このページは、Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスンです。

第3章 理科の授業

5 私が授業計画するときの姿勢

 このページは、毎日の授業を計画するときの私の基本姿勢を紹介します。一般的な理科の授業スタイルについては別ページ『理科の実習を4つに分ける』をご覧ください。

1 毎回、本物の自然に触れさせる
 普通教室ではなく、理科室で本物の自然を調べます。

2 1時間に1実習
 1時間で1つの実習(観察、測定、観測、実験など)を行います。絶対に1時間で完了させます。内容が広範囲なら細かく裁断し、1時間で完了させます。生徒の理解度が低い場合は、全く同じ内容をもう1時間行えば良いだけのことです。2時間目は驚くほどスピーディーに進むと思いますが、それは生徒の理解が進んだ証拠です。同じだから無駄、ということはありません。

3 1人1実習
 実習は生徒が行うから、実習といいます。先生による演示は極力避けてください。理想は1人1実習、悪くても1班1実習です。これは、生物の観察スケッチを考えればすぐに理解できるでしょう。みんなで協力して、大きな紙にゾウリムシ1つだけを描こう! という指導は避けるべきです。

4 実習時間を最大に確保する
 実習時間を確保するために最善を尽します。授業で削れないのは、先生が目標を示すことです。時間が十分にあれば、目標を達成する方法を生徒が考えて準備して実習すれば良いのですが、50分しかありません。私は、思いきって『目標を達成するための方法』を正確に示します。やり方がわかれば、生徒はそれを行うだけです。生徒にやらせているだけ、と思われる方もいらっしゃいますが、生徒にとって初めのことです。初めのことを考えて準備してやりなさい、というのは学校教育にふさわしくありません。私は、生徒が自ら身体を動かす実習時間を確保し、1つでも多くの成功体験を積ませたいのです。このように目的を示し、同じ方法で確かめる授業を『検証実習』と名付けます。

5 生徒の視点からみた『失敗を重視する授業』
 どんなに正確に方法を教えてもらっても、生徒全員が成功するとは限りません。自然を相手にする理科は、とくにいろいろな困難が待ち受けています。生徒は失敗しますが、失敗するという体験を積ませることも非常に重要です。失敗の重要性については、私があらためて記す必要はないでしょう。私は成功体験を重視しますが、失敗した時こそ発見の大チャンス! と毎時間のように話します。また、物理や化学などでさまざまな量を測定する実習では、できる限り『定量実験』にします。実験には必ず誤差がありますが、誤差を少なくする工夫をさせたいのです。

6 予想や仮説は立てさせない
 化学や物理などで、ある実験方法や結果を示し、「どうなるか予想を立ててみよう」「どうすれば調べられるか考えてみよう」という指導は極力避けます。そもそも、自然事象を見せて生徒を驚かせることが嫌いです。別ページ『おもしろい授業をしよう』で紹介したように、生徒が望んでいることは『毎時間の授業がわかること』です。目標に向って実習することを望んでいます。目標を知り、ゴールに向って進むことです。その過程によって生徒は成長し、その結果によって生徒は次の学習意欲を膨らませるのです。頭で考えことでも、成功・失敗することでも、何かを覚えることでもありません。

7 実習の基本パターン
 本物の自然実習させるときの基本パターンは、以下の通りです。授業実践例は中学校理科の授業記録をご覧ください。
1 本時の目標
  (5分)
  • 以下のことを知らせる
    ・何(自然)を調べるのか
    ・どんな実習(観察、測定、観測、実験)か
    ・何が発見できるか
    ・どんな法則か
    ・どれほど感動的か
2 方法の説明
  (5分)
  • 以下のことを知らせる
    ・どのようにすると確かめられるのか
    ・どのようにすると面白いか
    ・成功のポイント
    ・失敗するための方法
    安全上の注意
3 生徒実習(準備、片付け)
  (30分)
4 結果の考察
  (10分)
  • 結果が意味するものを考える
  • データのばらつきの原因を考える
  • 実験誤差、失敗の原因を詳細に考察する
  • 時間がある場合は、生徒の発見や疑問を使って理解を深める
    (生徒の疑問が次の授業につながることが多い)

8 検証実験(実習)をお勧めします!
 繰り返しになりますが、検証実験にすれば、先生の説明を長々と聞いたり、頭を使った予想や仮説など立てる必要がなります。すぐに実験ができるので、実験に勢いが出ます。実験後に、成功の度合を確認したり失敗原因を追求したりする時間が生まれます。しかも、実験に失敗も成功もないので安心して取り組めます。逆に、どんなに正確なデータでも先生は「失敗を探そう」とするので実験に集中できます。

関連ページ
・ 検証実習で感動を追体験する
・ 定量実験で科学的思考力を養う

2007年、2012年5月21日(金環日食)

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