このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第29時
実習5:マッチ、ガスバーナー

     2012 7 5(木)、6(金)、9(月)
     理科室

はじめに
 今日から本格的に化学分野のスタートです。化学といえば化学変化、化学変化といえば火です。火は人類にとって大変重要、かつ、危険なものです。火遊びをしないだけでなく、同時に、火を怖れずに使えるようになることは人類の常識です。ということで、今日は1時間使ってマッチとガスバーナーに親しんでもらいます。


上:不完全燃焼の炎を観察する生徒たち


本時の目標
1 火の危険性を知り、必要以上に怖れない感覚を身につける
2 マッチを30秒以上燃やす
3 ガスバーナーを正しく操作する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • マッチ(5/人)
  • ガスバーナー(2/班)

授業の流れ

(0) 始業前の準備
 理科室に来た生徒から順に、学習プリント、マッチ3本を持っていくように指示します。

(1) 本時の内容紹介
 授業前半はマッチ、後半はガスバーナーを学習することを知らせます。最終的な目標は、ガスバーナーを正しく操作できるようになることです。そして、授業冒頭で火遊びは絶対にいけないこと、学校のマッチを持ち出してはいけないこと、放火は殺人と並ぶ重大犯罪であり、これら2つだけが日本の刑法で極刑になる可能性があるあ犯罪であることを知らせます。今日の1時間は、火遊びをしないためにも十分な操作ができるように火に親しむことを目標の1つにしていることを知らせます。
  関連ページ
  ・ 
刑法を学習しよう! (若手教師のためのワンポイント・レッスン
  ・ 
理科室のマッチ箱が持ち出された (同 上)

(2) マッチは何秒燃えるか?
 1本のマッチは何秒燃え続けることができるか、生徒に予想させます。多くの生徒は10秒〜30秒の範囲で予想しますが、私の目標は30秒です。

(3) 実習1:マッチをできるだけ長く燃焼させる
 実習時間を長く取りたいので、正しいマッチ箱とマッチ棒の持ち方、正しい擦り方、正しい燃えかすの捨て方は、私が演示しました。その後、生徒2人にマッチ箱を1つずつ割り当て、1人につきマッチ3本を擦らせました。そして、それぞれの燃えた時間を記録、自己ベストを黒板に発表させました。計時は、教室の時計の秒針を利用させます。

マッチの擦り方を演示するときのポイント

  • 風がふいていないか確かめる
  • ある程度の換気を確保する
  • 箱のざらざら部分の状態を確かめる
    (つるつるになったものは先生が廃棄する)
  • マッチと箱は45度の角度
  • 擦る速さは、遅すぎず速すぎず
  • 木が折れるような擦り方をしない
  • 点火したら、そのままの位置をキープして木を燃やす
  • 木が燃えたら、マッチを上に向ける
  • 炎が上向きなら、ぎりぎりを持っても熱くない
  • 炎を良く見る!
  • 炎が小さくなったら、マッチを下に向ける
  • そこそこ燃えている時は、マッチを横にする
  • 長時間燃えるように、炎の状態によってマッチの方向を変える
  • 炎が消えたら、燃えかす入れにいれる
    (燃えかす入れに水をいれない)
    (授業後、燃えかす入れのゴミをゴミ箱に捨てる)
  • 指が臭くなっても騒がない
  • 多少熱くても騒がない
  • 火傷したら、すぐに水で冷やす→ 先生に報告
    (マッチを持っていて大火傷をすることは通常あり得ない)


上:長時間燃やすための基本ポジション
.
上:風が吹いてきて消えてしまった!


上:自己ベスト記録を発表する生徒達
 出席番号を板書しておき、3本のうちのベスト記録を書かせる。


上:別クラスの記録


上:しっかり燃やしたマッチを添付するAさん
 最近はマッチを使わない家庭が多いので、燃焼後のマッチを学習プリントに添付させた。燃え残った真っ黒な軸(木)は、生徒にとって貴重な戦利品である。逆に、燃えすことができなかった白い木は、未熟なことを示す。なお、燃焼させた木の添付は、次に学習する『有機物』に直接つながる。木は、燃やすと炭になる有機物である。


上:B君の学習プリント

(4) ガスバーナーの使い方の演示
 教師用実験台のまわりに生徒を集合させてから、しっかり演示します。ダイナミックに演示することで、都市ガスの特性、ガスバーナーの構造、炎の種類、完全燃焼と不完全燃焼、について印象的に説明します。その後、1人1本のマッチを持ち帰り、1人1回ガスバーナーを点火・消火させます。


上:ガスバーナーを持ち上げて演示する私

ガスバーナーの使い方を演示するときのポイント

  • 換気に注意する
  • ガスの元栓にある安全装置が作動することを確認する
    ・ホースを外し、ガス漏れをさせる
    ・しゅ、っとガスがもれる音を確認する
    ・瞬時にかちっ、と音がしてガスが止ることを確認する
    ・自宅で実験してはいけないことを確認する
  • ガス臭いことを確認する
    ・都市ガスそのものは無色透明、かつ、無臭であることを知らせる
    ・ただし、爆発事故を防ぐために『嫌な臭いの気体』を混ぜてあることを知らせる
    ・また、都市ガスが充満すると酸欠で倒れることもある
  • 元栓にガスホースをつける方法を確認する
  • ガスバーナーを分解する
    ・空気調節ねじを外す
    ・ガス調節ねじを外す
    ・ガス量を調節するための棒を見せる
    ・ガスが出る直径1mm程度の穴(ガス調節ねじ)を見せる
    ・ガス調節ねじをつける
    ・ガス調節ねじを緩め、ガスが噴出する音を聞かせる
  • ガスにマッチの炎を近づけ、点火する(※)
  • ガス調節ねじを開いたり緩めたりして、ガス量が変わることを確認する
    (この操作は、生徒から驚きの声が出る)
  • 空気調節ねじをつける
  • 空気調節ねじを完全にしめてから点火する
    → 不完全燃焼の赤い炎
  • 空気調節ねじを回し、完全燃焼の炎を示す
    → 完全燃焼の青い炎
  • 再び、不完全燃焼の炎をつくり、炭が発生していることを確認する
    ・白紙を炎にかざす(1秒×10回程度)
    → 紙は急に燃えないことを確認する
    → 紙の発火点は、約250度C
    → 炎に手を入れ、火傷しないことを示す
    (この操作は、生徒から驚きの声が出る)
    ・炎にかざした紙を見せ、黒くなっていることを確認する
    → 不完全燃焼の炎は汚れている
    → 必ず、完全燃焼にすること
  • 不完全燃焼と比較するため、完全燃焼の炎をつくる
    ・前と同じように、白紙を炎にかざす(1秒×10回程度)
    → 前より高温で燃えやすいので注意する
    ・不完全燃焼と完全燃焼の炎にかざした2枚の紙を並べて見せる

    上:左は完全燃焼、右は不完全燃焼(クリックすると拡大)
     完全燃焼は、高温で茶色に変色→発火する可能性が高い
  • 完全燃焼の炎に、さらに空気をまぜ、過酸素の炎について確認する
    ・ゴーゴーいう音を聞かせる
     直接ガスに点火した時(※)と同じ
    → 不安定で、すぐに消えてしまう
    → ガス漏れの原因になる
  • 過酸素、完全燃焼、不完全燃焼の炎を順に見せて復習する
  • ガスバーナーの点火手順を知らせる
    1)ガスバーナーのねじがしまっていることを確認する
    2)ガスバーナーをガスの元栓につける
    3)元栓を開く
    4)マッチを点火する
    5)ガス調節ねじを開く
    6)不完全燃焼の炎をつくる
    → 炎の大きさは、このガス量で決まる
    7)空気調節ねじを使い、完全燃焼にする
    → 炎の大きさを決めることはできない
  • ガスバーナーの消火手順を知らせる
    → 点火手順の逆(7)→(1)
  • ねじについて確認する
    1)右に回すとしまる
    2)完全にしめたら、1/2回転させて緩める
    → 冷えると、膨張した金属が収縮し、ねじが動かなくなる


上:不完全燃焼の赤い炎を観察、スケッチする生徒


上:教科書を見ながらガスバーナー各部の名称をまとめる生徒


上:炎に手をかざして火傷しないことを確かめる生徒


上:ガスバーナーの炎を観察させるための板書

 「次に、ガスバーナーの炎をスケッチしましょう。炎の種類は3種類です。空気が入っていない不完全燃焼の赤い炎、完全燃焼の無色透明の炎、空気が多過ぎる青い炎です。ポイントは、炎を良く見ると内側と外側に分けられることです。それぞれ空気の量が違うので色や温度が違います。詳しいことは次に紹介しますが、今日は、それぞれの炎が2層になっていることを区別してスケッチしてください。何か質問はありますか? ・・・では、自分の班で炎をつくって始め! バスバーナーが2本で熱い場合は、1本消しなさい。」


上:気づいたことを記述するC君


上:D君の学習プリント


上:本日の板書


授業を終えて
 マッチの燃えかすを学習プリントに添付させるアイデアは好評でした。最近、マッチで火をつける経験が本当になくなっているからでしょう。だからそこ、しっかり時間を確保して、何本もマッチを擦らせてやりたいです。自分の手で火をつける感覚を楽ませたい、と思います。火は危険ですが、とても魅力的な現象、高エネルギーを発生する化学変化です。マッチの頭と箱にある2つの物質を擦りあわせ、発火させる。その瞬間から最後まで、小さな炎を見つめ、自分の判断と手でコントロールする体験は重要です。火や炎を見て悲鳴を上げる大人は危険です。オール家電の家庭が増えるなか、理科教師の仕事はますます重要になってきた、と思いました。


上:ガスバーナーを点火したことがある生徒

関連ページ
・ 基本操作1 マッチ、ガスバーナー 1年(2002年)
・ 基本操作 マッチ・ガスバーナー 1年(1999年)
・ 刑法を学習しよう! (若手教師のためのワンポイント・レッスン
・ 理科室のマッチ箱が持ち出された (同 上)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第4章 化学変化 マッチを何秒燃やせるか p.44
ガスバーナーを完全燃焼させよう p.46〜 p.47
第1章 物 質 都市ガスを燃焼させる p.10〜 p.11

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考察4:1年理科1学期期末テスト

→ 第30時
実験6:いろいろな物質を加熱する

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