このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第78時
観察6 いろいろな鉱物

     2013 2 9(金)、13(火)
     理科室

はじめに
 本時は、前後半に分けられます。前半は主な鉱物の標本づくり、後半は桜島の火山灰の顕微鏡観察です。鉱物の標本は、理科準備室を整理しているときに出てきた岩石の破片のリサイクルです。捨るような屑でも整頓して学習プリントに添付すれば、貴重な標本になります。

 なお、本時は、地球内部のどろどろに溶けた岩石『マグマ』を学習した直後に配置するべきです。マグマは地下深くでゆっくり冷え固まると大きな結晶『鉱物』になり、火山噴火で空気中に吹き飛ばされると顕微鏡レベルの結晶『火山灰』になります。本時は『鉱物』と『火山灰』の両方を調べますが、地質学冒頭に配置するときは鉱物だけの観察に止めたほうが良いでしょう。

他年度の実践
観察11 鉱 物 1年(2002年)
観察3 鉱 物 3年(2001年)


上:水晶を観察、スケッチする様子(右上の白い鉱物は石英)


本時の目標
 鉱物標本の石英、長石、黒雲母を識別する
 石英、長石、黒雲母、白雲母の標本をつくる
 いろいろな鉱物の観察、スケッチをする
 世界には約4000種類の鉱物があることを知る
 桜島の火山灰を顕微鏡観察し、それに含まれている鉱物を調べる

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント、1/人)
  • 大きな石英、長石、黒雲母
  • 水晶(六角柱)
  • 角閃石
  • 輝 石
  • 黄鉄鋼

授業の流れ
(0) 始業前の準備
 理科室に移動してきた生徒から順に、以下のものを準備させます。
  • 大きな石英、長石、黒雲母
  • 水晶(六角柱)
  • 角閃石
  • 輝 石
  • 黄鉄鋼

    写真右:左上から順に
    石英、水晶(六角柱)
    角閃石、輝石
    長石、黒雲母、黄鉄鋼
.


(1) 本時の授業内容の紹介 (2分)
 鉱物について簡単にまとめてから、4種類の鉱物を観察・学習プリントに添付します。その後、いくつかの鉱物を自由に観察してから、桜島の火山灰の顕微鏡観察を行います。なお、始業前に正しく準備できてない班は、次の(2)鉱物とは何かをまとめる途中に、少しずつ準備させます。早く書けた生徒にお願いして、時間節約をするわけです。

(2) 鉱物とは何か  (8分)
 鉱物は、マグマに含まれている1つの成分だけが結晶したものです。結晶構造を持つ状態=固体、ですが、例外として液体(水銀など)があります。また、同じ化学的組成でも結晶構造が違うと別の鉱物になります。化学組成のダイヤモンドと石墨は、その良い例です。


上:鉱物についてまとめたA組の板書


上:黄鉄鉱(中央の大きなものは比較的新しいもの、その他は風化したもの)
 黄鉄鉱の結晶構造はいろいろですが、化学組成はすべてFeS2 です。金のようにキラキラ光って見えるので、『愚者の黄金』と言われることもあります。なお、準備室にあった黄鉄鋼のほとんどは風化・酸化し、赤くなっていました。


上:カンラン石の標本(透過光を使うと、肉眼で透明な黄緑色に見えます)

(3) 鉱物標本づくり  (15分)
 標本にする鉱物は、白雲母、黒雲母、石英、長石の4種類です。白雲母と黒雲母は、私がぼろぼろに崩れたものを班毎に配付しました。石英と長石は、ハンマーで砕いたものがあったので、私がさらにそれを砕いて配付しました。この授業と同じ標本づくりを考えている先生は、黒雲母は園芸用土から採取させ、石英と長石は校庭から拾わせてください。次時『実習7 運動場の砂から宝石を探そう』は、その実践です。もちろん、理科室の岩石標本を砕いたとしても、握りこぶし1/2 大の岩石から150人分できまます。よく検討して授業計画してください。

岩石を砕く方法
(1) 岩石を雑巾や紙に岩石を包む
(2) ハンマーで叩く


上:岩石を砕くためのハンマー、金床


上:教師用実験台にまかれた鉱物から、適当なものを選ぶ生徒達

関連ページ
実習2 私の岩石標本1年(2002年)
実習3 身のまわりの岩石1年(2002年)


上:A君の学習プリント

(4) いろいろな鉱物の観察、スケッチ  (10分)
 (3)で鉱物4種類の標本づくりができた生徒から、その他の鉱物の観察・スケッチを行います。


上:実験中央に長石、黄鉄鉱、角閃石、輝石、長石、石英をおいて実習する様子


上:角閃石の標本ケースの蓋を開けて取り出し、観察・スケッチする様子


上:水晶を手に取り観察・スケッチする様子


上:黄鉄鉱に合わせた色鉛筆を準備し、観察・スケッチする様子

(5) 桜島の火山灰の顕微鏡観察  (15分)
 桜島の火山灰を洗浄し、顕微鏡観察します。観察できるものは、授業前半で調べた石英、長石、角閃石、輝石、カンラン石などです。肉眼レベルと顕微鏡レベルの観察を一致させることができる生徒は、とても楽しい時間になると思います。がんばれよ!


上:左は洗浄後(ビーカー内)、右は洗浄前(袋入り)の桜島の火山灰

火山灰を洗浄、顕微鏡観察させる手順とポイント
 各班に、50mlビーカーを準備させる
 各班に、火山灰1gを配付する
 ※写真上の袋入り火山灰の場合、3袋あれば300人以上が観察できる
 ビーカーに水を入れ、軽くかき混ぜるようにして火山灰を洗う
 操作を10回以上くり返す


上:左は洗浄後、右は洗浄前の火山灰(100人分)

 ホールスライドガラスに、洗浄した火山灰をごく少量のせる


上:ホールスライドガラスに載せた火山灰

 顕微鏡で観る
 カバーガラスをかけない
 最低倍率とする
 最低倍率でも大き過ぎる
 光を調節する
 反射鏡の使い方がポイント。通常、光学顕微鏡は下からの透過光によって観察するが、不透明な岩石や分厚い岩石は光を通さない。透過光=逆光となり、逆効果となる場合がある。
 顕微鏡はできるだけ明るい場所に設置する。そうすると、周辺部からの光できれいに見えやすい。
10 顕微鏡やレンズを傷つけない
 先生は、高倍率の対物レンズを使用している生徒がいないか常に気をつけること! 写真右の生徒が使用している対物レンズは、4倍ではなく10倍であるが、対物レンズをプレパラートの距離が約7mmなので合焦していることがわかる。つまり、彼は高倍率の対物レンズを使い、右手でプレパラートを動かしながら、いろいろな鉱物を探している=傷つける心配はない。


上:板書例

11 カンラン石の発見を目標とすると良い
 カンラン石は、透過光で透きとおった黄緑色に見える。その美しい色を一度見れば、誰でも識別できる。一番初めに発見した生徒を紹介し、その顕微鏡を一目見るように誘導する。「A君がカンラン石を発見しました! A君の顕微鏡を一目見せてもらってください。透き通った美しい黄緑色で、宝石レベルです。A君、協力をお願いします!」


上:本ページ掲載すること2回目のカンラン石の標本


上:教科書の火山灰の顕微鏡写真を参考にしながらまとめる生徒


上:B君の学習プリント

(6) 後片付け、考察  (5分)


上:後片付けする生徒達


授業を終えて
 ちょっと忙しい1時間でしたが、スケッチに飽きていた生徒も楽しく標本づくりができたと思います。顕微鏡観察はやや難しいものでしたが、興味と技術がある生徒にとっては素晴らしい時間になったと思います。

関連ページ
観察11 鉱 物 1年(2002年)
観察3 鉱 物 3年(2001年)
実習2 私の岩石標本1年(2002年)
実習3 身のまわりの岩石1年(2002年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学
 第章 地 球   マグマで決まる火山3種類   p.74、p.75 

第77-2時 ←
観察5' 偏光顕微鏡

→ 第79時
実習7 運動場の砂から宝石を探そう

中学校理科の授業記録1年(2012年度)

↑ TOP

[→home
(C) 2013 Fukuchi Takahiro