このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 2年(2017年度)です |
第26時
実験1 チョークはどこまで小さくなるか2017 7 5(水)、6(木)
各教室はじめに
今日から化学分野です。中学2年生のテーマは「化学変化」と「原子」ですが、これらは子どもの興味や発達段階に適しています。たくさんの実験を行うだけでなく、その結果を目に見えない原子モデルで説明できるようになるからです。不思議な現象を規則正しい原子モデルで説明することは、とても魅力的です。時間をたっぷりかけて指導し、1人でも多くの子どもに美しい規則の世界を見せてあげましょう。化学式や化学反応式は、テストで簡単に正解できる得意分野になります。
問題があるとすれば、その多くは「英語への苦手意識」から発生しています。私も13才の頃はそうでした。アルファベットを見ただけで拒絶反応を示していました。そのような子どもは原子記号や化学式にも拒絶反応を示します。しかし、十分な配慮と工夫をすれば、あなたの化学授業によってアルファベットに興味を持つだけでなく、外国語をすすんで学ぼうとする気持ちが芽生えるでしょう。私はそうした教え子と何人も出会っています。
また、数字や数式にトラウマを持っている子もいます。授業時間は約30時間を予定しています。その中で、目に見えない小さな「原子」で、目に見える「実験結果」を説明できることを学びます。見えないものをイメージし、それを使って完璧に説明する喜びを教えます。子どもに見えない翼を与え、それを羽ばたかせて新しい世界を見させてやること、それがこの単元の目標です。
系統的にみた「小さな粒」
※粒子という語にとまどう子どもがいるので、粒として紹介しましょう!
中学1年:状態変化を「小さな粒」から考える
中学2年:化学変化を「原子」から考える
中学3年:化学変化を「イオン(電気を帯びた原子)」や「電子」から考える※なお、私は「状態変化→化学変化」の順ではなく、「化学変化→状態変化」の順に教えるべきだと考えています。私からの中学3年間を通した提案は別ページ『化学』にあります。この配列は子どもの発達段階にもとづいていますが、中学を卒業された方は中学理科の化学(福地孝宏著、誠文堂新光社、2011年)をご覧ください。いつの間にか私たちを化学の面白さに引きづり込む本です。もちろん、中学生のみなさんや保護者の方も楽しむことができますよ!
上:チョークはどこまでチョークなのか? (物理的に小さくする)さて、化学分野の初日となる本時は、初めに「科学と化学の違い」と「化学という学問」について紹介します。化学は『物体と物質を区別』し、『物質は小さな原子の集まり』として考えます。言葉だけでは難しいので、毎日の授業で使うチョークを小さくしていく、ぽきぽき折りながら授業を展開します。
関連ページ
・分子と原子(2年、2000年)
・単体と化合物(2年、2003年)
本時の目標
・科学と化学の違いを知る
・物質は、目に見えない小さな原子からできていることを知る
・チョーク(炭酸カルシウム)は、3種類の原子(カルシウム、炭素、酸素)からできていることをイメージする準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- 本日の学習プリント 1枚/人
- チョーク 1本
- チョーク箱(成分表示つき)
授業の流れ
(1) 科学と化学の違い(5分)
「科学と化学の違いを知っていますか? みんなに説明できる人は挙手してください。・・・いずれも『かがく』ですが、それらの意味は違います・・・ おや、誰も手をあげてくれないので、英語に訳してみましょう。科学は?・・・そうですね。サイエンスです。で、化学は?・・・おや、誰もいませんか! 化学は・・・ケミストリーです。みなさんに先生から説明しましょう。科学(サイエンス)は9教科全てに使うことができるもので、『スポーツ・サイエンス』『社会科学』『心理科学』『色を科学的に分析する』のように使います。それに対して、化学(ケミストリー)は自然科学の1分野に過ぎません。化学はある物質が他の物質に変化する、まるで、「お化け」のよう変わる物質について調べる学問です。このことから、化学をサイエンス(科学)と区別して、『ばけがく』と言うことがあります。私も科学を『かがく』、化学を『ばけがく』として区別することにします。なお、これから学習する化学は、いわゆる化学実験をたくさん行う楽しいものです。期待してください!」(2) 実験:チョークを小さくしてみよう!(5分)
新品のチョークを用意します。それを両手に持ち、真っぷたつにおります。「もったいない!」の声が聞こえますが、それを無視してさらに折ります。「ポキっ」ときれいな音が聞こえるのは、子どもたちが先生の実験に注視している証拠です。「もう一回折れそうですね」とつぶやいてから、さらに半分にしましょう。時間があれば、「さらに半分に折ることができる人はいますか!」とやる気がある子どもに振ってみましょう。
→ 上:チョークを物理的に小さくする様子
「先生、もう小さくすることができません!」と代表生徒があきらめたら、お礼を言って席へもどします。
そして、黒板にチョークを小さくする実験をまとめます。(3) 実験結果を考える
チョークとは何か考えてみましょう。チョークをどんどん小さくしていった時、いつまでチョークと言えるの考えてみるのです。以下のように、板書しながら考えます。
上:黒板にチョークとその破片を書いてから、発問「これは何でしょう?」する「これは何ですか?・・・そうですね。円柱ではなくてチョークです。では、それを小さくしたものは何でしょう? ちょっと小さくなりましたが、まだチョークを言えるような気がしますね。チョークとしての価値は下がりましたが、ぎりぎり使うことができます。黒板には『チョークの破片(写真下)』としてまとめておきます」
次に、下の写真のように黒板けしを黒板にパンパンします。黒板消しに付いている粉をいい感じに黒板につけるのです。粉が飛び散るぐらいが、ちょうど良いです。考えるポイントは『白い粉』ですから・・・
上:粉が飛び散るようにパンパンつけると良い「この粉は何でしょう。チョークではないと思いますが・・・うーん、なるほど、チョークの粉ですか! いいですね」
「ではではもっと小さくして、限界まで小さくしたらどうなるでしょう。最小の粒です」
上:いよいよ最終ステップです「最小の粒は目に見えないくらい小さいものです。1粒ではチョークとしての働きをもってませんが、円柱状に固めるとチョークという物体になる粒です。この小さな粒の名前を知っている人はいませんか? チョークという物体をつくっている粒、チョークの物質名です。成分といっても良いでしょう。・・・ほお! 石灰ですか! 悪くありませんが、石灰は運動場にラインを引くときに使う白い粉で、チョークと全く同じ物質・成分です。物質名、成分名を答えてください!・・・おっ、A君が『炭酸カルシウム』とつぶやきましたが正解です。チョーク箱を持ってきたので、みんなで確認してみましょう!」
上:チョーク箱を見ると『炭酸カルシウム』と書いてある
上:チョークという物体は、炭酸カルシウムという物質からできている
※物体と物質を区別すること重要ですが、今回の授業では行いませんでした。『粒』に集中させるためです。「炭酸カルシウムという物質からできていることがわかりましたが、チョークの他に、炭酸カルシウムからできているものはありますか。小学校で学習したものや中学1年で学習したものもあります。・・・そうですね、貝がら、サンゴ、石灰岩、大理石を学習しました」
(4) 炭酸カルシウムは、3種類5つの原子からできている
「中学2年生はもっと詳しく学習します。炭酸カルシウムは、さらに小さな3種類の粒からできていることまで学びます。でも安心してください。答えは簡単です。炭酸カルシウムという名前がその答えです。3種類の粒は、炭素と酸素とカルシウムです。つまり、炭酸カルシウムは『 炭素』と『酸素』と『カルシウム』からできています。簡単でしょ! 化学はとても簡単な規則でできているので、テストでは点取り問題になりますよ。ただし、炭酸カルシウムで覚えなければいけないことが1つありまあす。それは、酸素が3つあることです。図に書いて説明しましょう(下図参照)」「そうそう、最小の粒の名前を知っていますか?・・・その通り! 原子です。みなさん、よく知っていますね」
上:炭酸カルシウムのモデル「カルシウムの粒は1つです。丸を書いて、その中に『Ca』と書きます。これでカルシウムです。次に炭素を書きます。炭素の数も1つです。ただし、より正確に書きたい人はカルシウムと炭素を少し重ねてください。2つがひっついていることを表現するわけです。もっと正確に書きたい人は、炭素の色と大きさに注意してください。炭素の色は黒です。炭(すみ)の色が黒であることはみなさんご存知の通りです。炭素の大きさはカルシウムより小さいのですが、どれぐらい小さいかというと、カルシウム:炭素=20:6の割合です。カルシウムは原子番号20番、炭素は原子番号6番だから20:6にして欲しいのですが、詳しい説明は次回にします。しばらくお待ちください。最後に酸素を書きますが、酸素は3つ書いてください。酸素は炭素と結合しているので、炭素と重ねるようにするとカンペキです。大きさは炭素より少し大きく、酸素:炭素=8:6です。酸素は原子番号8、酸素は原子番号6です。形はこれまでと同じように丸くしたいのですが、それではうまく書けないので、細長くすると良いでしょう(写真上)。色は国際的に赤で書くことが多いようです。酸素はいろいろな物質にひっつく性質なので赤、攻撃的な性格なので赤、と覚えてみましょう。では、このモデル図の確認です(写真上)。粒の数は5つです。つまり、カルシウム1個、炭素1個、酸素3個、合計5個です。原子の種類としては3種類です」
(5) 1本のチョークをつくる粒子の数を紹介する
理論値によると、チョーク100gには炭酸カルシウム600 000 000 000 000 000 000 000個があります(炭酸カルシウム100.1 g/mol)。チョーク1本10gなら、一桁減らして600ガイ個になります。「みなさんに紹介した炭酸カルシウムは、とても小さいものです。どれだけ小さいかというと1粒では全く見えないものです。小さいといってもイメージできないと思うので、チョーク1本に含まれる数を当ててください。何個含まれると思いますか?・・・1兆?・・・少ないですね。100兆?・・・まだまだ桁外れに少ないです。けい?・・・まだ桁外れです。がい?・・・まあ、だいたいそんなところですが、私が黒板に書くので、みんなで一緒に読んでみましょう(写真下)」
上:チョーク1本に含まれる炭酸カルシウムの数「黒板にチョーク1本に含まれる炭酸カルシウムの数を書きますよ。理論的には100gのチョークに6×10の23乗(じょう)個ありますが、黒板には10の22乗という数字を書きます。10の22乗とは『10が22個ある』という意味なので、つまり、(ここから黒板に書きながら)まず10を書いて、その次にゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロです。ふう〜、書くのに疲れました。では、これをみなさんに読んでもらいましょう。まず、(黒板の1を指差しながら)1、(1の次の0を指差して)ここで10、(次の0を指差して)次は100、(次の0を指差して)次は1000、(次の0を指差して)次は1万、(順に指差しながら)10万、100万、1000万。次の桁は?(次の0を指差して)・・・億。(順に指差しながら)1億、10億、100億、1000億。次の桁は?(次の0を指差して)・・・兆。(順に指差しながら)1兆、10兆、100兆、100兆。次の桁は?(次の0を指差して)・・・京(けい)、(順に指差しながら)1京、10京、100京、1000京、次の桁は?(次の0を指差して)・・・垓(がい)1垓、10垓,100垓、となります。お疲れ様でした!」
(6)純物質を2つに分類する
物質は、単体と化合物に分けることができます。単体は1種類の原子からできているもの、化合物は2種類以上の原子からできているものです。簡単ですね! ところで、授業では純物質という語句をあえて使いませんでした。授業の流れから判断して、ほとんどの子どもたちは純粋な物質だけを考えているからです。「物質を2つに分類してましょう。方法は簡単です。物質を構成する原子から考えます。すなわち、1種類の◯◯からできているものを単体、2種類以上の◯◯からできているものを化合物をいいます。簡単ですね。プリントに枠線を印刷してあるので、◯◯に適切な語句を入れて完成させなさい」
上:Aさんの学習プリント「ところで、炭酸カルシウムはどちらかわかりますか?・・・学習したばかりなので簡単です。炭酸カルシウムは3種類の原子からできているので、化合物です」
「次に、それぞれの例を書いてもらいますが、全員に考えてもらいます。先生が問題を出すので、単体か化合物か答えてください。全員挙手してください。2択問題です。手をあげるのが遅い人は不正解としますので、さっと手をあげてください。第1問は酸素にします。酸素は単体かなあ〜? 勢い良く手をあげてくださいよ。では、みなさんに質問します。・・・ 酸素は単体だと思う人!・・・あっ! 手をあげていない人がいます。大丈夫ですか! 手がまっすぐ上がっていない人も大丈夫ですか! 酸素は単体なので、しっかり手をあげてくださいね。では、正解だったと人は手を下ろして、プリントに書きましょう。単体の方に酸素(O2)、と書きます。間違えた人は、『O2』だから『酸素原子が2個ある』、と考えたのだと思いますが、原子の種類としては1種類です。酸素は、酸素原子だけでできた単体です。」
「第2問は水素にします。同じように、素早く手をあげてください。では、質問します。水素は単体だと思う人!・・・(以下省略)」
◎ 生徒の学習プリント
上:Aさんの学習プリント(クリックすると拡大)
授業を終えて
初めての化学の授業を楽しんでいただけたのではないかと思います。関連ページ
・分子と原子(2年、2000年)
・単体と化合物(2年、2003年)実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』
生物の進化 |
実習2 元素周期表 |