このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第7時
実験6 自由落下する物体の速さの変化量 

     2018 5 1(火)
     第3学習室  ※ 理科室を譲ったため

はじめに
 前時は、斜面を滑り落ちる台車が一定の割合で速くなっていく、階段状のグラフをつくりました。斜面の角度を変えて、2つ3つのグラフをつくる生徒もいました。斜度が大きくなるとグラフの傾きも大きくなりますが、その大きさには限界があります。今回の実験では、その最大の傾きにvなります。つまり、斜面の角度が90度になるので、それ以上の斜面ができないからです。今回の実験は斜面のない自由落下、という運動になります。

 地球における落下実験では、自由落下よりも大きく加速することはありません。物体を自由に落下させたとき、その速さの変化量には限界があるわけです。

 さてさて、これで本時の授業タイトル『自由落下する物体の速さの変化量』の意味を理解していただけたなら、今日の授業はほぼ成功、と言えるでしょう

 


上:乾電池の上に赤い紙を載せて落とす実験
(HP『実験1 自由落下運動(速さ)2004年度』から)

関連ページ
実験1 自由落下運動(速さ)2004年度
実験2 自由落下運動(距離)2004年度
ニュートンの運動の法則2004年度


本時の目標
・自由落下=斜度90度の斜面、最高の加速度となることを理解する
・物体の落下速度の変化は、質量に関係ないことを知る
・物体を自由落下させ、その速さの変化量をグラフにする
・0.1秒ごとの速さ、1/60秒ごとの速さの変化量の違いが6倍であることを、グラフ化を通して体感する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • はさみ
  • のり
  • 定規
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 記録タイマー(1 /班)
  • 記録テープ(70cm /人)
  • セロハンテープ(1 /班)
  • 古い単1乾電池(1 /班)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

  本ページ冒頭「はじめに」にある内容を、わかりやすく紹介します。

(2)空気抵抗がなければ、すべての物体は同じように落下する(5分)
  空気抵抗がなければ、すべての物体は同じように落下します。これを理解させるために、乾電池と紙片による簡単な演示実験を行います。実践方法は別ページ『実験1 自由落下運動(速さ)2004年度』の始めの部分をご覧ください。以下に、そのページにあるパラパラ動画を転載します。


上:丸めた紙と乾電池の自由落下運動(HP『実験1 自由落下運動(速さ)2004年度』から)
上の画像をクリックすると別ウィンドーで演示実験が始まります!

(3)自由落下運動とニュートンの紹介、確認 (5分〜10分)
  ニュートンのリンゴの話、力の単位『N(ニュートン)』の確認、地球の重力加速度(g=9.8m/秒/秒)の紹介、などを10分以内に完了します。以下は2クラスの板書ですが、生徒の反応によってまとめ方が若干違う様子がわかると思います。


上:A組における板書


上:B組における板書

(3)理想的な実験結果の紹介(5分)
 理想的な実験を行った場合、実験結果は全員同じになります。そのグラフの傾きは同じで、地球の重力によって決まります。この傾きから地球の重力加速度を求めることができますが、もちろん、今回の実験では不可能です。授業では、理想的な実験のデータを先に紹介し、それに近づける努力や工夫をするように指示しました。

 下図左にあるグラフは、理想的な実験をしたときの記録テープです。1本目(はじめの0.1秒間)は4.9cm、2本目(次の0.1秒間)は14.7cm、3本目(その次の0.1秒間)は24.5cmになります。生徒が学習プリントに貼ることができるのは、3本目までです。4本目は34.3cmとなり、長すぎて貼ることができません。また、長すぎるテープは摩擦が大きくなり、理想的なデータからどんどん離れていくので、3本目までできる最短のテープで実験することを教えます。


上:左から、理想的なグラフ、その計算式、データ処理方法

 なお、理想的な記録テープの長さを求めるための計算式は教えません。混乱を避けためです。実験後に、速さが大きくなる割合(速さの変化量、加速度)が同じであることを再確認するときに、9.8cm/秒(0.1秒毎に)ずつ大きくなることを軽く確認する程度にどどめます。

各テープの長さ(距離)= 2/1 g t t =1/2 × 9.8m/ss × 時間 × 時間

(4)実験上の諸注意(5分)
(5)生徒実験:自由落下運動 (10分〜20分)
 (4)と(5)は、14年前の実践記録『実験1 自由落下運動(速さ)2004年度』をご覧ください。

<実験上の注意>
・ 新しい乾電池に衝撃を与えると液漏れ・発熱などして危険
・ 記録タイマーを60Hzにセットする
・ 記録テープは、教師が70cm程度に切って渡す

上:HP『 実験1 自由落下運動(速さ)2004年度』から転載

先生用:理想的な記録テープを全生徒に作らせるテクニック
    (40人学級でも可能)

(1)実験前のポイント、指示
・落下させる物体の質量を100g程度確保する
・配布する記録テープの長さを70cmまでにする
・記録タイマーを垂直にセットさせる
・記録テープの先端をもち、真上からまっすぐであるか目視させる
・記録タイマーの音を聞いたら即、テープを離させる
 →(2人班の場合)1人がタイマー固定&スイッチ、もう1人がテープ
・できたテープを、先生まで持ってこさせる
・先生の合格がでたら、データ処理に移行させる

(2)全生徒のテープ点検方法
・初めの位置(打点)がない場合
 → 打点がないことを指摘して廃棄する
 → 「音を聞いてからテープを離す」ことを確認する
 → もう1本テープを与える
・初めの位置(打点)が複数あって不明瞭な場合
 → 0打点目が不明であることを指摘して廃棄する
 → 「
音を聞いてから離すまでの時間が長すぎること」を指摘する
 → 「テープを離すときは、ぱっ、と離すこと」を確認する
 → もう1本テープを与える
  実験誤差を減らすため前回より短くする)
  (不器用な生徒は3回以上失敗するが、それでも与える)
・理想的に加速してない場合(6打点目を点検する)
 → 理想的な距離は、6打点目4.9cm、12打点目19.6cm
 → 理想的に加速していないことを指摘して廃棄する
 → もう1本テープを与える
  (失敗を繰り返す生徒は、どんどん短くなる)
・理想的なテープができた場合
 → 合格とし、褒め称える
 → 0打点目(基準となる位置)を指摘する
   (必要に応じて、0打点目を先生が折り曲げる
 → テープを返却し、データ処理に移行させる

(3)何度も失敗を繰り返す生徒への指導
・「えー、できないの?」と煽る(やる気を出させる!)
・失敗したテープを見て、データができていない箇所を指摘する
・失敗する原因だけでなく、改善方法も再度説明する
 (ア)記録タイマーを垂直に固定する
 (イ)テープを2本の指でつまみ、鉛直にする
 (ウ)(ア)&(イ)でタイマーとテープが擦れていないか
 (エ)擦れているなら、記録タイマーの固定方法を改善する
(4)最後までできない生徒への指導
・その生徒の班へ足を運び、実験の様子を観察する
・失敗原因を見つけ、正しい操作を指導する
・良いデータができるまで見届ける

(6)データ処理 (10分〜20分)
 実験方法は14年前と同じですが、今回は2種類の方法でデータ処理を行いました。1回目の処理は6打点ごと(0.1秒ごと)に切りますが、2回目の処理は1打点ごと(1/60秒ごと)に切ります。同じ実験でも、処理方法、1区間ごとの時間を変えることで、違う傾きのグラフになることを実体験できます。

 この経験は生徒レベルではとても大きなことです。1回目の処理ではテープを3本しか添付できませんが、2回目の処理では18本も添付することになります。頭の中では、1/6倍の時間にしたことを理解できていても、実際に手を動かしてテープを切ったり貼ったりすることで、子どもたちに心身にも定着していきます。また、論理的に理解できない子どもでも、手を動かした作業をすることで、5感による感覚レベルから理解していくことがあります。このページを読まれた先生は、ぜひ、実践してみてください。ちょっと忙しくなるかもしれませんが、実験時間は短いのでトライしてください。授業時間内に添付できなかった生徒は、宿題にしても良いでしょう。


上:左は6打点ごと(0.1秒ごと)、右は1打点ごと(1/60秒ごと)のグラフ

上:2種類のデータ処理をした生徒の学習プリント(1)

上:2種類のデータ処理をした生徒の学習プリント(2)

(7)本時の感想、考察 (5分)
 理想的な実験&データ処理をした場合のグラフについて確認します。今回のポイントは以下の通り。
(ア)0.1秒ごとのグラフでは、速さは0.1秒ごとに9.8cm/秒ずつ大きくなっている
(イ)0.1秒ごとのグラフでは、各テープ内にある各点も直線になる

上左:0.1秒ごとのグラフに書かれた6本の直線

(ウ)1/60秒のグラフは、0.1秒の1つデータを6つにわけることになる
(エ)その結果、傾きは1/6になる

=== ◯ 本時の板書 ◯ ===


授業を終えて
 同じデータを2つの方法で処理させることは、子どもたちにとって新鮮な体験でした。6打点ごとの処理はすぐに終わってしまうのですが、1打点ごとは「めんどくさい!」とぼやきながらの処理になりました。実感できてよかったと思います。なお、実験は連続して2回行わせるよりも、はじめの処理(6打点ごと)が終わってから行わせる方が良いのですが、子どもたちが実験に慣れていないようなら、連続2回行わせてください。

関連ページ
実験1 自由落下運動(速さ)2004年度
実験2 自由落下運動(距離)2004年度
ニュートンの運動の法則2004年度

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第3章
ニュートンの運動の3法則
 自由落下運動 p.52
 斜面を滑り落ちる台車 p.58

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滑り落ちる台車2

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実習7 物体にはたらく
重力
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