このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第34時
実験10:酸素をつくって調べよう

     2012 9 10(月)、11(火)
     理科室

はじめに
 夏休み明けの定期テストが終り、今日から『気体』を学習します。気体の何を、といわれると小学校の延長線上です! と答えるしかありませんが、文部科学省が決めたことなので、文句はほどほどにして頑張れる範囲でがんばります。『酸素』『二酸化炭素』『水素』『アンモニア』の4つの気体を、それぞれ1時間ずつ使って実験学習します。

 他年度の実践
 
酸素を調べる 1年(1999年)』『二酸化炭素、酸素の性質 1年(2002年)


上:過酸化水素水と持参したジャガイモやレバーで酸素を発生させる様子


本時の目標
1 酸素の特徴をまとめる
2 過酸化水素から酸素をつくる
3 火のついた線香を使って酸素の存在を調べる

準 備
生 徒 教 師
  • 生ジャガイモ
  • 生レバー
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 過酸化水素水
  • 二酸化マンガン
  • 薬包紙
  • 試験管(5本/班)
  • 試験管立て
  • ゴム栓、ガラス管、ゴム栓セット
  • 水 槽
  • 酸素ボンベ(演示実験)
  • 線 香

授業の流れ
(0) 持参したものの確認

 始業前に、持参したものを確認します。生ジャガイモ、生レバーなど生きた細胞で、これらの中には有毒な過酸化水素の分解を促進する酵素『カタラーゼ』が含まれています。

(1) 本時の内容紹介 (1分)

(2) 酸素の化学式の紹介 (2分)

 初めに酸素の化学式『O2』を知らせます。中学1年生で化学式を教える必要はありませんが、日常生活の中でしばしば耳にする言葉なので、ここで確認するのは自然です。

 ただし、英語やアルファベットに対して拒否反応を示す子どもがいるので、できる限り英語らしくないように指導しましょう。右の写真は『ふりがな』を板書したものです。大きな字で明確に書くことで、親近感を持つようにしました。

 また、写真右のように正しい『O2』の書き方についても確認しました。

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(3) 酸素とは何か? (10分)
 酸素という言葉は良く耳にしますが、酸素とは何か! を正しく説明することは難しい問題です。というより、この問い自体が曖昧なので答えようがないのですが、生徒から自由な発言を求めます。目的は、酸素に親しみを持つこと、日常生活と酸素と関連づけること、教科書にある酸素の特徴をまとめることです。ただし、この時点で教科書を開いている生徒は数えるほどで、クラスによって発表される内容は大きく異なります。下の写真2枚は、2つのクラスの板書です。なお、教科書の内容が出ない時は、最後の数分間で押さえます。


上:A組での板書
 人間が呼吸するために必要なもの、生きていくために必要なものが出ました。元素、という言葉は化学に興味関心が高い生徒から当然のように出てきました。助燃性、という言葉は塾で学習済みの生徒から発表されました。無臭、無味、無色などは大切な特徴です。


上:B組での板書
 空気中に21%存在することからスタートしました。よく知っている生徒がいるものです。液体になると磁石にひっつく、という性質が発表された時はさらに驚きました。これを聴いた子ども達の感想は「すごい! 私もいろいろ知りたいな」と「そんなこと、どうでもいいよ」の2つに分かれますが、前者の前向きな感想を持つ授業の雰囲気をつくりましょう。

(4) 酸素の作り方の確認、および、操作方法の紹介 (3分)
 「酸素の作り方を知っている人?」と発問すれば、何人かの生徒が挙手して答えてくれるでしょう。

上:酸素の作り方をまとめた板書例

触 媒(しょくばい)
 ポイントは触媒です。過酸化水素は、放置しておくと自然に『過酸化水素→水+酸素』と変化しますが、触媒を加えると反応が速くなります。触媒は、それ自体変化することなく永久的に使用できる物質です。この化学変化の触媒として有名なものは、二酸化マンガン、生レバー、生ジャガイモです。

 二酸化マンガンは、粉末状のものを使わないようにしましょう。反応が激しく、過酸化水素の水溶液も黒くなり反応の様子がよく観察できません。生レバー生ジャガイモは、それらの細胞内に含まれる酵素『カタラーゼ』が触媒として作用します。したがって、生きている細胞のほとんどは触媒として利用できます。オキシドール(うすい過酸化水素水)を傷口につけると、同じ化学変化によって酸素を発生します。なお、生レバー(肝臓の細胞)は大量のカタラーゼを含んでいますが、すぐに臭くなります。一方、生ジャガイモは臭くありませんが、ぱっとしません。


上:ここまでの板書(A組、クリックすると拡大

(5) 酸素をつくる操作、および、酸素を確認する操作の紹介 (5分)
 私が演示している写真はありませんが、演示操作のポイント4つを紹介します。

Point1過酸化水素水に触媒を加える操作
 あえて危険な状態を示すことがポイントです。本校の二酸化マンガンは粉末状で、一気に反応します。試験管は加熱し、手で持てないほどになります。次に、発生した酸素を集める『水上置換法』の説明ポイントは、試験管に水を満たす方法です。水槽の中に試験管を完全に沈め、試験管の口が水面から出ないように注意しながら、試験管の底を上に立てるようにすれば完成です。その他のポイントは、ゴム管が折れ曲がってしまうことです。

Point2試験管に入れた酸素
 試験管内の気体が酸素なら、酸素は空気より重いので、試験管の口を上にしておけば簡単には逃げません。試験管を口を上にしたものと下にしたものを生徒に示し、どちらが正しいか全員に挙手させてください。

Point3線香の火と炎を区別する
 火のついた線香を酸素入りの試験管内に入れると、ぽんっと音を立てて小爆発し、炎が上がります。これをまとめる時のポイントは、『火』と『炎』の区別です。なお、先生が演示実験する時は、わざと試験管についている水に線香を触れさせて火を消してしまうことも悪くありません。

Point41回の小爆発に必要な酸素量
 直径18mmの普通試験管いっぱいに酸素がある場合、5回以上線香を小爆発させることができます。小爆発する位置は、爆発させる度に下がっていきますが、その量は1回の爆発に使った酸素量です。また、線香が爆発する位置=試験管にある酸素の位置、です。これについては、私の著書実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』のp.32で写真6枚で紹介してます。

(6) 生徒実験 (24分)
 (5)で操作ポイントを十分に解説し、生徒から出た疑問点を解決しておけば、スムーズに実験は進みます。

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左:過酸化水素水に二酸化マンガンを入れて酸素を発生させる様子
右:レバーを使っている様子

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左:過酸化水素水に生ジャガイモを入れたもの→ 酸素を集めることは難しい
右:過酸化水素水に生レバーを入れたもの→ イイ感じ!


上:平らなバットを使って水上置換方法を行う様子


上:丸型水槽を使って水上置換法を行う様子


上:生徒実験の時間を確保するため、実験を開始させてから板書した装置の図


上2枚:火のついた線香で酸素を確かめる様子

(7) 実験の考察、および、後片付け (5分)

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上2枚:生徒2人の学習プリント(いずれもクリックすると拡大)


授業を終えて
 酸素を水上置換法で集めたり、線香の小爆発をさせたり、生徒達は楽しんでいたようです。それよりも大切なことは『生ジャガイモ』や『生レバー』を持参させることですが、生ジャガイモは期待外れになりやすいので、事前に告知しておくことが大切です。生レバーの持参は、生徒ではなく家庭の人が大変なので強制しないようにしましょう。 

関連ページ
・ 酸素を調べる 1年(1999年)
・ 二酸化炭素、酸素の性質 1年(2002年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第3章 分 子 大気に含まれる物質 p.30
酸素をつくって調べよう p.32、p.33
気体の集め方 p.33

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実験11:ニ酸化炭素をつくって調べよう

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