このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第38時
実験12 銅の還元

2017 9 12(火)
理科室

はじめに
 私はこの実験を成功させる秘訣を知りません。経験上、正しいであろう思うことは、(1)加熱温度をガスバーナーにおける最高までに上げる、(2)炭素は粉末よりも砕いた備長炭の方が良い、(3)酸化銅と炭素の割合が適切だと綺麗に反応する、(4)加熱をいつまでも続けると還元した銅が再び空気中の酸素と結合して酸化銅に戻る、(5)試験管のガラスが溶けるほど高温にするとその内側に付着した銅が鏡面のように輝く、などです。金属光沢を得るために偶然を必要している状況ですが、ほとんどの班で『銅メダル』や『新品の10円玉』や『電流の導線の銅』の色は得ることができています。

 この実験(酸化銅と炭素の加熱)では、酸化と還元が同時に起きます。酸化銅は還元、炭素は酸化されます。これを教えることは先生にとっては簡単ですが、生徒にとっては初めてのことなので、さらっと1回知らせる程度にします。メインは実験によって金属光沢の銅を取り出すこと、および、酸化銅が還元されることです。これと同時に炭素が酸化されることは、後日、日を改めてまとめなおすした方が、実体験を伴った知識として定着率が高くなります。

関連ページ
実験9 酸化銅の還元(2年)2003年
実験5 酸化銅の還元(2年)2000年


上:火力を調整する様子


本時の目標
・還元は、ある物質から酸素が取れることであることを理解する
・酸化銅と炭素の化学変化では、酸化と還元が同時に起こることを知る
・酸化銅を還元させる実験を行い、金属光沢をもつ銅を採取する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 酸化銅 (1 /班)
  • 備長炭 (1 /班)
  • 試験管(1 /班)
  • 鉄製スタンド(1 /班)
  • ガスバーナー(1 /班)
  • チャッカマン (1 /班)
  • 古紙 (1 /班)
  • ピンセット(1 /人)
  • 金槌(3/組)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)銅の酸化の復習(2分〜3分)
 銅の酸化は2時間前『実験10銅の酸化』で学習しているので、下図のように化学反応式を復習します。


上:銅の酸化と銅の還元の化学反応式

(3)銅の還元の確認(3分〜6分)
 (2)で酸化の復習をしたら、連続して『銅の還元』の化学反応式を確認します。(3)までの所要時間は長くとも10分とし、その中に還元の意味の紹介も含めます。本時の一番大きな目的は、金属光沢をもつ銅を採取することです。


上:別クラスにおける2つの化学反応式

(4)実験手順・方法の紹介(5分〜7分)
 下図のように板書しながら、実験手順の説明をします。本時は火力が強く、試験菅が曲がることがあります。注意点としては、(1)湿った試薬から出た水によって試験管が割れないように試験管のほんの少しだけ(1°で十分)斜めにすること、(2)鉄製スタンドの自在バサミのゴム部分が溶けないように挟む位置を試験管最上部にすること、(3)ゴム管が折れ曲がってゴム栓が飛ばないようにすること、などがあります。


上:酸化銅と炭素の混合物を加熱する装置

(5)実験の準備 (3分)
 準備はいつものように、ほぼ全て生徒が行います。酸化銅と備長炭は、下図のように薬包紙にのせた状態で配布します。備長炭は、生徒の目の前で叩いて割るようにすると、その特徴を感じることができます。


上:左は酸化銅、右は砕いた備長炭
 酸化銅の量は、少ない方が良い結果になるように思います(写真上は5つに分けるべきです)。備長炭は完全な粉末になるまで砕かない方がよいように思います(写真上はさらに砕くべきです)。

 石灰水は、大きなボトルから必要な量を取らせます。

(6)生徒実験 (20分〜30分)
 点火できるように、どんどん準備させてください。加熱する準備が整った班は、挙手させます。そして、前述の注意点(1)湿った試薬から出た水によって試験管が割れないように試験管のほんの少しだけ斜め(1°で十分)に設定すること、(2)鉄製スタンドの自在バサミのゴム部分が溶けないように挟む位置を試験管上部にすること、(3)ゴム管折れ曲がってゴム栓が飛ばないようにすること、を確認してください。合格した班にはチャッカマンを手渡し、点火させます。チャッカマンは点火後すぐに回収します。


上:準備を整え、点火する様子
 点火は試験管の真下を外した位置で行い、炎の状態を整えてから試験管の下へ移動させる


上:加熱中の様子
 黒い混合物を加熱している試験管を見ると、白くなり、水が発生していることがわかる。この水は試薬が湿っていたことが原因であり、今回の化学反応とは無関係。黒いゴム管の先端はガラス管につながり、そのガラス管は石灰水の中に入っている。石灰水をよくみると、白く濁っている。

 石灰水が濁った班は、挙手させます。先生はその班を点検し、石灰水の白濁を確認したら『合格印』を押します。そして、石灰水が入った試験管からゴム管を抜きます。これで安心です。100℃以上になったゴム管で火傷したり、石灰水が逆流したりする危険性がなくなりました。なお、ゴム管を引き抜く代わりに、混合物が入っている試験管のゴム栓そのもの外す方法もありますが、これは火傷の危険が高くなるので、熟練の先生でも十分に注意してください。


上:硬い床の上で、古紙に包んだ試験管を割る


上:その後、試験管内にできた金属光沢の銅を探し、ピンセットで採取する
 採取した銅は、プリントにセロハンテープで添付する

(6)実験の後片付け (3分〜5分)
 割れた試験管やガラスの破片、残ったものは古紙に包んで持って来させます。

石灰水を入れたビーカー、試験管
 石灰水を入れた試験管やビーカーは、炭酸カルシウムが付着して白く汚れます。これを綺麗に洗浄させるのは時間の無駄です。濡れているときは綺麗に見えても、乾燥すると白くなるものです。

 生徒には、簡単に洗ってから先生へ渡すように指示してください。先生は一括して、薄い塩酸(20倍程度に薄めたもの)で洗います。洗うというよりも、薄い塩酸につけるだけで、瞬間に溶解します。こする必要は一切ありません。

 できる生徒は黙っていても、先生が洗浄している姿をみて学ぶものです。

(7)本時の感想、考察 (3分〜5分)
 酸化銅は還元、炭素は酸化されることを確認します。実験で工夫したことや注意したこと、発見したことや感じたことなどを書かせます。


授業を終えて
 本年度は、銅の採取量が多くありませんでした。酸化銅の量が多すぎたこと、市販の粉末を利用したことが大きな原因だと思います。

 2003年度の『実験9酸化銅の還元(2年)2003年』は各班がつくった酸化銅を利用し、良好な結果を得ていました。2000年度の『実験5酸化銅の還元(2年)2000年』はアルミホイルを利用し、アルミ箔や試験管内側に良好な結果を得ていました。さまざまな条件があると思うので、中学生の授業にふさわしい方法を知っていらっしゃる先生は教えてください。全国のみなさんが利用できるように情報共有・公開しましょう。

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