Home 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)

第92時
観測16  金星の見え方

     2019 1 25(金)、29(火)
     普通教室

はじめに
 前時『観測15月の満ち欠け』と同じ手順で展開します。学習プリントの中心にある模式図は『宇宙の中心から見た太陽・金星・地球(・火星)』、右端は『地球から見た金星』です(図1)。


図1:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)

 指導上の留意点は15年前の記録『観察5 金星の見え方3年(2004年)』も参考にしてください。20年前の記録『金星の見え方1年(1999年)』も同様ですが、子どもの発達段階を考慮するなら中学1年生ではなく、3年生で行うべきです。文科省の方はよろしくお願いします。


本時の目標
宇宙から見た金星と地球からみた金星を、正しく理解すること
 1)金星の大きさの変化
 2)金星の光っている部分(金星の満ち欠け)
 3)見える時刻・方位の変化
・それらを説明すること
金星と月の見え方を比較、理解すること
・内惑星(金星)と外惑星(火星)の見え方を比較、理解すること

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介(1分)

(2)太陽・金星・地球の位置関係の確認(3分〜5分)
 金星は、地球内側を回る内惑星です。その公転周期は225日です。地球の公転周期は365日なので、金星は地球よりもぐるぐる回転しています。金星と地球と太陽が並ぶ周期(会合周期)は584日です。


図2:太陽を中心に水星・金星・地球・火星が公転していることの模式図

 図2は『観測13太陽系の天体』で学習済みなので簡単な確認にとどめます。追加事項として、本日2019年1月29日の地球の位置、および、昨日『下弦の月』であったことをあげています。

資料:平均速度
金星 35km/秒(マッハ100)、地球30km/秒

(3)宇宙からみた金星に太陽光を当てる(3分)
 太陽を赤でぬります。同じ赤で、金星太陽光が当たっている部分をぬります(図3)。


図3:太陽・光が当たっている金星・地球(天の北極から見た図)

指導上のポイント
 ここから先は、地球が動かないものとして考えます。
図3の地球は、一番に下にある円です。円の中心にある点は地軸を表していて、地球は反時計回りに自転するだけです。金星は図3のように、反時計回りに公転します。余談ですが、地球が動かないとものとして考えた場合、584日(金星と地球の会合周期)で公転しているように見えます。

(4)地球から見た金星(15分〜20分)
  図3は宇宙(天の北極)から見た金星です。その金星に、位置を示す記号をつけます。それに対応した『地球からの金星の見え方』を示すための枠A〜Fを用意します(図4)。ここまでの準備は前時『観測15月の満ち欠け』と同じです。なお、記号A〜Fのつけ方は学級によって違います。月は新月から始めましたが、金星は特に指定する必要がないからです。


図4:宇宙から見た金星、地球か見た金星

その後の指導手順
1)地球からみた金星の大きさを書く(枠A〜枠F)
 宇宙から見た金星の大きさは変わりませんが、地球から見ると変化します。理由は、地球との距離が変わるからです。これに合わせて、枠A〜枠Hに金星の輪郭を書かせてください。枠Aと枠Fは小さく、枠Cと枠Dはいっぱいにします。

2)金星の形の変化(満ち欠け)書く(枠A〜枠
 前時『観測15月の満ち欠け』の月は左右逆になるように見えることもありましたが、金星はそのままです。簡単に満ち欠けを書くことができるでしょう。ただし、宇宙から見た左右と地球から見た左右が一致するのは、図4のように地球が下にある場合です。地球が下にある場合、観測者は逆さまにならないからです。観測者が逆さまになる時間(夜0:00)は金星が見えないので、そのままの考えることができるのです。


図5:金星が深夜0:00に見えないことを説明するG君
(図4と記号A〜Fの割り振りが異なるので注意)

(5)金星(A〜F)が見える時刻と方位(5分〜10分)
 時刻と方位の関係は『観測12 四季の星座の見え方』『観測15月の満ち欠け』で学んでいます。まったく同じ考え方なので、多くの生徒が教壇で説明できるレベルに達しています。それと金星の形と結びつけることができれば、本時の目標達成です。


図6:金星の見え方のまとめ


表7:金星の形・時刻・方位
 ※表中の(A)〜(F)は、図6のA〜Fに対応しています
金星の形 時 刻
夕 18:00   夜 0:00   朝 6:00   昼 12:00
(A)満月のよう 西の空
(宵の明星)
(一番星)
見えない
(地球の裏側)
見えない 見えない
(太陽がまぶしい)
(B)左半円
(C)三日月のよう
(D)逆三日月のよう 見えない 東の空
(明けの明星)
(E)右半円      
(F)満月のよう


図8:金星の見える方位を説明するIさん


図9:金星の明るさは、距離に比例する
 月は面積に比例するので『満月』の方が明るいが、金星は『満月のように見える』とき、遠く離れているので暗くなる。

 下図10は図9の続きで、その右に書いたものです。


図10:ちょうど半部に見える位置、夕方の観測者から見た金星(クリックすると拡大します)

図10の解説
(あ)半分だけ光る位置
  金星が半分だけ光る位置は、円(金星の公転軌道)との接線を書くことによって求めることができます。下図11は不正確ですが、正確には地球はとてもちいさいので、地球の中心から公転軌道に接線を書きます。そして、公転軌道(円)と接線の接点が、求める点です。


図11:金星が半分だけ光る位置を求めるための図

(い)夕方の観測者が見た金星
 夕方の位置に棒人間を書きます。その足元(本当は地球の中心)から、2本の緑色の線を書きます。 2本の線は、金星を挟むような接線です。ここまで書いたら、先生はしゃがんでください。そして、棒人間の位置に目を持っていき、観測者から見た時、どのように見えるかを示します。示すために、私は黄色のチョークを使いました。太陽光が当たっている部分は『黄色』に塗り、太陽の光が当たっていない部分には『×』をつけます(図12)。


図12:夕方の観測者が見た金星

黄色く塗ったり×をつけたりする方法は、前時『』でも使いました。


図13:本日の板書(クリックすると拡大します)

(6)本時の感想、考察 (5分)


図14:別学級での板書(クリックすると拡大します)


図15:同上(クリックすると拡大します)


図16:図15の続き(クリックすると拡大します)


授業を終えて
 高度の内容ですが、みんなで楽しく学習できたと思います。

関連ページ
観察5 金星の見え方3年(2004年)
金星の見え方1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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