このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第77-2時
観察5' 偏光顕微鏡

     2013 2 7(木)、8(金)
     理科室

はじめに
 前時は肉眼とルーペを使いましたが、本時は偏光顕微鏡で火成岩を観察します。岩石プレパラートの偏光顕微鏡観察は大変美しいので、生徒にとって思い出に残る1時間になるのでしょう。先生は、別ページ『偏光顕微鏡の使い方(2002年)』を参考にして、石英、長石、黒雲母の区別ができるようにしておきましょう。簡単ではありませんが、全く知らなようでは楽しみがゼロです。なお、偏光顕微鏡による鉱物の識別は、学習目標として設定してはいけません。強く警告しておきます。


本時の目標
 肉眼で、石英、長石、黒雲母を識別する
 偏光顕微鏡で、いろいろな火成岩のプレパラートを楽しむ
 火成岩の種類によって、鉱物の種類や組織が違うことを確かめる

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 色鉛筆
  • 黒雲母花崗岩プレパラート (1/人)
  • 安山岩プレパラート (1/人)
  • 簡易偏光顕微鏡 (1/人)
  • いろいろな火成岩のプレパラート
  • 大きな石英、長石、黒雲母

授業の流れ
(0) 始業前の準備
 理科室に移動してきた生徒から順に、以下のものを準備させます。
  • 黒雲母花崗岩プレパラート (1/人)
  • 安山岩プレパラート    (1/人)
  • 簡易偏光顕微鏡      (1/人)
  • 火成岩標本セット     (1/班)
  • 大きな石英、長石、黒雲母 (1/班)
    (写真右)
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(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)
 本時の学習プリントはありません。前時のプリントに観察、スケッチします。観察、スケッチするものは、6つの岩石プレパラートです。

(2) 大きな石英、長石、黒雲母の紹介  (3分)
 本校の理科準備室には、とても大きな石英、長石、黒雲母の標本が多数あったので、それを各班で観察させました。黒雲母はすぐにすぐにわかりますが、ほとんどの班が石英と長石を区別できたので驚きました。さすがです。その巨大な標本を3つ持ち上げ、「これらが組み合わさったものが花崗岩です」と説明すると、生徒達は「なるほど」と納得顔でした。「今日は、肉眼ではなく、顕微鏡で観察します。その模式図を先に紹介すると、・・・(後略)」


上:花崗岩の模式図を示した板書

(3) 偏光顕微鏡の使い方と花崗岩の紹介  (11分)
 偏光顕微鏡は、新旧いろいろなものを合わせて生徒1人に1台ずつあります。岩石プレパラートは高価ですが、本校にはいろいろなものを合わせて150枚ほどあります。昔、岩石が好きな先生がいらっしゃったからでしょう。この幸運を大切に学習することにします。

 「みなさんの手元にあるものを確認しましょう。黒雲母花崗岩のプレパラート1枚、安山岩のプレパラート1枚、それに、偏光顕微鏡1台です。偏光顕微鏡はいくつかの種類がありますが、(3種類の実物を見せながら)いずれも、プレパラートを挟んで、くるくる回すものがあって、岩石の色を変えながら見るものです。そろっているでしょうか。そろっていない人は、静かに取りに来てください。」

 「初めの紹介しておきますと、岩石はプレパラートは1枚2000円です。安いものでも1500円、高いものは3000円以上するので大切にしてください。何故、そんなに高いかというと、手作りで1枚ずつ作っているからです。まず、岩石を適当な大きさに切って、スライドガラスの上に張り付けます。まず、その時点で大変なことがわかるでしょうか。岩石を適当な大きさに切って、完全な平面に磨いてスライドガラスにのり付けするのです。そして、それを少しずつ削っていき、厚さ0.02mm〜0.03mmにします。これは機械で削りますが、油断すると一瞬のうちに岩石が消えてなくなる薄さです。それに、カバーガラスをかけて完成! という工程なので、1枚のお値段が2000円になるわけです。」

 「では、さっそく観察してみましょう。黒雲母花崗岩のプレパラートをはさんで、見てください。ものすごくきれいなので、思わず「わぁ〜!」という声が出ます。出ない人は、きちんと見えていない人です。・・・(しばらくすると、教室のあちらこちから歓声が聞こえてくる)・・・さて、この顕微鏡の特徴は、ぐるぐる回すものがついている点です。それを回してみてください。色が思いっきり変わりませんか! ・・・(しばらくすると、新たな歓声が聞こえてくる)・・・ まだ面白くない人は、友達に一目、見せてもらってください。また、ピントが合っていない人は手を挙げてください。先生が調節します。」

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上2枚:偏光顕微鏡でプレパラートを観察する生徒

 「まだ美しくない人はいますか? その人は、ハズレの偏光顕微鏡かハズレのプレパラートを使っています。他のものと交換してください。また、美しく見えている人は、プレパラートを少し移動させてみましょう。先ほどとは違う部分が見えます。」


左下が「長石」、右上が「石英」


左のプレパラートをクロスで観察したもの

上2枚:黒雲母花崗岩の顕微鏡写真(別ページ黒雲母花崗岩(偏光顕微鏡写真)から)

 「黒雲母は黒ではなく、茶色、黄色、あるいは、輝く緑色のように見えます。石英は、のっぺりした感じの白から真っ黒になる部分です。長石はストライプ、筋が入っていれば、それが長石です。全体に汚い感じがするものの長石です。」

 「これをスケッチすると、(板書しながら)こんな感じになります。」


上:A君の花崗岩のスケッチ


上:(2)花崗岩に石英、長石、黒雲母をスケッチしたB君の学習プリント

 このプリントは前時に配付したもので、鉱物6種類と火成岩の組織(斑状組織と等粒状組織)は学習済みです。本日は、6つの空欄(1)硫紋岩、(2)花崗岩、(3)安山岩、(4)閃緑岩、(5)玄武岩、(6)ハンレイ岩にスケッチします。ただし、(4)閃緑岩の模式図も書いてあるので、閃緑岩はその隣にスケッチさせます。

(4) 鉱物の結晶模型の紹介  (5分)
 偏光顕微鏡を使うといろいろな色になる理由を簡単に説明しました。13才の子どもに正確な説明はできないので、鉱物の結晶模型を見せ、次のように話をしました。


上:鉱物の結晶の模型(クリックすると模型の一覧表

偏光顕微鏡の仕組みと使い方の説明例
 「みなさんが使っている顕微鏡は、偏光顕微鏡といいます。(黒板に、偏光顕微鏡と書いて)偏光とは、偏った光、という意味で、ある方向からだけの光りということです。偏光顕微鏡についている、ぐるぐる回すと色がかわるものには、偏光板というものがついていて、それで光の向き変えるわけです。正しくは変えるのではなく、1つの方向からだけの光に絞り込むわけです。

 さて、次に鉱物の結晶模型を紹介しましょう。(写真上の模型を見せながら)ここには15個の模型があります。(1番を見せながら)これはサイコロの形をしてます。正六面体。食塩の他に、ホタル石や黄鉄鉱という鉱物も同じ正六面体の結晶です。次に、(12番を見せながら)これは六角形の柱のようになっているので六角柱といいますが、何の結晶かわかりますか? ・・・ そうですね。水晶です。この他に、(適当なものをいくつか見せながら)・・・(中略)・・・このように、鉱物によって結晶の形が違うわけです。

 これらの結晶は、実際の岩石の中では立体的に配置されています。(何か1つの結晶を手に取り、それろいろいろな角度にして見せながら)こんな感じで、いろいろな角度になって埋まっているので、いろいろな色になるわけです。偏光顕微鏡で光の方向を決めて観察すると、いろいろな角度になっている鉱物が何か、それと詳しく識別することができるわけです。」

(5) 偏光顕微鏡によるいろいろな火成岩プレパラートの観察、スケッチ  (30分)
 (3)で花崗岩の観察、スケッチを具体的に指導したら、次に、安山岩を観察するように指示します。2つのプレパラートができたら、その他の岩石を観察させますが、その他は数が少ないので、生徒の自由裁量に任せました。


オープンで観察した角閃石


左のプレパラートをクロスで観察したもの

上2枚:安山岩の顕微鏡写真(別ページ黒雲母花崗岩(偏光顕微鏡写真)から)


上:岩石プレパラートを交換する生徒


上:ハンレイ岩を観察、スケッチする生徒(机上には黒雲母花崗岩のプレパラート)


上:いろいろな方法で観察する生徒
 ※左の生徒は光学顕微鏡を使っています。鉱物は、偏光顕微鏡でなくても識別できるものがあります。例えば、黒雲母花崗岩の黒雲母と石英と長石は、ほぼ識別できます。区別する方法を知りたい生徒に対しては、個別に指導しますが、その条件は、生徒がきちんとピントを合わせていることです。先生は、生徒がピント合わせたプレパラートを見て、そのプレパラートで見えているもの1つひとつについて、具体的に何が何であるかを教えます。

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上3枚:真剣に観察する生徒達(一部掲載許可取得中)

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上2枚:生徒2人の学習プリント

(5) 後片付け、考察  (5分)


授業を終えて
 大多数の生徒にとって、大変楽しい授業になったと思います。ただし、各クラス数人ずつ、スケッチに飽きてきた生徒が出てきました。そこ子達をどのように助けていくかが問題ですが、ま、同じようなことをしていれば誰でも飽きてしまいますので、次時は実物添付をしてもらいましょう。盛りかえすことができると思います。お楽しみに!

 それから、ちょっと驚いたことは、鉱物の結晶模型を個人的に見に来る生徒が多数いたことです。「凄い!」といって手に取る様子を見て、素晴らしい子ども達だと思いました。小さな木製模型は、中学生達に興味深く見てもらって満足していることでしょう。

関連ページ
偏光顕微鏡の使い方 1年(2002年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学
 第章 地 球   偏光顕微鏡で見る火成岩   p.80、p.81 

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中学校理科の授業記録1年(2012年度)

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