このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第41時
観察9 核、染色体、遺伝子

     2018 9 11(火)
     普通教室

はじめに
 本時の目標は、これまでに学習した核、染色体、遺伝子、DNAの違いを正確に説明できるようにすることです。授業前半で、いつもの細胞と細胞分裂中の細胞を比べます。ポイントは核の内部です。その動き、働き、名称を細かく点検していきます。授業後半は、ヒトの染色体を学びます。常染色体と性染色体の違い、男女を決定する性染色体の形、男女を決定する精子など、です。


図1: 左はいつもの細胞、右は細胞分裂中の細胞(A組)


本時の目標
・核、染色体、遺伝子、DNAについて理解する
・ヒトの染色体について理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)いつもの細胞と細胞分裂のときの細胞 (分〜分)
 核の変化を明確にするため、いつもの細胞と細胞分裂中の細胞を並べます。下図2を見てください。


図2: 左はいつもの細胞、右は細胞分裂のときの細胞(A組)

 いつもの核は、私たちの体そのものを作ったり新しくしたりするなど、活発に活動しています。その名称はDNA(デオキシリボ核酸)、あるいは、遺伝子です。DNAは体をつくるための設計図で、その設計図にしたがって細胞質にあるアミノ酸が配置され、タンパク質ができていきます。その工場は細胞質にたくさんあるリボソームという細胞内小器官です。なお、遺伝子は『ある特徴や働きをもつタンパク質をつくるための設計図(DNA)の単位』です。遺伝子は、本時の授業後半で学びます。お楽しみに!

 しかし、分裂中の細胞は違います。通常のはたらきを停止し、核内物質を二分するための構造体になります。それが染色体です。染色体は、細胞分裂のために作られる特別な構造物です。


図3:同上(B組)


図4:同上(C組)

(3)ヒトの染色体の内訳 (10分〜15分)
 ヒトは46本の染色体を持っています。そらは相同染色体(同じ大きさ・形の染色体、同じ対立遺伝子をもつ染色体どうし)も数えたものなので、染色体の対(セット)は23です。下図5を見てください。


図5:ヒトの染色体の内訳

 ヒトの46本の染色体は、長さ(大きさ)によって番号が付けられています。一番大きなものは1番、小さくなるにつれて番号が大きくなります。相同染色体どうしは同番なので、最後は23番です。ただし、23番は『男女の性別を決める性染色体』という決まりがあるので、23番の大きさは22番より大きくなっています。以上をまとめると、以下のようになります。

(1)ヒトの染色体は46本(23対)
(2)44本(22対)は常染色体
(3)2本(1対)は性染色体
(4)対の染色体は、同じ対立遺伝子をもつ

染色体の形
 染色体の形は、基本的に『X』の形をしています(図5)。女性の場合、すべての染色体は『X』です。常染色体44本、性染色体2本、合計46本すべてが『X』です。

 しかし、男性は違います。常染色体は同じですが、性染色体のうち1本が『Y』の形をしています。まるで一部分が欠けたような『Y』の形をしているのです。(図5の右上)。

 そこで、女性を『XX』男性を『XY』として表現することがあります。

 また、実際に活動しているものは相同染色体のうち、どちらか一方だけです。半分の23本は眠っています。それらは、生殖細胞をつくる時だけ活躍します。つまり、減数分裂の初期の段階において新しい『組み合わせ』、および、『遺伝子の組み替え』が行われます。これらの過程において、無限ともいえる新しい形質をもつ生殖細胞(卵、精子)がつくられます。

(4)染色体と遺伝子の関係 (10分)
 染色体は、細胞分裂のための特別な構造体です。ヒトは46本の染色体にまとめられます。その46本に、あなたの全ての遺伝情報があるのですから、1本の染色体に相当量の遺伝情報(遺伝子)があることになります。


図6:染色体と遺伝子の関係(A組での板書)


図7:染色体と遺伝子の関係(B組での板書)

(5)精子がたくさん入った受精卵 (10分)
 通常の受精では、1つの卵に進入できる精子は1つです。『卵の染色体23本』と『精子の染色体23本』が合体し、46本の受精卵ができるわけです。ところが、何らかの原因で1つの卵に複数の精子が進入し、通常より多い染色体になることがあります。図8はそれを示したものです。


図8:卵に進入しようとする精子(XとYの2種類がある)

一卵性双生児と二卵性双生児
 あなたの学校に双子はいるでしょうか。双子が生まれる方法は2つあり、1つは遺伝子が100%同じ一卵性双生児、もう1つは遺伝子が違う二卵性双生児です。前者は性別が同じで見た目も瓜二つですが、後者は男女が違うこともあります。


図9:一卵性双生児ができる過程
 二細胞期において、何らかの原因で細胞が2つになると、それぞれが正常な個体として発生します。そして、遺伝情報が全く同じ2つの赤ちゃんが誕生します。 しかし、四細胞期において4つの細胞に分かれたとても、発生が途中で止まるので赤ちゃんになることはありません。これはヒトが高等生物だからです。クラゲのように下等な生物においては、8つまで発生可能なものがあります。

(6)本時の感想、考察 (5分)


図10:本日の板書(A組、クリックすると拡大します)


授業を終えて
 双子ができる原因について興味深く話を聞く様子と見て、あー、みんな知らないのだなあ、と思いました。とても基本的なことですが、中学3年生になるまで、誰にも教えてもらわなかったことに驚きます。もっともっと、たくさんのこと、医学的なことも含めて教育しなければいけないな、とつくづく思いました。

note:生徒と先生の会話
「男女を決めるのは精子、ってことですか?」
「もちろんそうだけど、教えなければ知らないよね。覚えてください! 精子は一度の射精で2億ほど放出されます。したがって、男子は理論上、一度の射精で1億人の女子と1億人の男子をつくることができます
教室は・・・しーん

関連ページ
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実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

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