Home 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)

第100時
演示実験 モンキーハンティング

     2019 2 22(金)、25(月)
     普通教室

はじめに
 理科室に眠っていた実験装置を取り出してきました。物理分野の力や運動を考えるための装置、モンキーハンティングです。

実験装置モンキーハンティングの構造


図1:モンキーハンティングの原理を説明するA君

  図1を見てください。A君は小さなボールを持っています。ボールはアルミ製の比較的軽い金属でできています。そのボールは白い円筒状の発射装置から、右へ飛ばされます。モンキー(猿)をハンティング(狩る)ためです。

 モンキーは、実験装置右端のセットしますが、図1には写っていません。モンキーはボールが発射されると同時に落下するようになっています。

 この実験装置は、木から落ちる猿を猟銃で狩ることを想定したものです。そのように考えるとゾッとしますが、力と運動について考える問題なので、我慢してください。
 

問題1:なぜ、ボールは猿に当たるのか?

 卒業前の生徒にとって、この問題はちょうど良いレベルの復習です。全員何となくわかる感じです。説明はできないけれど、理解はできるレベルです。

 考えるための材料は『実験6 自由落下する物体の速さの変化量』『実験13 だるま落とし(慣性の法則)』にありますので、A君の説明を聞く前に、みなさんも考えてください。ボールは猿を狙って発射します。それと同時に猿が落下します。空気抵抗は無視できるレベルです。


図2:発射されたボールは、落下しながら猿に向かって飛ぶ


図3:ボールと猿の落下速度は等しい


図4:ボールと猿は衝突する

 図2〜図4の模式図、下図5を見てください。


図5:モンキーハンティングの原理

 白球は、黄色いボールをめがけて発射されます。無重力状態なら、白球はまっすぐ飛んで当たります。この実験では重力がはたらいているので、白球は図5のように飛びます。すなわち、『発射された方向』にはずーっと同じ速度で飛び、『重力方向』には加速するように飛んでいきます。黄色いボールは白球と同時に落下させるので、落下距離は常に同じです。したがって、図5のようにして衝突します。

 

問題2:この装置を傾けた場合、2つのボールはどうなるか
 これは少し頭を使います。難しい問題なので、授業の現場では三択問題にしました。みなさんも考えてください。

授業での発問
  この装置を傾けて設置します。白球は斜め上に発射、黄色いボールは高い位置から落下させます。この場合、2つのボールはどうなるでしょうか。次の(A)〜(C)から1つ選び、記号で答えなさい。
(A)白球が黄色いボールの上を通過する
(B)衝突する
(C)白球が黄色いボールの下を通過する

 正解を教えても、その理由がわからなければ意味がありまん。みなんにも正解を教えますので、その理由を考えてください。正解は(B)です。


図6:問題2の模式図

考え方

ステップ1:重力、空気抵抗力がない場合
 モンキーに外力がはたらいていなければ、モンキーは動きません。したがって、発射された球はモンキーに向って等速直線運動を続け(慣性の法則)、モンキーに当たります(図7)。
  初期設定で変えてもよいことはは発射速度です。当たるまでの時間です。球を強く押し出せば速く飛んで早く当たり、弱く押し出せばゆっくり飛んで遅く当たります。ちなみに、飛んでいる球の速さは等速ですが、その球にはたらく外力はありません。ステップ1は、重力も空気抵抗もない場合だからです。


図1:ステップ1の解説図

ステップ2:重力がある場合
 地球の重力加速度9.8m/秒は、物体の大きさや形状とは無関係にはたらきます。厳密には物体の質量が大きければ大きくなるのですが、モンキーや球の質量は地球の質量に対して完全に無視できるほど小さいものです。したがって、モンキーと球を同時に落下させれば、落下距離は完全に一致します。球をモンキーを狙って発射した場合、球はどのような角度でも、モンキーと同じ距離だけ落下しながら進みます。球の速さ(当たるまでの時間)が違っても、両者の落下距離は完全に同じなので、必ず命中します。

ステップ3:重力と空気抵抗力がある場合
 空気抵抗力は、物体の大きさや形状によって変わります。したがって、この実験を行う場合、空気抵抗を無視できる範囲のものを使う必要があります。

関連ページ
実験6 自由落下する物体の速さの変化量
実験13 だるま落とし(慣性の法則)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

第99時 ←
実験 炎色反応

→ 第101時
最終アンケート
↑ TOP
[→home
(C) 2019 Fukuchi Takahiro