第１章 クロッキーの描き方（基礎）
ポーズを注文する方法
─モデルの特徴を最大に引き出すために─１ モデルを同じアーティストとして尊重する
クロッキー・モデルの特徴を最大に引き出すための方法は、モデルをあなたと同じアーティスト、表現者、クリエイターとして尊重することです。モデルを信頼し、自由にさせれば、見たことがないポーズやあなたの創作意欲を刺激するポーズを出してくれるでしょう。下手な注文を出すと、モデルはその範囲内で表現しようと努力し、結果としてあなた以下の表現に終始します。クロッキーは、作家とモデルが協力してつくる時空間です。関連ページ『』２ ポーズに専念できる環境をつくる
モデルがポーズに専念できる教室環境をつくりましょう。まず、温度、湿度、クーラーの風など空気に関することは裸のモデルに合わせ、最善を尽して下さい。暑さ寒さに対する強さは、モデルによって違うので、丁寧な態度で聞くことが大切です。休息時間には必ず、再確認して下さい。次に、扉が開いている、ブラインドやカーテンにすき間がある、など外から見られる可能性を完全に排除して下さい。裸を誰に見られようが平気、という人はいません。関連ページ『モデルに起こる問題、トラブル』３ モデルのモチベーションを高める
２のようにして物理的な環境が整ったら、モデルの気持ちを高める声かけをましょう。経験が浅いモデルや初めて描くモデルは、事前の打ち合わせで長所を見つけ、それを表現して欲しいと頼みます。いくつかの具体的なポーズを提案するのも悪くありません。クロッキーの休息時間には、その長所を誉めます。欠点は何も言う必要はありません。まず、伸ばせば光るものを限界まで伸ばしましょう。そもそも欠点はどこにもありませんので、この点については別ページ『』を参照して下さい。「とても綺麗なポーズでした。とくに、肩から腰にかけてラインは、まるでビーナス！」「モデルさんは寝ていただけのように感じたかも知れませんが、描き手から見ると、つま先の頭のてっぺんまで流れるような美しさでした」「片足を上げて大変だったと思いますが、とても可愛いポーズでしたよ」、などです。ただし、嘘は厳禁。すぐに見破られてしまいます。どんなに小さな長所でも見つけられるようになれば、あなたは近い将来、小さなことを輝かせるクロッキーを描けるようになるでしょう。１で述べたように、クロッキーはモデルと作家の共同作業です。
４ それでもポーズが単調になったら
それでもポーズが単調になったら、大きくギアチェンジしましょう。小さな変更へでは面白くありません。例えば、『床での』立ち・座り・寝ポーズから、『椅子を使った』立ち・座り・寝ポーズ、『棒や紐などの小道具』を使ったポーズです。この他、ポーズの作り方は、美術モデルのためのページに詳しく記述してあるので参考にして下さい。
・ 躍動感あるポーズのつくり方
・ 自然なポーズを輝かせる
・ 芝居を演じる
・ クロッキー・ポーズを研究する
・ 固定とクロッキー、ポーズの本質的な違い
５ 限界への挑戦
あなたが物理的、精神的に完璧な環境を整えたとき、モデルは自分の可能性に挑戦します。限界まで身体を伸ばした曲げたり捻ったり、大きく負担のかかるポーズをとります。無理をしすぎて筋肉の震えが止まらなくなった時は、頃合を見計らって「時間まで持ちますか？」と聞きましょう。ダメなようなら、描き手のことも考えて「では、あと10秒にします」と言い、時間になったら「ありがとうございました」と言って労をねぎらいます。そして、再び限界に挑戦しても良いことを告げます。2010年2月14日公開