このページはアクティブラーニングを斬る!Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスンです

2 私の能動的学習(アクティブラーンング)実践

2 舌で味を確かめる(体験学習)

      ------ 体験学習に関する考察 ------

2015年6月11日(木)3限、第1理科室

 中学2年生物『動物』感覚器官の学習の場面です。1時間のねらいは『ヒトの触覚、味覚、嗅覚を調べて理解すること』ですが、このページは舌にある味覚細胞の分布を調べている場面を紹介します。所要時間は約5分です。


上:授業中の板書

準備するもの
  1. 食塩(塩化ナトリウム)
  2. 割り箸

先生の言葉
 「舌の表面には、味を感じる細胞があることは知っていると思いますが、それらの味は、たった4種類の味覚細胞の組み合わせで決まることを知っていますか。最近は1つ増えて、5つの味になっているようですが、・・・(中略)・・・さらに、4つの味覚細胞の分布は決まっているようです。理科便覧で調べてみると、・・・(中略)・・・舌の先端部には「甘さ」を感じる細胞が集まっています。そこで、舌の先端部に食塩を載せてみましょう。もし、甘さを感じる細胞しかないなら、塩辛さを甘さとして感じてしまう可能性があります。」

食塩を割り箸に載せる子どもたち
上:食塩を割り箸に載せる子どもたち


上:舌の先端部に載せる様子

 結果は良好で、多くの子どもが「甘い!」と感じていました。もちろん塩ですから、他の部分に付着させてしまった子どもは「辛い!」「痛い!」と叫んでいました。辛さが過ぎると、痛みのように感じるからです。

 また、当日の詳細を忘れてしまいましたが、食塩を自分の手のひらに取り、舌先を出して先端部だけをつけるように指示したほうが単純でわかりやすいように思います。


上:他クラスの板書

 この後、砂糖を出してきて、同じように調べたクラスもありました。同じ白色の粉なので、友だちどうしで行えば楽しいゲームになります。ただし、度が過ぎる遊びになりがちなので、先生方はさじ加減に注意してくださいね。自分の身体を使って確かめようとする子どもたちの学習意欲は高く、目を離すと先生の予想以上のアクティブラーニングを始めてしまうものです。それが大発見につながることもありますが、、、

===以上、舌で味を確かめる体験学習)===

体験学習に関する考察

 文科省の体験活動の定義と比較すると、このページの活動は「体験活動ではない」と感じるかもしれません。以下の囲み記事を見てください。教科活動において・・・(中略)・・・観察、実験等の類のものではなく、と明記されています。つまり、理科の観察や実験のようなものではない、としています。

文科省による『体験活動』
文科省のHP『1.1.体験活動の教育的意義』から抜粋
太字オレンジ色イタリック文字、灰色は Mr.taka による)

体験活動について
 体験活動とは、文字どおり、自分の身体を通して実地に経験する活動のことであり、子どもたちがいわば身体全体で対象に働きかけ、かかわっていく活動のことである。この中には、対象となる実物に実際に関わっていく「直接体験」のほか、インターネットやテレビ等を介して感覚的に学びとる「間接体験」、シミュレーションや模型等を通じて模擬的に学ぶ「擬似体験」があると考えられる。しかし、「間接体験」や「擬似体験」の機会が圧倒的に多くなった今、子どもたちの成長にとって負の影響を及ぼしていることが懸念されている。今後の教育において重視されなければならないのは、ヒト・モノや実社会に実際に触れ、かかわり合う「直接体験」である。

 ※本稿における体験活動とは、教科学習においてその指導目標達成の手段として行われる、例えば観察、実験等の類のものではなく自然教室や臨海学校のように、それ自体、目標や指導計画、指導体制、全体の評価計画などを持つまとまりのある教育活動を意味するものである。

 体験活動は、豊かな人間性、自ら学び、自ら考える力などの生きる力の基盤、子どもの成長の糧としての役割が期待されている。つまり、思考や実践の出発点あるいは基盤として、あるいは、思考や知識を働かせ、実践して、よりよい生活を創り出していくために体験が必要であるとされている。具体的には、次のような点において効果があると考えられる。
(1) 現実の世界や生活などへの興味・関心、意欲の向上
(2) 問題発見や問題解決能力の育成
(3) 思考や理解の基盤づくり
(4) 教科等の「知」の総合化と実践化
(5) 自己との出会いと成就感や自尊感情の獲得
(6) 社会性や共に生きる力の育成
(7) 豊かな人間性や価値観の形成
(8) 基礎的な体力や心身の健康の保持増進

 しかし、同時に、自然教室や臨海学校のように、それ自体、目標や指導計画、指導体制、全体の評価計画などを持つまとまりのある、と書かれています。私のこの実践は、自然教室や臨海学校よりも長い期間、すなわち1年を通した目標と指導計画、指導体制、全体の評価計画をもつ『理科』の中の1つです。

 また、活動と学習は違います。このページで論じているのは学習です。体験学習は、ある1つ教科内における体験にもとづく学習です。したがって、わずか5分の体験(実験)であっても『体験学習』の1つである、と言い切ることができます。子どもは小さな体験の積み重ねによって生きる力を養っていく、と私は考えています。理科以外の教科であって同じように、各教科の先生が胸を張って毎日の体験学習を行うことが大切です。

生きる力は、上記『文科省による体験活動』がもてはやされていた頃(平成17年〜20年)の掛け声です。ゆとり教育総合的学習もこの時期と重なります。生きる力は別として、ゆとり教育と総合的学習は今でも大きな問題として存在していることは、みなさんご存知の通りです。

掲載 2016年(平成28年)12月1日
体験学習について追記 2016年(平成28年)12月11日

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