このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第54時
実験1 食塩と水は電流を流すか

     2018 10 16(火)、17(水)
     普通教室

はじめに
 今日からイオンの学習が始まります。1時間目は食塩と食塩水について、それらが電流を流すかどうか調べます。

 食塩、および、水は電流を流しませんが、食塩水は電流を流します。これはどうしでしょう! 授業では、私が演示実験をした後、子どもたちに自由な発想で説明させます。独創的な考えが飛び出すことを期待して、さっそく授業を始めたいと思います。

 なお、本年度のカリキュラムは私の著書『実践ビジュアル教科書中学理科の化学』の第6章に準じています。2011年度のカリキュラム(3年化学分野の導入(3年)2011年)もよくできていますので、中学校の先生は各校の実情に合わせて実践してください。


図1:演示実験のための装置


本時の目標
・食塩、水は電流を流さないことを確認する
・食塩水が電流を流す理由について考え、話し合う
・電気を帯びた原子をイオンという、ことを知る

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 食塩 (100g)
  • 銅板 (2 )
  • 300mLビーカー  (1)
  • 50cmリード線   (2組)
  • 羽根つきモーター (1)
  • 電源装置     (1)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)水、食塩が電流を流さないことを確かめる演示実験 (10分〜15分)
 まず、羽根つきモーター装置銅板リード線(+)・電源装置・(−)リード線・モーター・リード線銅板をつないだもの)を準備します。そして、銅板と銅板を接触させ、モーターが回ることを確認します。

(ア)水は電流をながさない
 次に、300mLビーカーに水を入れます。それにモーター装置の銅板を、どぼん、と入れます。 何人かの子どもは「回る」と予想しますが、結果は回りません。洗濯機で感電することがあるのは、水に洗剤が入っているからあり、純粋の水は電流を流さないことを紹介します。さらに、古くて毎日使わない(理科室の)水道水は電流を流すことがあります。それは、水道管内部に付着している鉄サビなどが含まれているからです。茶色の水道水が出てくるような理科室の水は、実験に適していません。また、雷のように高電圧(電子を押し出す力が大きい)場合は、電流が流れることがあります。しかし、家庭用100V程度では『水は電流を流さない』と教えてください。

(イ)食塩は電流をながさない
 300mLビーカーに食塩を100mL(100g程度)入れます。スーパーで売っている1kg100円の食塩が良いでしょう。袋から直接どぼどぼっと、大量に入れてください。調子に乗って、もっと入れても大丈夫です。それにモーター装置の銅板を、さくっ、と入れます。 何人かの子どもは「回る」と予想しますが、結果は回りません。

「食塩は電流を流すかどうか、調べます。(食塩をビーカー100mLのところまで入れ、その食塩を見せながら)食塩は電流を流すと思う人! ・・・えっ、5人しかいないの? 大丈夫。人数が少ないので、もっと食塩をいれよっかなー。(食塩をさらに追加して、300mLビーカーの半分以上して)これでも流さない、でも良いですか? もう一度聞きます。電流を流すと思う人! ・・・電流を流さないと思う人! ・・・では、銅板を入れますよ。電流が流れるなら、入れた瞬間に回ります。よく注目してください。では、入れます・・・さくっ!

(3)食塩水は電流を流すことを確かめる演示実験 (5分〜7分)
 (2)で食塩は電流を流さないことを確認しました。そのビーカーに水を追加し、モーターが回るかどうか、確かめます。

食塩水にして、モーターを回転させる手順
 『食塩入りビーカー & モーター装置』を持ち上げます。モーターの羽は、回転した時によく見えるように、最前列の子どもに持たせてください。水を入れた途端にモーターが回ります。

 「水を入れる前に、予想してもらいます。モーターは回らないと思う人! ・・・ 回ると思う人! ・・・そうですよね。これでモーターが回らないと、話が始まらないですからね。モーターは回るはずです。でも、先生がやる実験ですから失敗もあるし、どれぐらい回るかを見てください」

 「(水200mLを入れたビーカーを用意して)では、水を入れますよ。(全員が注目していることを感じてから)・・・ ジョボジョボジョ、ジョボジョボ、


図3:食塩、水、食塩水の結果

(4)食塩水が電流を流す理由を考える (15分〜20分)
 流さないもの(食塩)を流さないもの(水)に溶かしたら、流すもの(食塩水)になった。その理由について考え考えさせます。

 子どもたちから声が出ない場合は、食塩が溶解したことに着目させます。溶解とは何か、食塩はどうなったのか、透明になった食塩はどのような状態になっているのか。


図4:A組の生徒の考え

 A組で初めに発表された意見は『食塩は水に溶かすと、電流を流すという性質をもっているから』でした。これは答えではなく、問題そのものですが、あえて板書しました。板書することで、問題が明確になります。図4の2つめの意見『食塩は化合物だから』でした。化合物とは何か、さらに問いかけると、『2種類以上の原子からできている物質』という意見が出てきました。子どもたちは食塩は塩素とナトリウムの化合物であることを知っています。


図5:同上(その2)

 図5の(3)『原子の中の電子が移動したから』は、突発的な意見のように見えます。しかし、電子、という言葉は重要です。私は『原子の中の』は違うことを指摘し、『電子が移動すること』=『電流』、としてまとめました。

 (4)『溶かす前は固体で動かないけれど、溶かすと自由に動いて、電気を運ぶようになるから』は、ほぼ正解です。これは、3週間後に実験する『食塩水の電気分解』という反応です。

 (5)は面白い意見です。金属は電流を流します。(6)は天才的な意見です。水の中に穴があって、その穴を食塩が埋めるなんて素敵です。電流と関係ありませんが、この生徒は食塩が『無色透明』になることについて独自に考えたようです。

(7)は、私が紹介したまとめです。
 「食塩(塩化ナトリウム)を水に溶とかすと、ばらばらになります。ばらばらになるものは塩化ナトリウムですから、塩素とナトリウムになるしかありません。ここまでを式に書いてみましょう」

NaCl(水に溶かす)→ Na + Cl

 「そして、溶かしたものが電気を流す原因になっているのですから、NaとClが電気を帯びているのではないか、と考えることができます。水に溶けて電気を帯びた原子をイオンといい、これから約1ヶ月半、電気を帯びた原子=イオンについて学習します。Naはプラス、Clはマイナスの電気を帯び、それらをナトリウムイオン、塩化物イオンといいます」

NaCl(水に溶かす)→ Na+ + Cl-

B組での展開
 A組とはまったく違う展開です。初めの意見は『数学で(マイナス)かける(マイナス)は(プラス)になるように、(流れない×流れない=流れる)的な・・・』でした。下図6の通りです。


図6:Bの生徒の考え


図7:B君による説明

塩化ナトリウム = NaCl → Na+ + Cl-


図8:私によるまとめ


図9:C組の生徒による板書

 図9は、「大きな3つの食塩の粒が水に溶けて小さくなり、電気がびびびびぃー」という意見です。肝心のびびびびぃーが意味不明ですが、そんなことをしているうちに、考えがまとまっていくものです。大切にしましょう!

(5)次の時間の準備 (7分〜10分)
 次の時間は、自宅からいろいろな物質を持ってこさせます。食塩、砂糖、コショウ、唐辛子、小麦粉など、台所にある調味料や食材が良いでしょう。そして、それらを水に溶かし、電流が流れるかどうか調べます。電流が流れればイオン水イオンを含む水溶液、ということになります。持参するものは『固体』だけでなく、水溶液でも大丈夫です。ケチャップ、マヨネーズなどです。豆腐こんにゃくでも良いです。水分を含むもの=水溶液、と考えることもできるので、果物や野菜でも良いのですが、子どもたちの理解度に合わせて説明してください。

 「次の時間は、水に溶かすとイオンになる物質を探します。実は、水に溶かすとほぼ100%イオンになります。そもそも、水に溶けるということは透明になることであり、ばらばらになった小さな原子はプラスかマイナスの電気を帯びます。電気を帯びていないものの方が珍しく、中学で覚えなけれいけないイオンにならないものは、酒=アルコール(エタノール)、そして、砂糖の2つです。みなさんが家庭から持ってくるもの全ては電流を流すと思うので、それが本当かどうか確かめてみましょう」

 「これから班で話し合い、持ってくるものを決めてください。少なくとも10種類は調べたいですね。学校では何も準備しません。みなさんにお貸しするものは電源装置、モーター、リード線、銅板だけです。調べ終わったら授業終了です。しっかり、持ってきてください」

「まず、自分が持って来れそうなものをプリントに書きなさい。一通りかけたら、班で話し合います。では、口を閉じて自分で持って来れるものを書きなさい」

(6)本時の感想、考察 (5分)


図10:A組の板書


図11:B組の板書


授業を終えて
 奇想天外な意見、説明が出れば出るほど、面白いですね。それが公立中学校の醍醐味です!

関連ページ
3年化学分野の導入(化学電池)(3年)2011年
イオンのためのオリエンテーション
(3年)2001年

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学

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