このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第80時
観察8 侵食される大地、風化する岩石

     2013 2 14(木)、15(金)、18(月)
     理科室

はじめに
 新しい章に入ります。主要テーマは『堆積岩と地層』、主な流れは『大地の浸食・風化』→『土砂の運搬・堆積』→『堆積岩と地層』→『化石』です。新章の導入となる本時は、いつものように生徒の学習意欲をかき立てる発問から入りました。これは2月20日から始まる学年末テストの範囲外ですが、テスト直前の生徒にとっては大きなテーマの方が親切でしょう。

 風化と侵食の区別は、このページ中央に記述してあります。

他年度の実践
侵食と堆積 3年(2001年) ―海岸(河岸)段丘、三角州、扇状地―


上:定規を使って礫を書くBさん


本時の目標
 萩山中学校を放置するとどうなるか考える
 大地や岩石は、風化や侵食され礫・砂・泥になることを理解する
 礫・砂・泥の大きさを実感する
 流水による運搬と堆積について知る
 扇状地と三角州について図示し、まとめる

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 定 規
  • 色鉛筆
  • 本日の学習プリント、1/人)

授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)
(2) 萩山中学校を放置するとどうなるか?  (20分)
 地球上にあるものは、放置するとその形を失います。どんなに固い岩石や山も同じです。そのはたらきを風化、浸食といいます。この自然のはたらきを気づかせるために、萩山中学校を放置するとどうなるか?、と発問しました。放置とは、人の手が入らないことを意味します。したがって、人に関する意見は最終的に除外しますが、自由な意見を出させるために、初めの場面ではあえて残します。最終的に、風化と侵食についてまとめ、余裕があれば以下の『恒常性(ホメオスタシス)の維持=生命活動』と『エントロピー(乱雑さ)増大の法則』に触れます。

恒常性(ホメオスタシス)の維持=生命活動
 自然界でその形を維持しようとするも=生物、です。生命活動をしない物体は、自然のはたらきによってその形を失います。すなわち、生物を定義するもの(生命活動)の1つは、恒常性(ホメオスタシス)の維持です。授業ではホメオスタシスについて触れませんが、「掃除をしなかったり、自分の部屋を散らかしたままにする人は生物としてのはたらきを失っています。やがて、自分自身も同じように失われていくでしょう。風や雨によって風化する石と同じです。1ケ所に集めてあったゴミが散らかるのと同じです。掃除をしない人は、ゴミが一面にあることすら気づきません。ゴミをゴミとして価値あるものにするためには、それを集めてゴミ箱に入れることが大切です。何もしなければ、ゴミ箱は倒れ、ゴミは散らかり、自然の力で目に見えないほど小さくなります。もちろん、君自身もゴミと区別できなくなるわけです。」と話をすると、私のことかな! と目を大きくする子どもが何人かいます。

エントロピー(乱雑さ)増大の法則
 さらに、エントロピー(乱雑さ)増大の法則についてもごく簡単に紹介しました。乱雑さの簡単な例は、『ガラスのコップは割れて形を失うが、割れた破片は集まってコップに戻ることはない』、です。上の例では、『1ケ所に集められたゴミは散らかるが、散らかっているゴミが1ケ所に集まることはない』です。理論上は、散らかっているゴミが1ケ所に集まる可能性もありますが、その可能性は限り無くゼロです。


上:A組の意見

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左:B組の意見
右:B組のまとめ
※上の左図を見てください。初めに「風化する」という意見が出ました。困ったな? と思いましたが、「草木が生える」という意見を板書してから、風化の説明をしてもらいました。「柱や壁に水が入り、温度差で壊れる」という説明はさすがです。説明内容が同じなら、生徒の説明は私より上です。学級全体の学習意欲が高まるからです。


上:C組の意見

風化と侵食の違い
 下表は、風化と侵食を対比させたものです。いずれも物理的要因と化学的要因の2つに着目しました。しかし、自然界における風化と侵食は簡単に区別できません。例えば、石灰岩について考えると、小さな石灰岩は風化で形を失い、広大な石灰岩大地は侵食でカルスト地形をつくります。
風 化 侵 食

1 物理的にゆっくり変質、劣化していくこと
(1)風雨(物理的な風の力、水)
(2)太陽光線(熱や電磁波)
(3)昼夜の温度差
(4)植物の根の成長

2 化学的にゆっくり変質、劣化していくこと
(1)風雨(大気と水でつくる水溶液)
(2)植物や菌がつくる化学物質

1 物理的な力でがりがり削られること
(1)河川の流水 → V字谷、河岸段丘
(2)氷河の氷  → U字谷
(3)海の波   → 海岸段丘、砂浜

2 雨水で石灰岩が溶けてできたカルスト、鍾乳洞
 1)二酸化炭素が水に溶けて炭酸ができる
  CO2 + H2O → H2CO3
 2)石灰岩が炭酸に溶ける
  CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2
 3)炭酸カルシウムが鐘乳石になる
  Ca(HCO3)2CaCO3 +CO2 + H2O
 → ポイストナ鍾乳洞(旅行記バルカン半島9ヵ国から)

(3) 粒の大きさ(直径)による分類  (15分)
 風化、侵食された岩石(大地)は、小さな粒になります。岩石を砕いた屑を砕屑物さいせつぶつといい、粒の直径によって分類されます。中学では、大きなものから順に『礫・砂・泥』の3つ分けます。その基準を砂(直径1/16mm〜2mm)にすると、簡単に理解することができます。さらに、定規を使って砂や礫の大きさを正確に表現させることで、より鮮明に砂をイメージすることができます。


上:A組の板書

礫や砂の粒を具体的にイメージさせるための指導手順
 肉眼で識別できない小さな粒=泥、を確認する
 直径1/16mm以上、2mm以下の粒=砂、を確認する
 直径2mm以上の粒=礫、を確認する

礫を書く
 定規を使って、直径2mm、3mm、4mm、5mmの礫を書く
 定規を使って、直径6mm〜10mmの礫を書く


上:直径6mmの礫を書くAさん


上:定規を使って礫を書くBさん

 定規を使って、直径20mm、それ以上の礫を書く
 「最後に、直径20mmとそれ以上の大きさの礫を書いて、礫は終了にします。礫の大きさには限界がないので、直径1mでも10mでも構いません。例えば、直径30cmの礫を書くなら、(黒板に曲線を描きながら)こんな感じで、その一部を書いてください。中心は(中心に当る部分を指差しながら)この辺りになるかな。では、満足するまで、どうぞ!」

砂を書く
 定規を使って、直径2mmの砂を書く
 定規を使って、直径1mm、0.5mmの砂を書く
 「みなさんが使っているシャープの芯は何mmですか。0.5mmの人は手を挙げてください。・・・(大半の生徒が挙手する)・・・なるほど、ほとんどの人が0.5mmを使っているようですね。これは、直径0.5mmということですから、完成した小さな丸とシャープの芯を並べてください。同じ大きさなら正解です。この円を書くためには、芯のエッジ、尖った部分を使わなければできませんね。円の中心に空白を作ることができた人は、かなりの技術を持っています。」
 定規を使って、直径1/16(0.06mm)の砂を書く
 「最後に、もっとも小さい砂を書きます。その直径は1/16mmですが、1÷16を計算すると、約0.06。すなわち、1/16mmは0.06mmになります。0.06mmは、だいたい0.5mmの1/10ですから、直径0.5mmのシャープの芯と比較すると、横に10個並べることになります。これは、もう不可能ですね。」


上:直径2cmの礫に直径2mmの礫を書いた板書

泥を書く
10
 鉛筆で、ざーっと書く(写真上)
11 泥の粒の成分は、いろいろなことを確認する

12 泥・砂・礫は、粒の成分と関係ないことを確認する

(4) 扇状地と三角州  (15分)
 砕屑物(礫・砂・泥)は、流水によって運搬されます。運搬されたものは、どこかに堆積します。堆積場所は、運搬する力が堆積する力に負けたところです。特徴的な堆積場所として、扇状地と三角州があり、いずれも運搬する力が急に弱くなる場所です。堆積する土砂の形も似ています。授業では、教科書の写真と模式図を確認してから、生徒の学習プリントに模式図を写させました。

 なお、扇状地と三角州社会科で学習していないので、やや丁寧に説明する必要がありました。


上:扇状地と三角州の板書


上:Cさんの学習プリント(クリックすると拡大)

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上2枚:生徒2人の学習プリント


授業を終えて
 次時は、大掛りな実験を2つ行います。1つは本時に十分学習できなかった『運搬』と『堆積』、もう1つは堆積によってできる『地層』を調べる実験です。お楽しみに!

関連ページ
侵食と堆積 3年(2001年) ―海岸(河岸)段丘、三角州、扇状地―

実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学
 第章 地層と堆積岩   侵食される大地、風化する岩石   p.84、p.85 
 泥、砂、礫   p.86、p.87 

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実習7 運動場の砂から宝石を探そう

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実験9 水底で生まれる地層、堆積岩

中学校理科の授業記録1年(2012年度)

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