーに関する資料

 教科書に掲載されているエネルギー関連の数値のまとめです。

(1)日本のGDP:500兆円/年
 → 400万円/人

(2)日本人のエネルギー消費量:5400kW
 → 1200ワットの電子レンジ4台以上を付けっ放し状態

(3)1人の人間が作ることができるエネルギー率:100kW
 → 日本人1人を養うのに54人(5400kW÷100kW=54)が働いている
 → 外国人労働者のエネルギー、自然エネルギーを搾取している?

(4)日本のエネルギー自給率:4%
 →  海外から輸入エネルギー率は96%
 → 日本は海外のエネルギーを奪っている?

(5)一般的な発電効率:45%
 → 発電するときに無駄になる熱エネルギーは55%
 → 利用できない熱エネルギーは、クズエネルギーといえる


図2:放射線に関するまとめ


図3:放射線の特徴

 放射線は自然界に普通に存在するものですが、私たちはそれを見ることも聞くこともできません。私たちの五感で感じることができない自然現象(自然物)です。もし直接感じることができたなら、それは死を意味します。放射線は非常に高いエネルギーを持ち、私たちの身体を構成する細胞ではなく、細胞より遥かに小さな原子を破壊します。原子が壊れることで細胞が異常になったり死んだりします。修復できない速さで破壊されると、生体そのものが死ぬことになります。

 自然界において、すべての生物は自然放射線にさらされ、原子レベルで破壊され続けています。問題は破壊される速度です。私たちの身体の修復速度の方が大きければ、異常は起こりません。

 ラドン温泉は、温泉水に含まれるラドンから放射線を出し、生体内の原子を破壊しています。その話を聞くと怖くなりますが、私のように細胞が劣化(老化)してきている人には良い刺激になるのかもしれません。また、脳細胞は毎日10万個ずつ死滅する、という話を聞いたことがありますが、その数と比較すれば、放射線で多少破壊されても大丈夫なのかもしれません。


図4:放射線の種類

 放射線にはたくさんの種類があります。中学レベルでは、図4のように4つ覚えれば十分でしょう。もちろん、どれもこれもぼんやりしたイメージしかできないでしょう。β線(電子)はわかるでしょうか。ベータ線は『光速で飛ぶ高いエネルギーを持った電子』の粒です。レントゲン撮影に使うX線も日常で聞く言葉です。


図5:放射線に関する単位3つ

 放射線に関する単位
(ア)ベクレル

 ある物質が持っている、放射線を出す能力の単位

(イ)グレイ
 人体が受けた放射線のエネルギー量の単位

(ウ)シーベルト
 人体が受けた悪影響の単位

 上記(ア)〜(ウ)のうち、問題になるのは(ウ)人体が受けた悪影響の量です。この量が多いほど身体を構成する原子が破壊され、細胞が傷つき、死亡までの時間が短くなります。


授業を終えて
 本単元『地球の明るい未来のために』はこれで終了です。

 本単元の最終章『持続可能な社会にする方法を考えよう』について、私見を述べます。

持続可能な社会
 = 人類が『自然に還るもの』だけで生活する社会=

 人類はいろいろな物質を作ることができます。それらの物質はすべて最終的に自然に還ります。億年単位で考えるなら、すべて還ると考えて良いでしょう。

 しかし、その間に地球環境や生物に重大な影響を与え続ける物質があります。私が恐ろしさを感じている物質は二酸化炭素ではありません。プラスチックでもありません。プラスチックは自然に戻りにくい物質ですが、燃焼すれば二酸化炭素と水に分解されます。高温のマグマに触れても同じような反応が起こるでしょう。

 私が一番懸念している物質は『核廃棄物』です。それは生物や物質を構成する原子を無差別に破壊する高エネルギーを持っています。核廃棄物は、数10万年単位で放射線を出し続けます。加熱しても冷却しても同じです。地球で生活するすべての生命体、その遺伝子を破壊し続けます。

 現在、その処理方法はありません。人類は専用の容器に入れ、地中深くに埋めようとしていますが、その候補地はありません。どんなにたくさんのお金をもらっても、その土地は利用できない土地になるからです。モンゴルのゴビ砂漠も候補地の1つですが、どんなに深く埋めたところでも同じような結果になるでしょう。

 その容器の気密性は何年もつのでしょうか。100年、1000年、1万年・・・。仮に、10万年気密性を保ち続けたとしても、地球の地殻は動き続けています。昔、1万年前の日本は朝鮮半島と陸続きであったことを思い出してください。どんなに強固な容器でも、10万年のうちに破壊されること確実です。さらに、いつどこで発生するか予測できない地震の巨大エネルギーを知らない日本人はいないでしょう。

 地下100m、1000mにしても無駄です。水が出たり、高温・高圧に容器が耐えられません。ちょっと考えればわかることなのに、日本政府は原子力発電を推進しています。こうしている間にも、核廃棄物は原子力発電所内にどんどん蓄積され続けています。

 本当に地球の明るい未来を考えるなら、元どおりにできないことをしてはいません。人類の力でも、自然の力でも復元できないことをしてはいけません。これまで、地球の生物は2回絶滅しました。

 1回目は古生代(古い生物の時代)の終焉、2回目は中生代(恐竜などちょっと古い生物の時代)の終焉です。現在は第3世代の生物たちが繁栄する新生代(哺乳類など新しい生物の時代)です。

 この新生代の生物は、いつか必ず絶滅します。それは地球の歴史が証明していますが、その原因は何でしょう。私が考える最有力候補は人類がつくった核廃棄物です。

 簡単に思い描くことができる地球生物の全滅は、核廃棄物からの放射線漏れ出から始まります。もちろん、核爆弾が世界各地で爆発しても同じです。放射線の高いエネルギーが動物・植物・菌などあらゆる生物のDNAを破壊し、自然界ではありえない生物が出現します。

 それらの生物のDNAは不安定で、子孫を残して繁栄することは困難になると思います。仮に子孫を強力に残すことができたとしても、1つの種だけが繁栄することは不可能です。現在の地球が多様な生物が共存する豊かな生態系を築いていることを考えれば、理解できます。

 急速な生態系の変化に生物の個体数が乱高下し、それに何らかの自然要因が重なることで、地球上の生物は一気に壊滅状態になると思います。

 みなさんはご存知でしょうか。世界でもっとも核廃棄物を保有している国を。それは各国の国家機密なので不明ですが、日本がトップ10にランクインしていることは間違いありません。核廃棄物は原子力爆弾をつくる材料であり、その材料を作るために原子力発電所を稼働させている国もあります。日本政府も同じ目的である可能性もあります。

 日本が戦争当事国になった場合、敵国のミサイルの標的は核廃棄物処理場、原子力発所になるでしょう。現在、福島原子力発電所の処理に費やす国家予算は公開されていませんが、おそらく2兆円です。この数値は、毎年2兆円必要とするチェルノブイリ事故より重大事故であることから判断すれば、当然です。

 同じ規模の事故を50箇所で起これば、現在の国家予算100兆円と同じになります。日本国民の税金を全て原発処理のための使うことになります。国家破綻です。私たちは、私たちの子孫にそのような危険、および、金銭的・精神的負担を与えていることを認識するべきです。

 あなたに常識と良心があるなら、今すぐに原子力発電を中止するべきです。それが持続可能な社会になるための第1歩です。核廃棄物問題は次元が違います。経済がどうのとか、エネルギーがどうのではありません。

 子どもや孫に、負の遺産を背負わせているのです。重荷を背負わせるのは、もう止めませんか! 私は本当に悲しい思いをしています。


図6:卒業式までの時間に理科でやりたいこと

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