このページはアクティブラーニングを斬る!Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスンです

2 私の能動的学習(アクティブラーンング)実践

4 班で実験をする

2015年10月2日(金)3限、第1理科室

 中学2年の物理実験の一コマ、『ジュール法則』を確かめる場面を紹介します。

小人数の班をつくる時のポイント

 この実験は単純ですが、同時進行の作業があるので、係分担をした方がスムーズです。必要な係は以下の4つです。
(1)水をかき混ぜる係
(2)時計係
(3)温度を読む係
(4)記録係

 さて、ポイントはリーダーとなる班長を作るないことです。全員の力を最大限に引き出し、全員に平等な発言権を与るためです。これは少人数だからこそできる技です。また、飛び抜けた力をもつ生徒がいる場合は、班長は自然発生的に決まります。

 全員が活発に学習している場合、より良い結果を得るために係を注意し合い、次のような声が飛び交います。

 「水のかき混ぜ方が速すぎる(遅すぎる)」
  「時計係、時間が過ぎているぞ!」
  「グラフの傾きから判断すると、混ぜ方をさらに修正した方が良い」

 私の実践では、上記のような声があちらこちらから聞こえます。

 ===

 また、係を全員に割り振ることができない実験の場合、係がない生徒=全体を見渡せる班長、としておきましょう。後付けです。うまく回っている班(集団)の場合、リーダー(班長)は見守っているだけになります。

1 実験のあらまし
 写真下のような装置を使って、30秒毎の水温変化を測定します。みなさんのご家庭にある電気ポットでもできるような実験です。


上:実験装置
(1)断熱効果の高い白い容器の中には、水100gが入っている
(2)容器中央にあるものは、100度C温度計
(3)女子が手にしているものは、水をかき混ぜる棒
(4)奥にあるのは、電源装置


上:白い容器の中にある電熱線2種類(写真左)
※ 同じ電圧をかけても、電熱線の種類を変えると、発熱量がかわる

準備するもの
  1. 実験器セット(白い容器、電熱線)
  2. 温度計
  3. 電源装置
  4. リード線2本
  5. 水100mL
※ 他年度の実践をご覧になりたい方は別ページ『実験16 電流による発熱(2003年度)』『実験6電流による発熱(2000年度)』をご覧ください。

2 グラフの書き方の説明
 測定結果は、記録係が記録しますが、できればグラフ用紙に直接『測定値』を打っていく方法が良いでしょう。なぜなら、測定値の誤差や実験中の間違いが一目で分かるからです。それによって、実験中に操作方法をより良いものにすることができるからです。下の写真(グラフ)を見てください。事前に、子どもたちにグラフの書き方を説明するための板書です。


上:グラフの書き方を説明するための板書
(1)横軸:変数=すなわち時間、30秒毎に測定する
(2)縦軸:測定値=水の上昇温度

 グラフ説明のポイントは、横軸と縦軸の意味を正確に理解させることです。横軸は時間、1目盛り30秒です。240秒(4分)で終わることから、1実験は4分完了になります。縦軸は水100gの上昇温度、1目盛り1度Cです。誤差はあまり気にしなくても良いですが、時計も温度計もできるだけ正確に読む方が良いです。測定係は温度計をしっかり見続けていないと、「あれあれっ」と言っている間に簡単に5秒が過ぎていきます。今回の実験は30秒毎に水温を測定し、その測定値をグラフに書くことからはじまります。

3 実験手順の説明
 実験手順の説明は、時間節約のため実験器具を操作しながら口頭で行います。一通り説明を終えたら、「実験始め!」と命じます。生徒たちの様子をみて、戸惑っていることがあれば、正しい指示をすかさずに出します。一通り様子が落ち着いたら、先ほど口頭で説明した内容を板書します。すでに子どもたちは準備ができている状態なので、細かい手順を板書する必要はありません。確実に抑えたい部分を中心に、端的にまとめます。写真下の右部分を見てください。


上:黒板右側に『手順』を追加したもの
(1)水の量は100gとする
※メスシリンダーの目盛りに合わせて、100gではなく100mlと記述した
(2)電熱線は3種類あった
(3)セット方法は省略
(4)温度計は目盛りの間隔が広い方が良い
(5)電源装置の電圧の値を決めるのはとても重要
例えば、5Vにセットする、と板書することで、生徒は迷わずに実験を始める


上:実験の様子(掲載許可取得中)


上:実験の様子(掲載許可取得中)


上:水温が上昇した水を捨て、新しいものに入れ替える(掲載許可取得中)


上:実験装置にある電熱線、ステンレス製の輪は水をかき混ぜるもの


上:時計を見る生徒、温度計を読む生徒


上:実験結果をグラフにしたもの
※ 説明は省略します(悪しからず)

実験の様子
 30秒毎の測定なので、ぼやぼやしている暇がありませんでした。1分毎にすることもできますが、これは私の作戦で、忙しくすることで子どもたちの活動量を増やすわけです。一般に、時間1/2にすれば、活動量は4倍になります。

 また、1実験4分完了なので、失敗のやり直しが簡単にできます。電熱線を変えたり、電源装置の電圧を変えたりするなど、いろいろな実験を班で話し合って決めることができます。

グループワークに関する考察
(1)とりあえずの係で、全員できるようにする
 班学習の利点は、係を決めることでより高度な学習ができるようにすることですが、やはり、最終的には生徒1人ひとりが自分の学習について責任をとらなければいけません。今回は4人班でしたが、それでもきちんと係がきまっていました。しかし、その係は「とりあえずの係」と考えるべきでしょう。実験中の交代もよくあることです。教え合いながら、みんなができるようにすることも重要な学習です。

(2)個人学習の延長線上にある
 班学習は、個人学習の延長線上にあると考えることもできます。なぜなら、 学校における学習の成果は、どのような形式をとっても最終的に子どもたち1人ひとりが責任をとることになるからです。子どもたちの人生は、最終的に子ども自身が責任を持つしかないからです。先生や大人に責任を押し付けて人生を終わるような考え方を教えることに、私は反対します。すべての責任は自分でとる、という姿勢を育てようとしています。それは、個人の自由を教えることでもあります。

(3)日本を1つのグループとして考える
 日本を1つのグループとして考えることもできます。実際、私たち人間社会はそれぞれの役割りを果たすことで、高度な社会生活を営むことに成功しています。しかし、グループ全体をまとめる班長が自分勝手だと、全体が混乱します。

  私の授業では、自分勝手な班長はすぐに後退です。友だちに交代だ! と言われてお終いです。実力がなければ、自分がはずかしいだけです。前に述べたように、最終的な責任はこども一人ひとりがとるわけなので、できない人に重要な係や班長を任せることは自分の首を絞めることになるからです。ここで、2016年現在の日本社会を見てみましょう。つい先日12月6日、最高位にあるAさんが主導する与党が「カジノ法案」を強行可決させました。独裁と言われるような身勝手な政治はこの他にも数多く、目を背けたくなるばかりです。今回、私がアクティブラーニングに特化してHPを記述しているのも、その弊害の延長線上にあります。

 私の授業ならAさんは即刻交代なのですが、いまだ自分のやっていることに気づかない現状から判断すると、教育においても責任者不在の混乱が続くことが予想されます。この責任、すなわち、被害を受けるのは日本国民全体です。彼らは責任を取ることをしないでしょう。するなら、ずっと昔に引責しなければなりません。

 したがって、教育現場では、私のような責任をとることが難しい立場にある教諭、もっとも弱い立場にある教諭たちががんばらなければ、もっと弱い立場の子どもたちがより大きな被害を受けます。私は1人の大人として、大人は無責任な人ばかりではないことを示すためにも、時間が許す限りこのHPをしっかり書いていきたいと思います。

2016年12月5日記す

 本ページの写真掲載許可を得ているうちに、文科省がアクティブラーニングという語を外す方向に動きはじめました。私と同じように地道な活動を続けている人たちの努力の勝利だと思います。ただし、私が所属する教育委員会はまだ使用する方向なので、もう少しし継続したいと思います。
2017年3月15日掲載

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