このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第86時
実習14 校内の岩石採集

     2013 3 6(水、卒業式前日)
     理科室→ 校庭→ 理科室

はじめに
 
卒業式練習のため、特別時間割りで1時間授業をもらいました。ただし、代表生徒が不在なので『校内の岩石採集』にしました。本校のランニングコースを歩き、運動場に散在していた多様な岩石を拾い集めた運動場南側の『土砂置き場』、本校舎北側の『玉砂利』、北校舎北側の『砕石』から採集する予定です。集めた岩石は、理科室で過去の学習プリントに添付させます。天候にも恵まれているので、楽しい思い出に残る1時間にしたいです。同じような授業を計画される先生は、事前に、どこにどんな岩石があるか下調べしましょう。

他年度の実践
実習3 身のまわりの岩石 1年(2002年)


上:岩石採集のため、岩石を見分ける練習をする生徒達


本時の目標
 校内を散策し、多様な岩石を採取する
 校内に落ちている岩石に高いレベルの興味を持つ
 チャートと他の岩石を瞬時に識別する力をつける
 3種類以上の岩石を採集し、標本にする

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 採集に適した散策ルートの下調べ
  • セロハンテープ

授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (2分)
 理科室で簡単なオリエンテーションをしてから、下駄箱周辺で岩石を見分ける練習、その後、3つの地点で岩石採集を行うことを紹介します。終業10分前に理科室へ戻り、採集した岩石を学習プリントに添付します。

(2) オリエンテーション  (3分)
 (ア) 散策・採集ルートの紹介
 (イ) 岩石の外形(丸みを帯びたもの人工的に割ったもの
 (ウ) 採集できる岩石の種類
 (エ) 採集する岩石の(10個〜20個)
 (オ) 採集する岩石の(片手で持てる量)
 (オ) 採集する岩石の大きさ(プリントに添付できる大きさ)


上:岩石の外形、採集できる岩石の種類の板書

(3) 岩石を見分ける練習  (10分)
 下駄箱に近い場所で、岩石を見分ける練習をします。「3種類以上の岩石を採集できたら先生に見せなさい。全員が3種類採集できたら、岩石探しの旅に出発します!」と指示しましょう。次から次へと生徒が持ってくると思うので、1つ1つ答えてください。そのほとんどはチャート、または、セメントの欠片です。

 以下の写真は生徒が持ってきたものです。みなさんも一緒に識別してみしょう。


上:全てチャート


上:礫岩みたいなセメントの欠片(着色料を混ぜた部分もある)


上:全てチャート


上:これもチャート


上:1つだけ砂岩(または泥岩、下段左)、あとは全てチャート


上:砂岩(下段右)とレンガの欠片(上段右から2つめ)、あとは全てチャート


上:左5つはチャート、右2つはセメントの欠片


上:左上はセメントの欠片、あとは全てチャート


上:全てチャート

 いかがですか? チャートが多いことがわかったでしょうか。チャートは成分が安定していますが、他の岩石は意外によく崩れます。マグマからできた火成岩(花崗岩、硫紋岩、安山岩、閃緑岩、玄武岩、斑れい岩)も風化して崩れやすいものです。礫岩・砂岩・泥岩のうち、砂岩は時々見かけます。その多くは河川の川岸から採石したものでしょう。それらは丸みを帯びていますが、割れている場合もあります。

 北校舎北側の『砕石』から、熱で固くなった砂岩を大量に見つけました。面白くない岩石ですが、チャートに見飽きた生徒は楽しんでいたようです。もちろん、割れたチャートもたくさん含んでいました。

 石灰岩は、塩酸をかけると二酸化炭素を発生するので簡単に見分けられます。ただし、今回はほどんと見つかりませんでした。逆に、北校舎北側で『サンゴ』が見つかりました。見つけることができた生徒の割り合いは50%です。このサンゴは、三重県鈴鹿山脈から採掘した石灰岩に由来していると思います。鈴鹿山脈は1000m級の山ですが、日本で生活する植物を東西で分けたとき、その両方が自生していることで有名です。とくに春の野草は有名で、全国から植物好きな人が集まります。私も学生の時によく散策した山があります。

(4) ランニングコース散策  (5分)
 暖かい日射しを浴びて散策しました。よい天気に恵まれましたが、この後に予定している採集場所は、いずれも日陰なので体温を上げておく作戦です。もちろん、岩石を探しながらの散策です。なお、このランニングコースは老朽化のため現在使用されていません。成長した樹木の根で浮き上がったり、地盤沈下で危険な状態になっている場所があるからです。水はけが悪く、大量の粘土がたまっている部分もあります。岩石はほとんどありませんが、そうした自然な環境に近い部分が校内にあることは、悪くないと思います。自分の中学校を歩き、きちんと知ることの方が重要だからです。


上:ツバキの赤い花咲くランニングコースを歩く生徒達

(5) 運動場南側の『土砂置き場』で採集 (15分)
(6) 本校舎北側の『玉砂利』で採集 (10分)
(7) 北校舎北側の『砕石』で採集  (10分)

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上2枚:玉砂利から、いろいろな岩石を識別・採集する生徒

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上2枚:砕石から、いろいろな岩石を識別・採集する生徒

 サンゴは、写真右上の校舎周りに落ちていました。「先生、これ何?」 と持って来た無数の穴があいた白い物体を見た時、私の目は大きく開きました。サンゴです。「A君がサンゴを見つけたので、見せてもらってください。特徴は無数の小さな穴があいていること、軽く感じること、白いことです」 と紹介すると、すぐに何人かの生徒がサンゴを発見しました。ここで見つけたサンゴは、学習プリント(下)に添付されました。

(8) 学習したプリントに添付  (3分)
 
終業10分前、理科室へ戻るように指示しました。サンゴを見つけた生徒は満足していましたが、見つけられない生徒は粘っていました。サンゴを見つけた = 他と識別できる目が育った、です。なお、理科室へ戻った生徒は、採集した岩石を学習プリントに添付します。


上:砂岩?は熱変成した砂岩、サンゴの一部はセメントのよう

生徒が拾った素晴らしい岩石2つ

上:運動場で拾った『熱変成を受けた花崗岩』 石英、長石、黒雲母、白雲母がみられる。長辺10cm。


上:かなり良質な『フズリナが含まれる石灰岩』 塩酸をかけると二酸化炭素が発生し、汚れが取れて美しくなった。片面が器械で削られているので、フズリナの殻がよく観察できる。このまま理科室の標本箱に入れたい、素晴らしい岩石標本のようだった。長辺10cm。


授業を終えて
 ビニール袋を持参させれば良かった、とも思いましたが、結果として手に持てるだけの岩石にしたことは正解でした。いつでも、自分が採集したものと見比べ、より良いものと交換できるからです。何度もくり返し見ることで、自分の目が育っていくこと、気づかなかったことが見えるようになった自分を実感できるからです。

 さて、今年度の授業は残り3〜4時間。次から『地殻変動(プレートテクトニクス)』と『地震』に入りますが、時間があれば『火成岩と堆積岩などの標本づくり』『岩石の輪廻』『変成岩の観察・スケッチ』をしたいですね。

関連ページ
実習2 私の岩石標本 1年(2002年)
実習3 身のまわりの岩石 1年(2002年)

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→ 第87時
観測15 地殻変動(プレートテクトニクス)

中学校理科の授業記録1年(2012年度)

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