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第19時
観察19 神経系
実験:落下する定規をつかまえよう!
実験:膝蓋腱反射2017 6 5(月)、6(火)
普通教室はじめに
今日は3つの実験を行います。(1)目の前でパチン、(2)膝蓋腱反射、(3)落下する定規をつかまえる実験です。(1)と(2)は反射、(3)随意運動を調べる実験で、どれも活気ある時間になります。ヒトが運動する方法には2つあることを、楽しい実験を通して学ぶ時間になります。なお、落下する定規をつかまえる実験については別ページ『観察8 神経2年(2003年)』もご覧ください。
上:膝蓋腱反射を試す生徒たち
本時の目標
・神経系は、中枢神経と末梢神経に分かれることを理解する
・反射と随意運動の違いを理解する
・2つの反射実験(目の前でパチン、膝蓋腱反射)を行い、自分はコントロールできないことを体感する
・落下する定規をつかまえる実験(随意運動)を通して、感覚器官→感覚神経→脳→運動神経→筋肉、という一連の流れを体感する。同時に、随意運動は反応速度が遅いことを体感する。準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)(2)ヒトが運動するときの流れ図 (10分〜15分)
ヒトの運動には、自分の意識して行うもの(随意運動)と無意識に行われるもの(不随意運動)があります。不随意運動は反射、ということもあります。
上:A組での板書(クリックすると拡大します)随意運動をコントロール(命令)している中枢神経は大脳、反射は脊髄です。大脳は処理に時間がかかりますが、状況を判断して最適な命令を出すことができます。脊髄は機械的・画一的な命令しか出しませんが、瞬間的に反応するので生命の危険を守ることに役立ちます。
指導の展開
(1)人体の模式図を書く(上図中央)
(2)目を書く
(3)大脳、脊髄を書く
(4)筋肉を書く
(5)リンゴを書く
(6)「リンゴを見て食べるときの手順をまとめましょう」
1)目に光が入る
2)網膜が光を電気信号に変える
3)視神経が電気信号を大脳へ送る
4)大脳がリンゴである、と判断する
5)大脳が『食べよう→筋肉を動かそう』と決断する
6)大脳が筋肉に命令を出す
7)運動神経が電気信号を筋肉へ送る
8)筋肉が収縮する(後略)
(7)上記1)〜8)を、以下のようにまとめる
感覚器官(目)→ 感覚神経→ 大脳→ 運動神経→ 筋肉
自分でコントロールできる運動(随意運動)
上:B組での板書(クリックすると拡大します)
(8)足の裏に画鋲を書く
(9)足の筋肉を書く
(10)「画鋲を踏んだときの手順をまとめましょう」
1)画鋲を踏む
2)皮膚の痛点が刺激を電気信号に変える
3)感覚神経が電気信号を脊髄へ送る
4)脊髄が『筋肉に収縮しろ』と命令を出す
5)運動神経が電気信号を筋肉へ送る
6)筋肉が収縮する(後略)
(11)上記1)〜6)を、以下のようにまとめる
感覚器官(皮膚)→ 感覚神経→ 脊髄→ 運動神経→ 筋肉
自分でコントロールできない運動(不随意運動、反射)
上:C組での板書(クリックすると拡大します)(3)随意運動の例、不随意運動の例 (3分)
2つの運動の例を考え、発表させます。基本的に、すべての運動はどちらかに分類できるので、間違いを恐れずに意見を出す雰囲気を作ってください。随意運動の例は簡単です。たくさん出てくるでしょう。一方、不随意運動はあまり出てきません。授業でどうしてもまとめておきたいのは、瞳孔(どうこう)反射と膝蓋腱(しつがいけん)反射です。瞳孔反射は医師が死亡確認に使うもので、光を瞳孔に当てるものです。生きていれば瞬時に瞳孔が小さくりますが(虹彩が収縮する)、死んでいれば瞳孔は変化しません。膝蓋腱反射は、これから授業で行います。
(4)実験1:目の前でパチン (3分)
近くの友だちどうしで実験させます。方法は簡単です。相手の目の前で、急に両手をパチンとやります。すると、相手は思わず目をつぶってしまいます。これは自分ではコントロールできない不随意運動、反射です。絶対に目を閉じない、と大脳で命令していても、急にパチンとやられると閉じてしまいます。これは目を守るための反射です。私は不勉強なので正確なことは知りませんが、本当の反射は睫毛(まつげ)に触れることで瞼(まぶた)の筋肉が収縮するのではないかと思います。風、風圧によって反射が起こるのでしょう。
(5)実験2:落下する定規をつかまえる (5分〜10分)
定規は30cmでなければ、つかまえることが困難です。もし、10cm以内につかまえることができたとしたら、それは感覚神経や運動神経が短い(手が短い)、あるいは、大脳の処理速度が速い、ということを意味しています。ただし、5cmになることは不可能です。筋肉が収縮するためには最小限の時間が必要なので、5cm以下になることはありません。それは、ヤマを張って掴んだことになります。
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上:落下する定規をつかまえる実験をする生徒たち
実験上のポイント
(1)手を机の端に固定する
(2)定規の下端を、手の上端の位置にする
(3)定規だけを見る
(4)落下したら、すぐに握ろうとする
(5)脳が命令しても、すぐに動かない手を感じる
(6)落下した距離を測定する
(7)測定は、手の上端の位置にある定規を読む
(8)測定は3回とする
(1)〜(8)が終わったら、次に、相手の顔を見ながら行います。この実験は、相手の顔の表情や癖を大脳で計算したり予測したりすることになります。自分が、相手のどのような情報を捉え、どのように処理しているのかを意識することで、大脳のはたらきの面白さがわかります。相手も、あなたの大脳のはたらきを考え、あなたの大脳のはたらきを越えようとします。意識して行うことで、遊びはどんどん高度なものになっていきます。(6)実験3:膝蓋腱反射 (3分〜5分)
膝蓋腱反射は、ビタミンB1不足によって起こる死にいたる病『脚気(かっけ)』を簡単に調べるための方法として有名です。この話を子どもたちにすると、自分は大丈夫なのかと、真剣に調べます。
上:机に座って、足をぶらぶらさせ、本の背で叩く
上:膝蓋腱反射を試す生徒たち(7)本時の感想、考察 (5分)
授業を終えて
どの実験も活気あるものになります。特に大切なのは、定規をつかまえる実験で、自分の大脳が命令を出しても手が動くまでに時間がかかること、手がすぐに動かないことを実感させることです。このタイムラグを認識できると、運動神経を伝わっていく電気信号(命令)のスピードがわかり、さらに、手が長い人(体が大きい人)は動きが遅くなることを体験的に理解できます。関連ページ
観察8 神経2年(2003年)
神経と反射2年(2000年実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』
第3章 動物が動くしくみ 動くためのステップ p.46 落下する定規をつかまえよう! p.47
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骨、筋肉、ヒトの歯