このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第75時
観察3 火山噴出物

     2013 1 29(火)、30(水)、31(木)
     理科室

はじめに     → カリキュラムについて(中学の先生は必読!)
 火山噴出物は、火山から吹き出したものです。吹き出したものはマグマ、どろどろに溶けた岩石です。火山噴出物は、マグマの種類や冷え固まり方にによって、表1のように『火山ガス・溶岩・砕せつ物』の3つに分類できます。ただし、授業では分類よりも『マグマ』そのものをイメージさせることに重点をおきます。硫黄を加熱して火山らしい臭いを充満させてから、溶岩を中心に観察・スケッチさせます。

 今日は、初めて岩石を観察するので、スケッチのポイントをしっかり押さえます。ポイントを明確にすることで、観察の楽しみが膨らみ、何時間も続けて岩石をスケッチできるようになります。実際、生徒は時間を惜しんで実習を続けます。その真剣な様子をみなさんにも見て欲しいなあ。

表1 火山噴出物の分類
火山ガス ・火山から吹き出した気体成分
(水、二酸化炭素、二酸化硫黄など)
溶 岩 ・マグマそのものが固まったもの
火山砕せつ物 (1)浮石、軽石
 ・火山ガスが抜け出たときにできた『無数の穴』が特徴
 ・色によってパスミ、スコリア(黒い鉄分を含む)などに分類する
(2)火山弾
 ・空気中で固まったマグマ
 ・表面張力がはたらくいて『丸みを帯びている』
 ・急冷により『ひび割れがある』
(3)火山岩塊、火山礫、火山灰
 ・礫(直径2mm〜64mm)を基準にして3つに分類する
 ・砕せつぶつを分類するときの基準は砂()
 ・ペレーの毛、ペレーの涙(ハワイの火山には女神『ペレー』が宿る)

他年度の実践
観察10 マグマの成分と火山噴出物 1年(2002年)
観察2 火山噴出物 3年(2001年)


上:ルーペを使って火山礫を観察、スケッチする生徒


本時の目標
 問

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 色鉛筆
  • 本日の学習プリント(1/人)
  • ルーペ      (1/人)
  • 火山噴出物標本  (1〜2/班)

授業の流れ
(0) 始業前:火山噴出物標本の準備 (1分)
 
理科室に入ってきた生徒は、いつものように教師用実験台にある本日の学習プリントを1枚ずつ取っていきます。それと同時に、理科室横に準備しておいた『火山噴出物標本』を班に1箱ずつ運ぶように指示しました。1クラス9班ですが、標本箱は15程度あるので、希望する班は2箱持参させました。同じ産地のものでも、箱によって形状が違うからです。溶岩、と名前がついていても、まったく違うもののように見えるものがあります。子ども達は、違うように見える岩石から共通点に見つけることに歓びを感じるわけです。典型的なもの1つを観察するも大切ですが、多様性を見るチャンスがあるなら積極的に活かしたいものです。


上:左から自然硫黄、火山礫、火山灰、溶岩、浮石

(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)
(2) 火山噴出物とは何か  (9分)
 火山噴出物の標本箱を開け、自由に観察させます。そして、どのような名前がついているか確認します。本校の標本箱は(1)溶岩、(2)軽石、(3)火山灰、(4)火山礫、(5)硫黄の5種類です。その他、教科書にある火山噴出物として、(6)火山弾、(7)火山ガスを黒板にまとめました。


上:A組の板書

火山噴出物をまとめるポイント
1 
火山噴出物に、火山ガスが含まれる
 ガスは気体なので、標本箱に入っていない
 水、二酸化炭素、二酸化硫黄の化学式を紹介すると、喜ぶ生徒が多い
 1〜3より、火山噴出物は『マグマがもとになったもの』になる
 マグマを直接イメージできるものとして、溶岩を紹介する
 マグマからたくさんガスが抜け出たものとして、軽石を紹介する
 自宅の風呂に、軽石があるか質問すると良い
 火山灰は細かいもの、火山礫は大きなもの、で良い
 火山弾は『マグマが空気中で固まったもの』、として紹介する
10 硫黄は、次の(3)で演示実験する

(3) 演示実験:硫黄の状態変化  (7分)
 「標本箱にある硫黄を加熱しても同じですが、それでは標本がダメになってしまうので、準備室にある粉末の硫黄を使います。(試薬瓶の硫黄を薬包紙にとり、それを試験管に入れながら)色を見てください。みなさんの手元にある標本と同じですね。白っぽい黄色です。これを加熱するとどうなるか、実験してみましょう。(ガスバーナーに火をつけて、全員に見える位置に持ち上げて ←ただし、この方法は危険なので真似しないでください! 責任は一切とれません!


上:硫黄を加熱する私(危険! 真似しないでください)

 ほら、すぐに色が変わってきたのがわかりますか? 濃い黄色になってきました。さらに加熱すると、固体の硫黄は、何体? になりますか? ・・・そうですね。液体、になります。しかし、硫黄は特異な、変わった性質を持っていて、固体から液体になる途中で、固まったような、あるいは、ゴムのような状態になります。(試験管を傾けて、)ほら、こぼれないでしょ。さらに加熱すると、200度Cぐらいで黒いゴムのようになります。・・・(しばらく加熱して) ほら、だんだん黒くなってきたでしょ。これも逆さにしてもこぼれません。さっきとはまた違う、ゴムのような状態です。

 この液体のような硫黄は、さらに加熱すると、何体? になりますか? ・・・そうですね。気体になります。では、硫黄が気化する温度、沸点を知っている人はいますか? ・・・これは知っていないと無理なので紹介します。硫黄の沸点は445度Cです。今は200度Cぐらいなので、もう少しがんばります。

表2 硫黄の融点と沸点

融 点 ・斜方硫黄 (融点 112.8度C) は、95.6 度Cで 単斜硫黄 (融点 119.0 度C) に 固相転移する。さらに過熱し200度C付近になると黒変し「ゴム状硫黄」になる。
沸 点 ・445度C

 (スバーナーの炎の温度の高いところに硫黄を当て、しばらく黙って観察し) ほら、沸騰してきたことがわかりますか? ・・・(近くで見ている生徒が、本当だ! と口々にいう) ・・・遠くの人はわからないかも知れませんが、ぐつぐついっています。見えない人は、煮え立っている硫黄のすぐ上の部分の試験管を見てください。何もないことがわかりますか? なぜ、何もなくなってしまったかのように見える理由がわかる人はいますか? ・・・A君! 大正解です。この部分の温度は445度C以上、気体の硫黄が充満しています。気体は見えなおから見えないのです。他の部分が見えているのに見えない、ということは『見えない』ということの発見です。(わからない生徒のために、バスバーナーの口で試験管が透明になっている部分を示しながら、← これも危険なので真似しないでください! 責任は一切とれません!)ここです!

 その上は、試験管が黄色くなっていますが、これは、目に見えない気体が目に見える状態に変化したからです。つまり、冷えて、固体の硫黄になったわけですね。もっと良く見ると、・・・ おや! 試験管の中で、冷えて固体に戻った硫黄が渦まいていることがわかりますか。・・・(近くで見ている生徒が、おおお、と低い声を出す)

 次に、試験管の中の硫黄をこぼしてみます。これなら、教室の一番遠くにいる人でもわかります。こぼしますよ! これは硫黄ですが、火山の噴火、マグマが空気中で冷えて固体に戻る様子をイメージしてください。火山のような臭さも楽しんでください。加熱した硫黄は、空気中の酸素と化合して、二酸化硫黄になります。二酸化硫黄は目に見えない気体ですが、これも火山噴出物でしたね。


上:加熱した硫黄を紙上にこぼす私(危険! 真似しないでください)

 (片手に紙を持ち、真上に挙げた試験管を逆さにしてこぼした硫黄を受けながら ← 危険なので真似しないでください! 責任は一切とれません!)・・・(生徒全員が、どよめく)・・・ 目に見えない硫黄と酸素が化合するイメージが十分につかめますか! 臭いですか! ・・臭い人は大変よろしい! 硫黄はよく反応する物質で、いろいろな物質と化合しますが、今日は特別な有毒物質や有害物質はできないので安心してください。臭いけれど大丈夫です。気分悪くなるような気がしますが、基本的に大丈夫です。 

 空気中で冷えて固体になった硫黄が渦巻いている様子は見えますね。・・・(硫黄をこぼれるだけこぼして、紙をみんなに見せながら) 硫黄をこぼした紙を見ると、変な色をしていますが、やがて初めの色に戻ります。もちろん、空気中で何かと反応したり、紙の上で何かと反応したものは戻りません。それから、試験管も見てください。赤のような黒のようないろいろな色がありますが、これも温度が下がると初めの色に戻ります。」


上:まだ温かい加熱後の試験管、硫黄をこぼした紙


上:マグマに含まれる硫黄について話をする私
 私が写っている写真3枚は、静岡県公立中学校の理科教諭 八木先生に撮影して頂いたものです。遠方よりお越し頂いたので、前時『
実習2 地球の内部構造』に演示したものです。

(4) 火山噴出物の観察・スケッチ  (30分)
 ここから、生徒の観察・スケッチ実習です。時間をできるだけたくさんとるようにしましょう。30分以上でも、飽きずに観察スケッチを続けることでしょう。ポイントは、スケッチのポイントを少しずつ追加すること、途中でルーペを配付することです。いきなり与えるのではなく、少しずつ新しい視点を与えることが大切です。

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上2枚:2クラスの板書

観察・スケッチのポイントを指導するポイント
 大きく書くことが1番大切
 はっきり書くことも大切
 岩石の輪郭は、ハンマーで叩き割ると変わるので書かなくてよい
 岩石の特徴をみつける
 岩石の粒(色や形)、組織を調べる
 一部部分だけをスケッチすればよい
 拡大図を書くと良い
 言葉で説明してもよい
 気づいたことや疑問を書くとよい

10 標本名、および、産地を記入させる
 「A君の髪の毛を観察してみましょう。A君のてっぺんにある毛と、もみあげの毛はよく観察すると違います。つまり、A君の髪の毛と書くだけでは不十分です。もみあげの毛、と書けば、より正確なよい観察をしたことになります。岩石も同じなので、どこで採取したものか記録してください。標本箱に産地が書いてあるはずです。」

(5) 軽石が水に浮くか調べる実験  (3分)
 ビーカに水を入れ、軽石をそっと入れます。産地によって浮いたり沈んだりします。同じ軽石でも、いろいろな種類があることに気づかせます。


上:水に入れた軽石


授業を終えて
 火山噴出物は、初めの岩石観察になります。これは変化に富んだ標本なので、生徒は楽しそうに実習します。たくさんの時間を確保するようにしてください。2時間かけても良い授業です。

関連ページ
観察10 マグマの成分と火山噴出物 1年(2002年)
観察2 火山噴出物 3年(2001年)
実験1 鉄と硫黄の化合(硫化)(2年)2003年

実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学
 第章 地 球   火山噴出物の観察   p.70、p71 
 硫黄を火山のように加熱した時の様子   p.73 
 火山噴出物のまとめ   p.73 

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実習2 地球の内部構造

→ 第76時
観察4 マグマで決まる火山3種類

中学校理科の授業記録1年(2012年度)

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