このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第97時

実験24 磁界を動かして電流をつくる 

2018 3 13(火)
理科室

はじめに
 コイルの近くで磁石(磁界)を動かすと、電流が発生します。この現象を電磁誘導、発生した電流を誘導電流といいます。中学理科ではその原理に触れず、電流の向きも調べません。物足りない感じもしますが、それらまで扱うと、ほとんどの生徒が混乱し、これまで9時間かけて学習してきた『電磁力の関係』が水の泡になります。指導するなら、さらに5時間必要ですが、くどい学習は失敗します。中学では将来も教えるべきではないと思います。

 などと言いながら、私は授業で電流の方向に触れます。その明快な規則性を教えなければ、中学理科で扱う必要がないと思うからです。現場ではわかりやすい表現が必要なので、『いやーん(いやよ!)の法則』として紹介しましす。なお、文科省や教科書出版社の方はくれぐれも『レンツの法則』などとして扱わないようにしてください。高校からです。よろしくお願いします。

 過去の授業記録を見ると、14年前『実験15 電磁誘導2年(2003年)』はレンツの法則に触れることなく理解度の高い授業をしています。17年前『実験11 誘導電流2年(2000年)』はレンツの法則を見出そうとして失敗しています。今年は模式図を使ったりまとめたりすることなく触れるだけなので楽しく終わっています。


図1:本時の学習プリント(クリックすると拡大します)
※本時は左半分だけで、右半分は次の時間に使います


本時の目標
・電磁誘導という現象、および、誘導電流を確かめる
・磁界を動かす方向と電流の方向、両者には規則性があることを確かめる
・いや〜ん!の法則(レンツの法則)に触れる

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント (1 /人)
  • 電磁誘導実験用コイル(1/班)
  • 棒磁石       (1/班)
  • 検流計       (1/班)
  • リード線      (2/班)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)電磁誘導の原理、誘導電流の紹介 (15分〜18分)
 コイルに磁石を近づけると、 コイルは磁石を拒むような電流を発生させます。同じように、コイルから磁石を遠ざけようとすると、コイルは磁石が逃げないような電流を発生させます。私は、動くことを拒み、現状を維持するような現象を『いや〜んの法則(レンツの法則)』として紹介しました。これは、反抗期に入った中学生にとって、納得しやすい現象です。

 「みなさんの中に、コイルのような性格の人はいませんか? 近づいてくると拒否して、遠ざかろうとすると引き止める人です!・・・(生徒の中から、A君だ! Bさんね、という声が出るので)・・・(該当する生徒の顔色を見てから、適切なコメントを出す)・・・(あるいは、にっこり笑って「まあまあまあ」とお茶を濁す)

 以上が電磁誘導の原理です。このように紹介すれば、生徒はかなり納得します。しかし、電流の電流の方向まで教えると大混乱を巻き起こすことがあるので、十分に注意してください。私は、図2のように指導しましたが、真面目な教え方しかできないなら、教えるべきではありません。

 図2は、黒板を上下二等分にして、同時進行で説明していきます。


図2:誘導電流の方向を示すための板書

黒板中央の、
コイルが棒磁石になった図(上半分:N極、下半分:S極)
 「コイルが嫌がっていることは理解できたと思います。では、棒磁石を動かさないようにするためにコイルはどうするかというと、磁石に変身して、反発したり引き寄せたりすれば良いわけです」

 「まず、上の場合を考えてみましょう。N極が近づいてくるのだから、それを拒否するためには何極になればいいですか? S極ですか、それとも、N極ですか。・・・そうですね、N極です。N極になれば反発するので、棒磁石の接近を防ぐことができます。次に、下の場合を考えてみましょう。N極が遠ざかろうとするのを引き止めるためには、何極になればいいですか。・・・そうですね、N極を引っ張ればよいので、S極になります」

黒板右の、
右手の法則の図(親指:磁界、4本の指:電流)
 「これらを『右手の法則の図』で描いてみましょう。
(右手の親指を立てたグー、を見せながら)右手を出してください。では、上の親指はどちら向きになりますか? 上ですか、下ですか。・・・見た通り、簡単です。・・・みなさん、親指の方向を合わせてください。はい!・・・ 全員正解! 上向きです。(上向きの右手を素早く板書して)・・・次に、下の親指はどちら向きになりますか? 親指の向きを合わせてください。・・・あれ〜っ! 違う人がいるけど、(周りの様子をみて素早く直す生徒がいるので、その子のウインクして)・・・ぁぁ、全員正解でした。(下向きの右手を素早く板書して)と、こんな感じになります」

 「これに電流を書けば完成なので、電流をいつもの黄色で書きますよ。電流は4本の指になるので、上図は(右手親指を上に向けて、くいっ、くいっ、と回しながら)電流はこっち(黄色チョークで矢印をくいっと書き)、下図は(右手親指を下に向けて、くいっ、くいっ、と回しながら)電流はこっち(黄色チョークで矢印をくいっと書く)です」

最後に、黒板左端のコイルに、黒板右端の電流の方向(+→)を書く

以上

(3)電磁誘導と誘導電流のまとめ (5分)
 (2)の内容を、ごく簡単にまとめます。穴埋め問題にしても良いでしょう。


図3:電磁誘導と誘導電流のまとめ(A組、クリックすると拡大します)


図4:同上(B組部分、クリックすると拡大します)


図5:同上(C組部分、クリックすると拡大します)

(4)実習: (分〜分)
 いや〜ん!の法則を確かめることは要求しません。磁石の逆に動かすと電流が逆になること、磁石の極を変えると電流も変わること、など『逆にしたら逆になる』ことだけを確認させます。


図6:実験スナップ写真(クリック!


図7:同上

 図7のコイルには、マイナス端子が2つあります。250回巻き、500回巻きを選択できるので、巻き数による誘導電流の大きさの変化を体感することができます。


図8:検流計の針の動き


図7:棒磁石2本で挟むようにして、コイルが巻かれている方向と同じに動かす様子

(5)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 生徒実験では、単純で面白くないと思われるようなことでも、楽しく確かめていました。

関連ページ
実験15 電磁誘導
2年(2003年)
実験11誘導電流
2年(2000年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

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