このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第30時
実験6:いろいろな物質を加熱する

     2012 7 6(金)、10(火)、11(水)
     理科室

はじめに
 「ガスバーナーでいろいろな物質を加熱しましょう。家から、加熱したいものを持って来なさい。燃え尽きたら、次の授業は終わりです」と宣伝しておきました。具体的には、台所にある食塩、砂糖、小麦粉、醤油、マヨネーズ、洗剤、キャベツ、米、ピーマンなど。プリントに添付したい人は、腐らないものが良いでしょう。プラスチックや金属でも構いません。とにかく、加熱したいものを持ってきて、加熱による変化を調べます。黒い炭になるものを有機物、それ以外を無機物として、2つに分類します。なお、有機物と無機物の区別は曖昧なので、中学の教科書の範囲による『とりあえずの分類』で正解です。


上:小さな袋に入れてきたパン粉を、アルミホイルを巻いた薬さじに載せる生徒


本時の目標
1 自宅からいろいろな物質を持参する
2 物質を加熱した時の変化を予測する
3 安全に気をつけて、いろいろな物質を加熱する
4 加熱後の様子から、物質を有機物と無機物に分ける

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • いろいろな物質
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ガスバーナー、マッチ (各2/班)
  • 薬さじ (1/人)
  • ピンセット (1/人)
  • アルミホイル (200mm×50mm/人)
  • セロハンテープ
  • ぬれ雑巾

授業の流れ

(0) 始業前の準備
 理科室に来た生徒からに、ガスバーナー、薬さじ、ピンセット、アルミホイルを準備するように指示します。

(1) 本時の内容紹介
 授業前半は予想:物質を加熱した時にどうなるか、後半は実習:いろいろな物質を加熱して有機物と無機物に分ける、です。

(2) 予想:物質を加熱した時にどうなるか
 物質を加熱した時にどうなるか、という発問は不明瞭です。加熱する物質によって答えが違うからです。しかし、生徒が持参したものは不明で多様です。私は有機物と無機物に分類しようとしていますが、どんな結果になるかわかりません。純物質ではない混合物もあるでしょう。危険物は持ってきていないと思いますが、プチトマトを丸ごと焼くと、果皮が破れて小爆発を起こすかもしれません。ま、いずれにしても、いろいろな可能性があると思うので、すべての可能性を考えさせてみました。教科書に載っていない、創造性豊かな予想を求めました。


上:物質を加熱するとどうなるか? に対する生徒の考え

 上の予想を分析しましょう。化学変化(初めにあった物質がなくなって新しい物質が生成する)と状態変化(物質の状態だけが変化する)に大別されます。これは、冷却した時に初めの物質がもとの状態に戻るかどうか、によって調べられます。はじける、ぱちぱち音がするは、物質そのものの変化とは関係ありませんが、目や耳による加熱中の様子の記録です。生命が誕生する、発光しはじめる、変色する、大爆発が起きるは、ユニークな最終的な結果を示していると思います。こげるところとこげないところの差が大きいは、1つの物質だけでできてない物体や混合物であることを示しています。消えうせるという予想に対しては、私が『空気中に飛んでいく』と解説しました。ただし、気化して飛んでいくのか、別な物質になって飛んでいくのかは解説しませんでした。最後に、重要な予想として『変化しない』を取り上げました。

 なお、ゆっくりやっていると実習時間がなくなるので、さくさく進めることが大切です。次の有機物と無機物の分類も同じです。(2)と(3)合わせて、15分以内にしましょう。有機物と無機物のまとめは、いつでもできます。


上:別クラスの予想:物質を加熱するとどうなるか?

(3) 物質を有機物と無機物に分類する
 さくっ、とまとめます。有機物と無機物の分類基準はいろいろあるので、(2)の生徒予想に合わせて柔軟に対応しましょう。それぞれの例は、生徒が持参した物質、これから実験する物質から出させると良いでしょう。


上:有機物と無機物を分類するための板書


上:別クラスでの板書


上:いろいろな材料を持ってきた生徒

(4) 実習:いろいろな物質を加熱する
 具体的な方法を3分程度で演示したら、残り時間は全て生徒実習です。5種類以上の物体や物質を持ってきている生徒は、1つ5分でも25分になります。先生は手早く説明しましょう。また、火傷しないための方法も示します。

 「見てください。(アルミホイルを5cm×5cmの大きさに手で切り、それを薬さじに巻きながら)初めにアルミホイルをできるだけ小さく切って、薬さじに巻きます。正確には、巻くというより、上の部分だけを覆い、加熱後に掃除しなくてもすむようにします。・・・おっと、これは少し大きかったなか(と言いながら、アルミホイルを外し、半分に切って)これは2回分あったので、半分にしました。こんなに小さくしたのは、加熱後にアルミホイルごと外し、必要に応じて、アルミホイルごとプリントに添付できるようにするためです。後から調節するより、初めにした方が綺麗な仕上がりになります。」


上:アルミホイルに載せて加熱した食塩を取る生徒

 「次に、加熱したいものを載せますが、できるだけ少量にしましょう。たくさんあるとこぼれて危険です。反応が終るまで時間がかかるので、たくさん調べたい人が時間がなくなります。少なすぎた場合は、追加すればよいのですから、できるだけ少量にしましょう。同じ結果になるなら、少量で行った方が科学的、地球環境に優しい頭の良い人、ということになります。」

 「変化がないときは、炎の温度が高い部分にしましょう。(炎がついていないガスバーナーで見せて、炎をイメージさせながら)炎のどの部分が高温か、知っていますか。・・・そうですね。先端部分です。肉眼では確認しにくい部分ですが、よくイメージしながら炎の先端部分に当ててみましょう。変化速度が大きくなります。その前に、赤い炎はいけません。不完全燃焼の炎は、真っ黒なすすが出るので、全部黒くなってしまいます。全部有機物、という間違った結果にならないよう、空気調節ねじをつかって完全燃焼の炎をつくってください。」

 「それでも変化がないときは、薬さじを少しずつ傾けて、炎に直接当てましょう。それでもダメなら、ピンセットでつまんで炎の中に入れてもよろしい。ものによっては、初めからピンセットを使っても構いません。」

 「さて、最後に最も大切なことを2つ確認します。1つは有毒ガスを発生するものがあるのでできるだけ少量にすること、これは科学的な考えができる人なら大丈夫ですね。そして、もう1つは火傷です。前回、たくさんの人がガスバーナーの炎に触れましたが、火傷した人はいなかったと思います。しかし、今日は違います。うっかりしていると、火傷します。とくに、ピンセットで加熱していると、熱が伝わってきて「あちっ」と手を離すことがあります。大変危険です。ハンカチがある人は水で濡らして持ったり、濡れテッシュでも良いでしょう。乾燥したテッシュは逆に危険です。ぬれ雑巾を用意しておくことも大切です。薬さじの場合も、同じように安全策をとってください。」

 「また、ガスバーナーの炎の危険性は直接見えますが、ピンセットや薬さじの熱は見えません。だから余計に危険です。真っ赤になっている金属に触れる人はいないと思いますが、普通に見えるものでも大火傷をします。自分が使った薬さじとピンセットは責任を持ってください。友達に近付けるようなことは絶対にしてはいけません。火傷をするなら自分だけ、それが大原則です。守れない場合は、このクラスの実験は中止です。なお、間違って火傷した場合は、すぐに水で冷やし、先生に報告してください。何か質問はありますか。・・・実験始め!」


上:まだまだたくさん残っている


上:水蒸気を発生する砂糖

上:燃焼しながら炭になる砂糖
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上:麩(ふ)

上:白米(生徒に人気がある1品です)
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上:キャラメル

上:小麦粉
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上:一味(唐辛子)

上:鈴という物体(物質はステンレス?)
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上:針金(金属+ポリ塩化ビニール)を加熱する様子(もっともっと少量が望ましい)

上:ポリ塩化ビニールだけが燃焼する(次の時間のプラスチックにつながる)


上:鉄製のくぎを加熱すると、黒い酸化鉄になる
 不完全燃焼の炎で加熱すると都市ガスから生じた黒いすすが付着しますが、完全燃焼なら大丈夫です。良く冷やしてから手で触らせてください。黒くなりません。新発見の驚きがあります。


上:いろいろな調味料を持ってきて調べたB君のプリント


上4枚:生徒4人の学習プリント(いずれもクリックすると拡大)


上:Cさんの学習プリント


上:D君の学習プリント


授業を終えて
 実習中の生徒は加熱することに夢中で、記録しません。本物の火を見つめたり、本物の火で変化する物体や物質を見たことがないからです。これまで体験したことがない、わくわくする経験だからでしょう。『やること』は、記録やまとめより大切ですが、記録を残すことに生き甲斐を感じる今の私は、とても勿体無いように思います。だけど、今を生きている子どもにとって、記録はどうでも良いことで、大切なことは自分で確かめること、自分でやってみることなんですね。自分が何をやったかは、後から振り返ることができます。受験に必要なことは教科書に書いてあります。知識だけなら、私の授業でなくてもできます。受験は社会的な地位を得るために必要ですが、もっと大切なことを求めて生徒は活動しています。彼らの純粋な欲望、知的好奇心や探究心を育てることが私の使命ですから、形に残らないものにこそ力を注ぐべきだと思いました。

 また、今回の授業のタイトル案として、『冷蔵庫の中のものを熱する』がありましたが、それは『有機物を加熱する』と等しい内容になります。今回は『いろいろな物質を加熱すしる』とし、次回は『有機物の燃焼』としました。加熱と燃焼は、違います。これは、今日の授業の冒頭で生徒達に考えさせたことですが、今日の実験は燃焼ではなく加熱です。理科の先生なら分かると思いますが、加熱は熱を加えることです。燃焼はある物質が酸化するとき、特に光や炎を出す現象のことです。

関連ページ
・ 実験1 いろいろなものを熱する  1年(2002年)
・ 実験2 有機物を熱する  1年(2002年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第1章 物 質 チョークを加熱する p.8〜 p.9
物質の分類(混合物と純物質) p.11
白い物質を加熱する(有機物と無機物) p.12〜 p.13
第4章 化学変化 消したろうそくに火をつける p.43
ダイナミックなエネルギーの出入り p.45
食べ物(有機物)を加熱しよう p.70〜 p.71
第8章 物質の分類 p.154

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実習5:マッチ、ガスバーナー

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実験7:有機物の燃焼

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