このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第40時
実習8 卵、精子をつくる減数分裂

     2018 9 7(金)、10(月)
     普通教室

はじめに
 メンデルの法則は3つありますが(分離の法則・独立の法則・優劣の法則)、その根幹は『分離の法則』です。今日のメインはこれです。

 さて、これまでの授業は『ABO式血液型』『メンデルの法則』でしたが、これら2時間のうちに『分離の法則』という名称を教えた学級は1つだけでした。なぜなら、遺伝現象を数学的に説明することは先生にとって簡単でも、子どもたちは3:1などの数学的表現に拒否反応を示すことがあるからです。

 算数レベルであっても、数を扱う時はゆっくりにしましょう。私の現任校は名古屋市内トップクラスですが、それでも安全策をとっています。自然現象の妙、それを紐解く面白さ、論理的に説明できる明快さ、授業ではこられを優先させます。3:1という数学的表現を教えることになるので、それ以外のことは最小限にします。『分離の法則』という新出単語の追加は得策ではないので、本時、日を改めて確認・名称を教えることになりました。

分離の法則(メンデルの遺伝の法則)
 対立形質をきめる1対の対立遺伝子は、生殖細胞(卵や精子、配偶子)をつくるときに1つずつに分かれる

補足
ネットで『分離の法則』調べると『ある形質が孫の世代で3:1に分離する、という法則』 と解説してあるものがありますが、これは適切ではありません。
※岩波 生物学辞典 第2版 p.1087参照

 また、対立遺伝子という名称も同じように性急に教えないようにしましょう。分離の法則が100%成立する例は、ヒトおいて多くないからです(1つの形質を決めるために、複数の対立遺伝子が関係している場合が多い)。


図1:ヒトの主な対立遺伝子


本時の目標
・生殖細胞をつくるためには減数分裂が不可欠であることを理解する
・減数分裂の時にみられる『分離の法則』について理解する
・対立遺伝子について理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)染色体(3分〜5分)
 下図2、3のように染色体について簡単にまとめます。染色体は、(ア)遺伝と深い関係があるもの、(イ)細胞分裂ときに出現するもの、という2点をおさえれば十分です。ポイントは深追いをしないことです。


図2:染色体に関する板書(A組)


図3:同上(B組)

(3)いろいろな生物の染色体の数(3分〜5分)
 染色体は生物の種によって、その数が決まっています。ヒトは46本ですが、それを知っている子どもはかなりマニアックな生徒と言えるでしょう。


図4:いろいろな生物の染色体の数

 上図4を見てください。アメリカザリガニはたくさんの染色体、チンパンジーはヒトより2本(1対)多い染色体をもっていることを示しています。また、動物や菌類・細菌類もそれぞれ固有の数の染色体をもっています。資料集をみて、子ども自身に興味あるものまとめさせるとよいでしょう。

(4)生殖細胞のつくり方(分〜分)
 卵や精子を生殖細胞といいます。卵巣、精巣などの新出単語のついてもまとめてください(図5)。


図5:生殖細胞のつくり方

 生殖細胞の特徴は、染色体の数が半分になっていることです。半分にするために行われる特別な細胞分裂を減数分裂といい、それが行われる器官が卵巣・精巣です。ヒトの場合、生殖細胞の染色体数は23本です。卵と精子が合体することで、通常の染色体数になります(下図6)。


図6:ヒトの染色体数

 上図6を見てください。白で書かれた数字は、減数分裂をしなかった場合です。46本どうしで合体すると、その子は92本になります。その子が孫をつくると、さらに倍の184本になります。これでは無限に増えてしまうので、子をつくる前に染色体数を半分に(減数分裂)します。それを示したものが、上図6の赤字です。


図7:減数分裂に関するまとめ(A組)


図8:減数分裂に関するまとめ(B組)

(5)対立遺伝子(5分〜10分)
 2時間前に学習した『ABO式血液型』で対立遺伝子について軽く触れましたが、今日は、ヒトの主な対立遺伝子を紹介するすることで、さらに遺伝子について親しみをもつようにします。下図9は、よく紹介される対立遺伝子の例です。


図1(再掲):ヒトの主な対立遺伝子
 対立する形質の下にある数字は、子どもたちに挙手させた結果。例えば、(1)舌は『巻くことができる遺伝子』があり、遺伝的に『巻ける・巻けない』が決まっている。上図1は、巻ける人17名、巻けない人15名だったことを示している。


図9:B組で調べたヒトの対立遺伝子

 図1と図9を比べると、『舌』と『耳たぶ』は共通しています。それらは比較的わかりやすい例として、私から示したものです。それ以降の『まぶた』『親指』『髪』『虹彩の色』は違いますが、それは各学級で子どもたちから発表されたものです。

(6)分離の法則 (3分〜5分)
 分離の法則は、メンデルの法則の根幹をなす法則といえるものです。これまでの授業『ABO式血液型』『メンデルの法則』でまとめることも可能です。それまでにまとめることが難しかった場合は、本時は3時間目になるので、先生から提示してください。数分以内の復習で、十分理解できるはずです。


図11:分離の法則に関するまとめ

(7)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 巻き舌をさせたり、耳を動かしたりさせると、大いに盛り上がります。そして、髪や瞳の色など自分のいろいろな形質を1つずつ点検させていくと、遺伝ついて深い関心を持つだけでなく、自分の両親や親族とのつながりを強く意識するようになります。友だちと一緒に調べる楽しい時間を確保してあげてください。

関連ページ
ヒトの染色体と減数分裂3年(2004年)
観察8 減数分裂3年(2001年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

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