このページは中学校1年理科『地学』/takaの授業記録2002です

理科の先生のための
偏光顕微鏡の使い方

<はじめに>
 偏光顕微鏡については以前から興味はあったものの、くるくる回して「綺麗だなあ」と思うだけで、「石英」も「長石」も分かりませんでした。授業で鉱物を教えるチャンスがくるたびに予習するのですが、いつも進歩のないまま終わってしまうことのくり返しでした。今回、意を決して本格的に勉強を始めたのですが延べ20時間を超えても進歩のない自分に見切りをつけ、直接、専門の先生の教えを頂きました。そして、ちょっとだけ知識のある理科の先生を対象に、偏光顕微鏡の使い方をまとめてみました。以下の<原理と使い方>にしたがって偏光顕微鏡を触りながら勉強すれば、2〜5時間で6つの鉱物を識別できるようになると思います。あなたが、まったくの素人なら、そうですねえ、やっぱり5時間ぐらい格闘したのち専門の先生に教えてもらって下さい。ただの理科の先生ではダメです。そして、再びこの<原理と使い方>にしたがって勉強すれば攻略できるでしょう。頑張って下さい。ただ単に美しいだけだった鉱物の世界が、厳しさを優しさを持った大自然としてあたなに微笑むことでしょう。

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<目 次>
1 偏光顕微鏡の原理と使い方
(このページにリンク)
2 花崗岩の顕微鏡写真
(別ページへ)
石英・長石・黒雲母の見分け方について
3 角閃石の写真
(別)
4 輝石の写真
(別)
5 かんらん石の写真
(別)
6 流紋岩の写真
(別)


<原理と使い方>
1 偏光顕微鏡には、2枚の偏光板がついている。

2 ステージ下の偏光板は回転するので、その位置を「基準」に合わせる。
(これを回転させると劇的に色が変わるので面白いが、「基準」に固定したまま動かさないこと。授業の最後に「これを回転させると、こんなに色が変わるよー。」とクルクル回せば生徒達は大喜びするので、それでお終いにしたほうが無難。これ利用して鉱物を分析することは専門家でも難しい。)

3 もう1つの偏光板はステージ(試料)と接眼レンズの間にある。回転しないが、出し入れできる構造になっている。

4 入れない(使わない)場合を『開放、オープン・ニコル』、入れた場合を『直交、クロス・ニコル』という。
(これから学習するのは、このオープンとクロスの使い方だけと言っても良いです。)
 ニコル: nicol、光の偏光を得る目的に用いるプリズムの一種。方解石の結晶化から自然ヘキ開面に沿って菱形の柱を切り取り、カナダ・バルサムで接合したもの。イギリスの物理学者ニコル(W. Nicol)が初めて製作。『ニコルのプリズム』ともいう。(広辞苑、第四版)

6 まず、光学顕微鏡とほとんど変わらない
オープン・ニコルで観察する。※ステージ下の偏光板によって、光の方向は1つに限定されている)(クロス(直交)・ニコルにすると、光は完全に遮断される。したがって、反射板からの光は一切透過しないので真っ暗になる。スライドガラスを見ると真っ暗になっている。しかし、鉱物を通過した光は屈折しているので上の偏光板を通過し、美しい色として観察できるのである。これが偏光顕微鏡の原理です。)有色鉱物と無色鉱物の違いは、オープン・ニコルで分かるはずだ。

<その他の注意1、2、3>
        左の写真番号と合わせてみて下さい

 このレバーを使うと、大変難しい観測(ニュートンリングのような干渉模様)ができるが、触ってはいけない。接眼レンズを外して、このレバーが開放になっていることを確認する。小さなレンズがついている。

 ここには2種類の『検板』を差し込むことができるが、外しておく。検板を差し込むと、色が鮮やかになるので面白いが、これを利用して鉱物を鑑定できるようになるには何100時間も必要になると思う。だから、これも授業の最後に差し込んで、「生徒のみなさん、とっても綺麗ですねえ。」とステージをクルクルまわしてお終いにするべきである。
 
 (上:2種類の検板1st order red1/4λは使わない)

 絞り板が開放になっていることを確認すること。コンデンサーの位置など調節した方が良いに決まっているが、あまり神経質になることはない。

 以上1〜3を確認して、光が入っていることを確認しよう。余談であるが、接眼レンズを外して上から覗くと、どの部分で失敗しているか一目で分かる。同時に、光源の位置・種類も確認することもできる。



8 さっそく、ステージに『花崗岩』のプレパラートをおいて見よう。
9 「石英」と「長石」は透明だが、「黒雲母」は緑色〜茶〜黒色なので簡単に区別できる。
10 無色透明の石英と長石は、汚れているかいないかで分ける。
11 白く汚れているのが長石、汚れていなくてのっぺししているのが石英である。
  (ここから先、鉱物の見分け方に芸術的な表現をさせてもらうが、そうでなけ
  れば判らないような違いなのである。)

12 長石の汚れ方は、風化の程度によってさまざまだが『白濁』と考えて良い。
13 目が慣れてきたら、上の偏光板を挿入してクロス・ニコルにする。
14 とたんに色々な色が出てきて驚くが、何回も偏光板を出し入れして確認しよう。
15 ステージも回転させてみよう。
16 ステージを90度回転させる度に色が変わるが気にしないこと。
17 のっぺりしているのが「石英」、濁っているのが「長石」である。
18 「石英」は波動消失といってむにゅむにゅっと色が変わる(200万円ぐらいの
  顕微鏡の場合)。

19 「長石」の中には明確なストライプ構造を持つもの(斜長石)もある。


茶色いのが「黒雲母」
のっぺししている上半分が「石英」
汚れている下半分が「長石」


左のプレパラートをクロスで観察したもの
ここに含まれる長石は、すべて斜長石である
色が灰色だけど、ステージを回転させると変わる

  → 黒雲母花崗岩の写真で勉強するクリックすると別ウィンドーで開きます)

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  石英、長石、黒雲母を攻略できましたか。
  できたなら『安山岩』を使って、「角閃石」を見分けましょう。
  <主な特徴>
  ・ 屈折率が高いために出っ張って見える(オープン)
  ・ 組成が複雑なので、いろいろな色がある(オープン)
  ・ ステージを回転させた時に少しだけ色(黄〜黄緑)が変わる(オープン)
  ・ 結晶の周りが汚れて見えることが多い(オープン)
  ・ 結晶の周りが黒く汚れて見えることが多い(クロス)
  ・ 潰した6角形の柱状(オープン、クロス)
  ・ 120度のヘキ開が観察できる(オープン、クロス)


オープンで観察した角閃石


左のプレパラートをクロスで観察したもの

  →  もっと角閃石の写真で勉強する(別ウィンドーにジャンプします)

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  次に、「輝石」を調べましょう。
  <主な特徴>
  ・ 屈折率が高いために出っ張って見える(オープン)
  ・ うすい緑色(オープン)→ 黄〜オレンジ色(クロス)
  (色は、鉱物に含まれる微量元素、鉱物の角度、厚さによって大きく変化する)
  ・ ストライプも観察されるが、あまり重要ではない(クロス)


オープンで観察した輝石
・しゃかしゃかしているのは斜長石と輝石の石基
・ 輝石が出っ張って見えるなら、あなたは目は科学的です
・ うすい緑色です


左のプレパラートをクロスで観察したもの
・ 黄色〜オレンジ色に変化しました
・ まったく違う色になったものもあります
・ ストライプ模様は判別の観点として重要ではありません

  → もっと輝石の写真で勉強する
(別ウィンドーにジャンプします)


  ===

  有色鉱物の最後は「かんらん石」です。
  <主な特徴>
  ・ 8月の誕生石『ペリドット』は、うすい黄〜緑色(透明)のかんらん石
  ・ オープンで観察すると無色透明だが、周りが風化して海老茶色になっていることが多い
  ・ クロスで観察すると様々な色に偏光するが、鮮やかなピンク色が特徴的
   (右下の写真では黄〜 緑〜 青緑〜 青に偏光しています)


オープンで観察したかんらん石


左のプレパラートをクロスで観察したもの


  → もっと、かんらん石の写真で勉強する
(別ウィンドーにジャンプします)

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  最後に、おまけとして流紋岩の写真(クリックして下さい)を掲載して終了します。
  ふぅ〜!

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謝 辞

このページは名古屋市科学館学芸員、西本昌司氏のご指導・ご助言を頂きました。
心から感謝の意を表します。

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