このページは、Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスンです。

第3章 理科の授業

6 検証実習で感動を追体験する

1 検証実習の基本的な流れ
 検証実習は、教科書に書かれていることが本当かどうか、自分で確かめることです。検証するときは、同じ器具、材料、方法を使います。そして、全員同じゴールを目指します。実習は別ページ『理科の実習を4つに分ける』で紹介したように観察、測定、観測、実験の4つに細分できます。

1) 結論や理想的な結果を示す
 初めに自然法則、原理、実習の目標をなどを明確に示します。教科書や理科便覧の図表をみせるのも良いでしょう。1時間の目標を明示します。

2) 結論や結果にいたる方法を示す
 ゴールや発見にいたる方法を詳細に教えます。器具の操作方法や試料の特性も教えます。場合によっては、先生が手順を演示します。実習の初めから最後まで全てを演示しても構いません。生徒が自分の手で確かめることが検証実習だからです。

3) 生徒が検証する

2 検証実習の特長
 限られた授業時間の中で、生徒実習の時間を最大限に確保できます。そして、生徒が実習で体験したことをもとに考察するので、机上の空論になることを防止できます。もちろん、実習中に生徒自身はたくさんの発見をします。理想に近づくためのさまざまな工夫をして試します。それが最も重要なことです。1つの理論や結論は、100の失敗から生まれることを学ばせる必要があるからです。実験前の予想・仮説、実験後の考察よりも、本物の自然に触れることがことが大切です。これを否定できる自然科学者はいないでしょう。だから、実習が1番が大切なのです。先生と生徒が全力で取り組んでも目標に到達しないこともあります。私はそれでも構わないと思います。自分でやった、それが全ての始まりです。自然を追求したという経験は、全てに勝る学習体験です。

3 目的は、感動を追体験させること
 検証実習の目的は、偉大な自然科学者の感動を追体験させること、です。そもそも、人類が発見した自然に関する知識は、感動の集積です。初めに発見した科学者は、永年の研究の成果が結実した瞬間、その奇跡に打ち震えたことでしょう。奇跡が真実であることを努力が証明したからです。教科書にあることは全て感動の集まりです。その中につまらないものがあるとすれば、それは先生の教え方が悪いだけのことです。理科教師の目標は『自然は感動に満ちていること』を実感させることです。実感する方法は、自分で確かめること、科学者の努力を追体験することです。時間が許す限り失敗させてやりたいものです。

その他の目的
・自然の深さ、自然に対する畏敬や畏怖の感情を体験させる
・どんなに頑張っても理想通りに結果にならないことを実感させる
・「予想させ、方法を考えさせた」という先生の自己満足を防止する

4 生物・地学の検証観察
 図や写真を初めに示します。観察のポイント、区別するポイント、および、観察や区別するための方法を正確に示してから生徒に調べさせます。実際の生物や岩石から、目標物を見つけることは簡単ではありません。目の前にあっても見えないことは日常生活でもよくあります。識別するポイントや方法、典型的な観察結果を教えてください。見えなかったものが見えるようになります。

5 物理・化学の検証実験を行う手順

1) 実験内容を知る
 ア) 偉大な科学者が行なった実験方法と結果を知る
 イ) 実験結果を知る
 ウ) データから推論される法則を知る
 
エ) ウ)とは逆に、理論から求められるデータを知る
 
オ) 予想される失敗データを知る
  ※ できるだけ、定性実験ではなく定量実験(数値を測定する)で行なう

2) 準備する
3) 実験、検証する
4) 実験結果やデータを考察する
   
※とくに、正しくない実験結果(失敗した原因)を説明する


 生徒が目標に到達できなかったときは、上記4)実験結果の考察を行います。なぜ検証できなかったのか、それを明らかにすることは科学的思考力を高めるだけでなく、次の実験につながります。私が物理・化学実験を検証実験の中でもとくに定量実験にしているのは、初めから思考力育成をねらっているからです。その発見は感動を呼びますが、重要なのは発見に至るまでの過程です。理論値に近づくための思考と工夫と実践と検証です。また、私は予想・仮説を立てたり、複数の方法で実験する授業や仮説実験授業を勧めません。仮説実験授業については別べージをご覧ください。

2012年5月22日

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