Home 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)

第92時
観測15 月の満ち欠け

     2019 1 23(水)
     普通教室

はじめに
 新月と満月は前時『観測14 日食・月食』で学習済みです。したがって、月の満ち欠け『新月→三日月→上弦の月→満月→下弦の月→新月』は簡単に理解できるでしょう。本時はそれに、それぞれが見える時刻と方位を追加します。難しいように感じますが、時刻と方位の関係は『観測12 四季の星座の見え方』で学んでいます。10分も使わないうちにほとんどの生徒が思い出すでしょう。そして、月と星を関連づけることでより深く理解へ進むことと思います。

参考・関連ページ
月の満ち欠け3年(1999年)


図1:Aさんの学習プリント(クリックすると拡大します)

本時の目標
・宇宙から見た月と地球からみた月を、正しく理解すること
 1)光っている部分(月の形、月の満ち欠け)
 2)時刻・方位の変化
・それらを説明すること

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)月と地球、地球と太陽の位置関係(5分〜10分)
  前時『観測14 日食・月食』では図の中心を『地球』にしましたが、本時は『太陽』です。太陽のまわりを地球が公転し、その地球のまわり月が公転します(図2)。


図2: 天の北極から見た太陽・地球・月

 図2は、地球が秋の位置と冬の位置にあるときを示しています。

授業プラン
1)冬の位置を、全員で調べてまとめる
 → じっくり
 → これまでの復習をたくさん取り入れる
 → 代表生徒に説明させる
2)秋の位置を、個人の応用問題として考えさせる
 →  各自で書かせる
 → できた生徒から、先生の点検を受ける

(3)宇宙から見た月、地球から見た月(15分〜20分)
  図2は宇宙(天の北極)から見た図です。まず、図にある記号をみてください。2つずつあることがわかると思います。地球を中心にしたA〜Hは、公転する月の位置につけられたものです。位置A〜位置H、とします。縦一列のA〜Hは、公転する月に対応した『地球から見える月』をスケッチするための枠につけられたものです。枠A〜枠Hとします。


図3:月が位置A〜位置Hにあるときの、地球からみた月(枠A〜枠H)

先生のためのワンポイント
 宇宙から見た月の位置に記号A〜Hを決める時、反時計回りならどこから始めても間違いではありません。しかし、新月からスタートからできるようにします。
「さて、これから記号をつけてもらいますが、スタート位置はどこがいいでしょう。センスが問われる問題です」

指導手順
1)上記のように、 記号A〜Hを2組書きます

2)宇宙からみた月に太陽光を当てる(位置A〜位置H)
 太陽を赤く塗ます。同じ赤で塗ります。位置A〜位置Hの月は宇宙から見たものなので、太陽側の半分だけを塗ります。

3)地球からみた月の大きさを書く(枠A〜枠H)
 枠A〜枠Hに、枠いっぱいの丸を書きます。丸は月の輪郭を表します。生徒にわざわざ書かせる理由は、次時に学習する金星の大きさが変化するからです。月は大きさが変わらないけれど、金星は変わる、その理由を深く理解させるためです。ちなみに、月の大きさが変わらない理由は、月が公転しても、月と地球の距離がほぼ同じだからです。

4)地球から月の形を書く(枠A〜枠H)
 位置Aの月(新月)は、地球から光が当たっている部分を見ることができません。鉛筆を使って、枠Aを真っ黒に塗りつぶしてください。丁寧な作業をしたい場合は、月の部分だけぼんやりと黒くします(図3は逆)。
 位置Eの月(満月)は全面に光が当たっているように見えます。枠Eの背景を真っ黒に塗りつぶしてください。そして、丸い輪郭内を月のような美しい色でぬってください。色がない人は、何もしなくても良いでしょう。

5)三日月、半月(上弦の月)、半月(下弦の月)の紹介
 位置(三日月)、位置(上弦の月)、位置(下弦の月)を紹介します。新月は月齢0、三日月は月齢3、・・・ということも紹介します。数学で学習したはずの『弦』と『弧』についても復習しましょう。私は「弦楽器にはどのようなものがありますか?」と発問し、弦のイメージを強化させるようにしています。

6)枠Bに、三日月(位置Bの月)を書く
 これは難しい問題です。がんばってください。いろいろな説明がありますが、Bさん(図4)は観測者が逆さになっていることを指摘しました。
  地球の観測者が逆さになっているのは位置B〜位置Dです。位置F〜位置Hは正立しているので、宇宙から見た月と地球からみた月の輝いている部分が一致します。


図4:地球からみた時の月(枠A〜枠H)を説明するBさん

7)枠Cに、上弦の月 (位置Cの月)を書く
 6)が理解できれば、誰でもできます。


図5:プリントを横にして回転させ、この模式図は『天の北極から見た図』であることを説明するるF君(F君の学級は『上弦の月(C)→三日月(B)』の順に学習しました)

8)残り全ての枠を考えて書き、先生の点検を受ける
 10%の生徒がヒントなしで完成させるでしょう。よくある間違いは、枠Dと枠Fです。膨らんで光っているように見えます。できた生徒には合格印を出し、先生のかわりに個別指導をさせてください。教え合い高め合いの時間です。

(4)いろいろな形の月(枠A〜枠H)が見える時刻と方位(5分〜10分)
 時刻と方位の関係は『観測12 四季の星座の見え方』で学んでいます。まったく同じ考え方なので、思い出せばすぐに理解できます。それを月の形と結びつけるだけのことです。

月の形 時刻
夕 18:00   夜 0:00   朝 6:00   昼 12:00
新 月 (A) 見えない 見えない 見えない 太陽と重なる
三日月 (B) 西(低い位置) 西へ沈んで見えない 見えない 太陽の東に見える
上弦の月(C) 南中する 西へ沈む 地球の裏側 東から昇る
満 月 (F) 東から昇る 南中する 西へ沈む 地球の裏側
下弦の月(G) 地球の裏側 東から昇る 南中する 西へ沈む


図6:J組のまとめ(クリックすると拡大します)

J組の黒板には次のことが書いてあります。
(1)本日2019年1月29日の月(図7)の月齢23.1
(2)月の地球に対する公転周期は29.5日だけど、太陽に対しては27.5日であること
(3)その結果、月が見える時間は1日に50分ずつ遅くなること
(4)月の引力で、潮の満ち引きが起こること


図7:本日を肉眼で観察する生徒

 教室の窓を開け、月を探します。今日は月齢23.1なので、太陽の西にあります。午前中なら観測可能なので、昼間に見える月を確かめさせてください。実際に、その位置にその形に見えると嬉しいものです。


図7:G組のまとめ(クリックすると拡大します)


図8:D組の板書(クリックすると拡大します)


図9:黄色いチョークを使って、地球からみた月の形を解説する私
 解説内容は図10


図10:地球から見て『光っている部分』に黄色、『暗い部分』に×をつけた図
 (クリックすると拡大します)
 この解説は1分〜2分で終了すること。時間を守れないなら、解説していはけない。


図10:秋の位置の正解を示した板書(クリックすると拡大します)

(5)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 このページは丁寧に書いたつもりですが、まだまだ書き足りないような気がします。実際の授業で私が話している時間は10分、生徒たちの合計は30分です。最終的な理解度は上々で、ほぼ全員が理解できました。

関連ページ
月の満ち欠け3年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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