クロッキー F 美術館

第6章 美術モデルのためのお話
より良いモデルを目ざして

1 作家を見る、仕事場を選ぶ
 一流モデルは、お金をもらう立場であっても作家を選びます。一流モデルは自分を持っているから、自分らしさを表現できるから、自分の表現を感じとれる作家を見抜くことができます。なんとなく描いている人のモデルを続けていれば、いつしか同じようなレベルになります。自分で仕事場を選ぶ立場になるのは大変ですが、努力を続けていれば大丈夫です。同じように努力している作家と自然に出会うものです。心配無用です。

2 心技体のバランスをとる
 自分らしさを表現するためには、心技体がバランス良く揃っていることが必要です。心技体は、文字どおり「心(精神)」と「技術」「体(身体)」です。これは美術モデルに限らず、すべての活動において共通することですが、「元気がない」「何だかおかしい」と感じたら、3つのどれが欠けているのか調べてみましょう。冷静に分析し、弱っている部分を改善するようにしましょう。どれか1つが異常に高くなっていても同じように失敗することもお忘れなく。心だけが高ぶったり、作家の場合なら描画技術に溺れてしまったり、です。

3 心、高い集中力があること
 心技体のうち、心がもっとも重要です。呼吸を整え、血液の流れを感じ、精神を統一させましょう。そして、自分の肉体を離れ、客観的にポーズをしている自分を感じましょう。さらに、自分を客観視している精神的な自分と、肉体を持った自分を同時に見れるようになったとき、私は完成された状態になると感じています。これについては、作家のために書かれたページ『hiro.F の手法2008年』も参考にして下さい。

4 技、高いボージング技術を持っていること
 全てのスポーツに技術が必要なのと同じように、美術モデルにも専門の技術が必要です。別ページ『クロッキー・ポーズの基本』『躍動感あるポーズのつくり方』『自然なポーズを輝かせる』『芝居を演じる』『クロッキー・ポーズを研究する』『固定とクロッキー、ポーズの本質的な違い』を用意したので、順番に勉強して下さい。がんばれ!

5 体、身体的特徴を活かしていること
 あなたが持って生まれた身体の特徴を最大限に活かしたとき、そのポーズは輝きます。 身長の低い人が背伸びをしても始まりませんし、逆に、背の高い人が小さくなっても滑稽なポーズになってしまいます。人にはそれぞれ持って生まれたものがありますから、それを最大限に活かすことが大切です。これについては、別ページ『身体の特徴を活かしたポーズ』をご覧下さい。

6 心身と技の両輪、として考える
 で述べた心技体は、心と体をまとめた「心身」と「技」のバランス、として考えることもできます。まず、「健全なる精神には健全なる肉体が宿る」という格言にならい、心と体を同時に成立するもの(心身)として考えます。体は同じでも、心(精神)を鍛えれば体(身体、肉体)が輝く、と考えるのです。その一方、モデルとしての「技」を独立したものとして考え、「心身」と「技」を両輪とする車を考えるようにします。そのバランスがとれているとき、それぞれが小さくても、美しく輝きながら走ります。

7 モデルとしての創造性をもつ
 一流モデルは作家と同じアーティストです。クロッキーは、モデルと作家がつくる時空間そのものなので、どちから一方が頑張ってもロクな作品はできません。私は若い頃、カルチャーセンターでたくさん描きましたが、どんなに努力しても失敗した原因が今なら解ります。作家はより良いモデルを探し求めています。

8 努力を楽しむこと
 一流と言われる人に才能があるとしたら、それは、努力する才能、努力を楽しむ才能、自分の努力を努力と思わない才能でしょう。月並みなことですが、人はみな持って生まれたものが違います。恵まれている人もそうでない人もいますが、見方を変えれば、何が恵まれているのか一概には言えません。ただ1つはっきりしていることは、一流になる人はそれに似合うだけの努力をしているということです。

2010年2月3日公開

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