このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第39時
実習7 メンデルの法則

     2018 9 6(木)、7(金)
     普通教室

はじめに
 遺伝学の祖、といわれるオーストリアの科学者&修道院司祭、メンデルが発表した遺伝の法則を学びます。その発表は1865年のことでしたが、とても先駆的な考えだったので、当時の人は理解することができませんでした。その彼の実験と成果を振り返ることで、彼がどのように考えたのか学びます。

 授業では、3つのステップに分け、それぞれの結果について思考させます。


上:エンドウ(マメ科)の花の模式図


本時の目標
・メンデルの法則を理解する
・自家受粉について知る
・純系、および、形質の意味を理解する
・分離の法則を理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)メンデルの紹介 (3分〜5分)
 「教科書@ページを開けてください。肖像写真がありますね。この人を知っている人はいますか? ・・・では、A君、紹介してください!」


図1:メンデルの紹介

 「オーストラリアは南半球にありますが、オーストリアはヨーロッパです」

(3)自家受粉と他家受粉 (3分〜5分)
 自分の花粉で受粉することを自家受粉、他の花の花粉で受粉することを他家受粉といいます。

 花は種子、新しい子孫をつくるための生殖器官です。雌しべと雄しべは、自分の遺伝子と他の遺伝子を合体させる=他家受粉、を行うための中心的存在です。しかし、エンドウ(マメ科)のように自家受粉する植物もあります(下図2)。


図2:エンドウの花の模式図

 エンドウの花弁は閉じているので、その空間内で自家受粉が行われる。

 私が担当した子どもたちは、中学1年生の時にエンドウと同じマメ科のフジの花を観察しています(『観察1 フジの花(マメ科)1年、2013年』)。そこでは大きな羽音をたてるハナアブたちを怖がっていましたが、ハナアブは蜜や花粉を食べる草食性の動物であり、大きな体は花弁を開けるために使われることを教えました(恐る必要はない)。これを思い出させることで、マメ科の花のつくりと自家受粉に関する理解が一気に進みました。

 なお、一般的な花は自家受粉を避けるため、雌しべと雄しべの成熟時期をずらしています。どちらか一方が先に成熟すれば、他の花の花粉をもらうことができるからです。多くの花は(ヒトと同じように)雌しべの方が先に成熟します。

 ここまで説明してから、メンデルの仕事をイメージさせると、彼の根気強さがわかります。彼は1つひとつの花の花弁を開け、花粉をつけていったのです(交配)。それを何千、何万、何10万と、何年もくり返したのです。これほどまでの情熱は、美味しい枝豆を食べたい、という動機だけでは不十分でしょう。

(4)ステップ1:純系をつくる (3分〜8分)
 純系とは、同じ形質をもつ子孫しか生まれない遺伝子を持つ生物のことです。最近は、ペットを飼っている家庭がめっきり減りましたが、「犬や猫を飼っている人は?」と問いかけてください。そして、血統証について知っているか発問したり、ペットの種名を発表させたりしてください。雑種、という言葉についても正しく教えることができます。雑種とは、いろいろな形質の子孫が生まれる生物のことです。

 純系をつくる方法は、地道です。ある1つの形質に狙いをさだめ、その形質をもつ個体だけを選びます。そして、その個体どうしで子をつくります。生まれた子から、その形質を持つものだけを選び、同じように孫をつくって選別します。これを繰り返すことで、純系の生物ができるのです。


図3:純系に関する板書(A組)


図4:純系に関する板書(B組)


図5:純系に関する板書(C組)

ペットの形質を描く
 子どもたちのペットの種名を聞いてから、その形質について教えてもらいましょう。そして、その動物の特徴を黒板に描くと、形質についてよく理解できます。下図6は芸術的ではありませんが、ご参考までに・・・


図6:太朗(イヌ)の形質

 「B君、では、君のイヌの形質を教えてください。え、まず、顔が三角。目は・・・大きい。耳は・・・ピンと立っている。その他の顔の特徴は・・・? ない。では、体の特徴は?・・・足が長くて、尾っぽがふさふさ。なるほど、上図6のようでいいですか?」

 「で、その子の種名は・・・太朗!?! 太朗は名前でしょ! 名前ではなくて、種名を教えてください」

(5)ステップ2:純系(親)どうしで雑種(子)をつくる (3分〜5分)
 下図7をみてください。


図7:純系どうしで子をつくった場合の板書(A組)

 純系どうしで子をつくった場合、どちらか一方の形質しか現われません。例えば、赤と白の親からできた子は、すべて赤になります。この事実(メンデルの実験結果)を教えてから、その説明方法を考え、話し合わせます。自分の言葉で説明できれば、200年前の天才と同じレベルになります。

 上図7(A組)は『赤は自己主張が強いから』『優性だから(予習or学習塾or教科書)』、下図8(B組)は『あらわれやすい・隠れやすい』、としてまとめました。


図8:純系どうしで子をつくった場合の板書(B組)

 この時、遺伝子をA』と『a』のように表現することを教えます。現れやすいものは『A隠れやすいものは『aです。そして、遺伝子の組合せはAA』『Aa』『aa』であることを確認します(上図8の色チョーク)。

(6)ステップ3:子(雑種)どうしで孫をつくる (3分〜15分)
 子どうしで孫をつくると、赤:白=3:1の割合になります。なぜ、そのような結果になったのか、自分の言葉で説明できる人を募集してください。先生は説明する必要ありません。どんなにできない学校でも、15分使えば子どもたちだけの力で説明できるものです。その方が、先生が説明するより深く理解できます(下図9、10)。


図9:子と孫の表現型と遺伝子型
表現型
は『赤・白』、遺伝子型は『AAaaAa


図10:子と孫の表現型と遺伝子型
 子はすべて赤(表現型)、すべてAa(遺伝子型)
 孫は赤:白=3:1(表現型)、AA:Aa:aa = 1:2:1(遺伝子型)

(7)本時のまとめ (5分)
 まとめで思考させてはいけません。すでにまとまっているものを、後日振り返るために書き留めるだけです。さくっと、先生が美しく提示してください。端的に、です。その後、一人ひとりの子どもが自分の言葉、自分の思考方法でまとめる時間を確保してください。


図11:本時のまとめ


図12:対立遺伝子に関するまとめ

(8)本時の感想、考察 (5分)
 子ども一人ひとりの時間です。


授業を終えて
 授業を終えるころには、遺伝について高い興味関心を示す子どもが何人かできているはずです。指導上のポイントは、子どもに考えさせる時、制限時間することです。通常は1分です。複数の子どもから「もっと時間が欲しい」と声が上がった時だけ、2分思考させます。これらの時間は、個人で考える時間なので、近くの友だちと話し合わせることはしません(場合によっては黙認しますが)。そして、個人で発表させてから、その考えについて、学級全体で議論できるように先生が司会をしてください。1人で長時間思考させることは、多様な子どもたちが集まる授業で行うべきことではありません。時間はみんなの考えを聞き出し、多角的な理解をするために使うべきです。先生による説明だけで終わるような講義は、豊かな授業とは縁遠いものです。

note:生徒と先生の会話
「先生、メンデルってイケメンですよね」
「個人的な趣味嗜好に対して、先生は基本的に否定しません」

関連ページ
メンデルの法則3年(2001年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

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