このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第37時
実習11 定比例の法則

2017 9 11(月)
普通教室

はじめに
 過去2回で学習した『マグネシウムの酸化』『銅の酸化』の理想的な実験結果を確認します。2つのデータを比較することで、マグネシウムと銅の共通点と相違点を明らかにします。次に、それぞれの結果をグラフにします。グラフの横軸は決まっていますが、縦軸のとり方によって2種類のグラフができることを理解し、2種類のグラフを書いたり読み取ったりできるようにします。

 この問題は、高校入試でよく出題されます。実験結果のデータの表(あるいは、グラフ)を使った計算問題として、いろいろ変化をつけやすいからです。比例計算の問題、いわゆる難問の部類に入ります。

 今日の授業は、2つを比較することで基本概念の習得を容易にします。そして、生徒がよく混乱する2つのデータ処理方法を同時に学習することで、2つの違いを明確にします。よく混乱する2つは以下の(ア)(イ)です。

(ア)初めの物質(g)とその酸化物(g)
(イ)初めの物質(g)とそれに化合する酸素(g)

 上記(ア)(イ)は日本語を読むことが不得意な子どもにとって、すでに難問です。そうした理科以前の問題があることも理解した上で、先生はやさしい広い心で教えてあげください。おもしろいことに、子どもの中には日本語よりも図表や図形の方が得意な子がいます。私もその1人でしたが、そのような子は直感で理解した後に、言葉を使うようになります。ですから、言葉や説明が好きな子どもは、私の授業展開が好きではないようです。

上:


本時の目標
・マグネシウムの酸化、および、銅の酸化に関する比例問題を理解する
・『初めの物質とその酸化物』と『初めの物質とそれに化合する酸素』の違いについて理解する
・2種類のグラフを書けるようにする
・2種類のグラフの比例問題を解けるようにする

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 高校入試によく出題される問題であることを紹介。そして、学習プリントの内容を早く終わった人(合格印をもらった人)は、できない友だちを教えることでより深く理解するように勉めることを推奨します。

(2)銅の酸化(5分〜10分)
 初めに、銅の酸化の化学反応式を書かせます。その正解を確認するときのポイントは、係数です。下図の化学反応式から係数だけを取り出すと、『 』『1(空欄)』『』になります。 これらは、それぞれの物質の最小の粒で反応させたときの割合を表しています。すなわち、『銅:酸素:酸化銅=2:1:2』、「 銅2個と酸素1個から酸化銅2個ができる」です。


上:銅の酸化

 この結果をグラフにする方法は2つあります。横軸は変数にする、というグラフの決まりがあるので『はじめの銅(g)』に固定されますが、縦軸は2つの方法で処理することができます。上図の縦軸を見てください。左は『化合する酸素(g)』、右は『できた酸化銅(g)』になっています。

 さて、以下の囲み部分はとても重要ですが、説明はさらっと流します(30秒〜1分)。全員理解させることを望んではいけません。今日の授業の肝は、グラフです。グラフを理解し、グラフを好きになり、グラフの問題出たらワクワクする子どもにすることです。

銅:酸素:酸化銅(化学反応式で2:1:2)は
      グラフや表の問題で 4:1:5、になる

 化学反応式における銅:酸素:酸化銅=2:1:2、は最小の粒、モデル図で考えたときのものです。組み合わせる粒の数です。質量(g)とは無関係です。

 これに対して、グラフは質量(g)の関係を表したものです。銅と酸素は2:1の割合で結合しますが、それらの質量はもともと違うので、質量比は2:1になりません。

 質量(g)は実験から得られた事実(実験結果)です。実験したデータを表にして、それをグラフにすると傾きが得られます。傾きは、質量(g)の比、割合をあらわしています。銅:酸素:酸化銅=4:1:5、です。

 割合(グラフの傾き)は、化学反応式とは直接関係ありません。もちろん、それらの物質の原子量を知っているなら、互いの数値の関係を完璧に説明できます。原子の質量を調べれば良いのですが、このタイミングでそこまで学習すると混乱します。先生がどうしても教えたいなら、3年生で『原子の構造』を学習してからにすると良いでしょう。

 質問や再度の説明を求める子どもには、クラス全員が『銅:酸素:酸化銅=4:1:5を使った2つのグラフ』を理解した後で、個人的に教えることを約束してください。

 

実際の授業現場
 「グラフを書きましょう!」

 「今日は2種類のグラフを同時に書き、2つのグラフの違いを理解してもらいます。(下図のように2つのグラフの横軸、縦軸を書いてから)横軸は同じですが、縦軸が違う2つのグラフです」


上:同じデータからできる2つのグラフ

 「では、左側から書いていきましょう。銅で理想的な実験を行った場合、きちんと割り切れる最小のデータは、銅が4gのときです。銅4gに化合する酸素は1gです。これは実験に得られた値であり、事実です。何で? ではなくて、銅と酸素はそのような割合で化合するということです。では、これをグラフに書きましょう。はい、左のグラフを見て! (グラフが不得意そうなA君を狙って) A君、横軸4のとき(横軸にメモリを打ち、4と8を書き、そ4から真上に破線を書きながら)銅4gのとき酸素何gでしたか? ・・・えっ、わからない! わからないじゃなくて「聞いていませんでした・・・」かな? 思い出してください。先生は先ほど、銅4gに化合する酸素は何g、と言いましたか? ・・・(A君が1g、と答える)・・・できるじゃないですか! とうことで、4のとき1です。したがって、(縦軸に1を書き、、そこから真横に破線を書きながら)A君の発表してくれた4と1は、ここになります(前に書いた2つ破線の交点に、ぐるぐるっと点を書く)

 「A君、もう一問お願いしても良いですか? ・・・(首を横に振ったら)・・・どうやら嫌がっていますが、今度は先生の無理な願いなので、間違えても大丈夫です。みなさんは静かに見守っていてください。では、問題です。黒板を見て! 先ほどは4のとき1、でしたが、今度は8のときです。8は4の2倍なので、縦軸も2倍になります。ではでは、横軸8のとき、縦軸はいくつになりますか?・・・(中略)・・・とうことで、左のグラフが完成しました」

 「次の右のグラフはノーヒントで描いてください。違うのは縦軸だけです。軸のメモリはすべて書くのではなくて、必要なものだけを書くほうが優れています。では、両方とも完成した人から持ってきなさい」

 できる子どもは10秒ほどで持ってきます。先生は合格印を押してください。目標は、子ども全員に合格印を押すことです。もらった子どもには、でない友だちを教えるように指示します。

(3)マグネシウムの酸化(3分〜10分)
 初めに、Mgの酸化の化学反応式を書かせます。反応式の係数は『Mg:酸素:酸化Mg=2:1:2』になり、それは「 Mg2個と酸素1個から酸化Mg2個ができる」ことを意味しています。

Mg:酸素:酸化Mg(化学反応式で2:1:2)は
     グラフや表の問題で 3
:2:5、になる

 


上:Mg(マグネシウム)の酸化

実際の授業現場
 「マグネシウムについても、2つグラフを書きましょう! 書き方考え方は銅と同じです。マグネシウムの場合、マグネシウム3gに対して酸素2gが化合することがわかっています。先生からは以上です。では、2つのグラフが書けて人から持ってきなさい。合格印を差し上げます!」

 できる子どもは即座に取りかかりますが、できない子どもはぼさっとしています。60秒ほど無音の時間を楽しんでから、できない子どもために、上図左のグラフについて、非常にゆっくりしたスピードで解説を行います。

 できる子どもは、先生が解説を始める前に自席を立っているかもしれません。そのような場合は、初めの点『横軸3縦軸2』を書くこところまで待たせてください。その後の解説はしません。できる子どもにやらせたり、子どもたちで教えあうほうが優れた授業である、といえるからです。私は、自分ができればよいという大人になって欲しくないのです。

(4)化学反応式の係数に関するまとめ (3分)
 下図のまとめ、を参考にしてください。


上:化学反応式に関するまとめ

(5)定比例の法則、質量保存の法則のまとめ (3分〜5分)
 ある化合物をつくる原子の割合は決まっています。これを定比例の法則、といいます。


上:定比例の法則、化学反応式まとめ、銅の酸化(B組)


上:質量保存の法則のまとめ、マグネシウムの酸化(B組)


上:B組での板書(クリックすると拡大します)


上:C組での板書(クリックすると拡大します)

(6)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 理解力の高いこどもは20分もしないうちに自分のノルマを達成します。先生の合格印をもらいます。しかし、本当の実力がつくのはそこからです。理解できない友だちを何人助けることによって、力がついていきます。

できない子どもが助けてと言い、できる子どもが助ける
 あなたが先生ならご存知のことと思いますが、同じ穴にたくさんの子どもが落ちていても、そこから助け出す方法は1つではありません。10人いれば、10以上の方法が必要です。1つの方法で8人助け出すことができても、残り2人を助けるために、何10通りのもの方法を編み出す必要があるかもしれません。

 なぜ、その穴から出られないのか、それが問題です。日本語が理解できていない、自信を失っている、お腹が痛くて集中できない、など理科以前のことを解決する必要があるかもしれません。

 グラフを教えることは非常に簡単なことです。子どもたちどうしで、グラフを教え合わせてください。それはグラフではなく、相手を理解することから始まります。

教育のスタート地点
 「助けて!」「教えて!」「君の説明はわからない!」「他の方法で教えて!」と言える子どもを育ててください。それが教育のスタートです。

 「どうしてわからないの!」「何度言ったらわかるの!」という先生は反省してください。わからないから子どもなのです。「わからないことを知りたい、という純粋な気持ちを育ててください。わからない、という子どもの芽を育てましょう。刈り取ることは教育ではありません。

 「わらかない」は「知りたい」の裏返しです。同じ意味であることを理解してください。

 私の1番目の目標(教育のスタート地点)は、しったか振りをしない子ども、助けを求めらる子どもに育てることです。友だちを助けたり教えたりするこことは、その先の段階です。

 とうことで、私は合格印を押してから、子どもたちが教え合っている様子をニコニコしながら机間巡視していました。さぼっているわけではありません。

関連ページ
実験5 マグネシウムの酸化(2年)2003年

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学

第4章 化学変化  銅の酸化 p.52-p.53

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