HomeMr.Taka 中学校理科の授業記録1年(2016年度)

実験13 重さと質量の違い

     2016
     理科室

→ 万有引力と思考実験

 重さと質量の違いを学習する授業の完成度は高く、例年、微調整・微修正をするだけで十分な結果を得ています。基本構成は4年前の記録『実験15 重さと質量の違い1年(2012年)』をご覧ください。本ページは万有引力の説明例、および、本年度の板書や生徒の学習プリント(図1〜5図)を掲載します。


本年度の実践


図1:重さとは何か、万有引力の法則(A組、クリックすると拡大します)
Q1重さとは何か? のまとめ方は全学級違う(生徒の意見が違うから)
※全学級共通点は「万有引力へ結びつけること」


図2:同上(B組、クリックすると拡大します)

万有引力と思考実験

 ニュートンの万有引力の法則は有名ですが、それを理解できた!と実感することは簡単ではありません。目に見えない力をイメージしなければならないからです。そこで、次のような思考実験させてみましょう。思考実験とは、実際にはできないものを頭の中で理論的に行う実験です。

 生徒への説明はユーモアを混ぜて楽しく、そして、そのクラスの人気者を巻き込んで行うことが大切です。子どもの言葉や意見が入ったり、具体的な友だちが入ったりすることで、親近感や現実感が一気に膨らむからです。

図3:万有引力をまとめたC君のプリント(クリックすると拡大します)
指導手順と発問例
(1)地球とリンゴのイラストを描きながら
 「これは何ですか? 丸ではありません。もっとすごいものです。そうです。地球です。」「では、これは何ですか。そうです。リンゴです。」
(2)地球とリンゴの動きを考えさせる
 「次に、リンゴを持っている手を離すをどうなるでしょう? そうですね。落ちますね。これを赤→ で書いておきましょう。」
(3)2つ目の図を描きながら、
   落ちるではなくて、地球の中心に向かって動く
 「もう1つ地球を書いてください。今度はリンゴを斜め左下に書きます。宇宙から見ると、ここでも同じようになることがわかりますか?(時間があれば、代表生徒に説明させても良い)
 「 先生もみなさんも地球の上にいますが、地球上のどこにいる人も自分が上にいると感じているでしょう。しかし、宇宙から見た地球人は横や下になっています。」
  「となると、斜め左下にあるように見えるリンゴは何と言えば良いでしょう?「落ちる?」「斜めに上に落ちる」は変でしょ! では、何といえば良いでしょう? 適切な言葉を見つけた人は、万有引力に一歩近づきますよ。・・・そうですね。落ちるではなくて、地球の中心に向かって動くです。同じように赤→ を書いておきましょう。」
(4)3つ目の図を書きながら、
  リンゴを大きくていったらどうなるか思考実験する
 「ここでリンゴを大きくしていきましょう。そして、リンゴが地球の中心に向かって動く様子を赤→ で書きましょう。」

(5)4つ目の図を書きながら、
  リンゴと地球が同じ大きさになった場合を思考実験する
 「リンゴをどんどん大きくしていって、地球と同じ大きさになったとします。同じように赤→ を書きたいのですが、赤→ で良いですか。あ、みなさんはまだ書かないでください。先に黒板を見て考えて、それから書いてください。書くことは簡単です。」
  
  ここが本日の思考実験のメインイベントです。
  生徒全員に考えさせ、代表生徒に説明させます。
  方法がわからない先生は別ベージ『生徒が教壇で教える授業
  ↓

  「そうですよね。もう、「落ちる」はおかしい。とりあえず、「地球の中心に向かって動く」は良いとしても、地球もリンゴの中心に向かって動くから。つまり、2つとも動くわけですから、2つが互いに引き合っていると考えるべきです。したがって、2つの関係は赤←→ になります。」

(6)5つ目(最後)の図を書きながら、
  万有引力「すべての物体は互いに引き合う」をまとめる
 「理解できない人のために、リンゴをもっと大きく、地球よりも大きくしてみましょう。こうなると地球がリンゴに引き寄せられているように見えます。」

 万有引力について理解が深まったら、重さと質量についてまとめます。これらの違いは、ここまでの学習がきちんとできていれば、確実かつ簡単に理解できます。重さは「万有引力によって測定するもの」、質量は「万有引力に左右されないもの=物質そのものの量(g)」です。


図4:図2左半分を消し、重さと質量をまとめた板書(B組、クリックすると拡大します)


図5:重さと質量を比較する表
※模式図の数値42はB君の質量(kg)を示す。


図6:C君の学習プリント(クリックすると拡大します)
 (実験15 重さと質量の違い1年(2012年)から)


授業を終えて
 りんごをだんだん大きくしていく説明は、生徒に好評です。そして、実際に行うことなく頭脳内における思考実験というものが存在することを紹介すると、多くの生徒が知的興奮を感じていました。すばらしいです。教師冥利につきます!

関連ページ
実験15 重さと質量の違い1年(2012年)
重さと質量 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
第1章 量と単位   国際単位系(SI単位系)   p.8、p.9
 体重と万有引力   p.15
 シーソーで質量を量る   p.16
 重さと質量の比較   p.17

実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学
 第章 宇 宙   万有引力とブラックホール   p.9 

実験12 フックの法則 ←

→ 実験14 静電気の引力と斥力

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