このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第64時
実験16 静電気の引力と斥力2012 12 12(水)、13(木)
理科室はじめに
現行の教科書は、1年物理分野のはじめに『いろいろな力』を数ページにわたって紹介しています。力の例として(1)重力、(2)弾性の力、(3)磁石の力、(4)電気の力、(5)物体の形や運動状態を変える力、などを挙げています。そして、力は(1)物体を変形させたり(2)物体の運動状態を変えたり(3)重力がはたらく物体を支えたりするエネルギーをもっているもの、としてまとめています。これに準じた私の古い授業記録は『実験4 いろいろな力 1年(1999年)』『実験15 いろいろな力 1年(2002年)』です。さて、これらの学習内容を検討すると、小学校に配置できそうです。このページの実践は、静電気だけを取り上げ、帯電列まで指導しました。ある程度追求しましたが、単発で終ってしまう内容で、これ以上追求することはできません。他のテーマも同様で、どれ1つとっても超難問、研究者レベルのものばかりです。誤解を怖れずに『力』に関する現代物理学の考えを紹介すると、相対性理論において『力』は直接考えるものではなく、さらに誤解を怖れずに記述するなら『力=時空の歪み』です。何とかなりそうなのは、自由落下の実験から微分・積分という演算を発見することですが、これは高校レベルだと思います。
関連ページ
・電子と静電気 2年(2000年)
・実験1 静電気 2年(2003年)
上:帯電させた定規で流水を曲げる生徒
本時の目標
1 2種類の物質を摩擦すると、静電気が発生することを確かめる
2 静電気にはプラスとマイナスがあることを知る
3 +−間は引力、++間と−−間は斥力が生じることを確かめる
4 水は電気に引き寄せられることを確かめる準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- プラスチック定規
- セーター
- 本日の学習プリント (1/人)
授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)(2) 静電気とは何か (10分)
静電気について事前調査したところ、ほぼ全員が静電気という言葉を知ってました。どこかで聞いたことあるようです。下は、A組で自由に静電気について発表させたものです。
上:A組で発表された静電気の正体A組で驚いたとことは、小学校での実験経験がないことです。1番目の『下敷で髪の毛をこするとできる』実験をしていないのです。経験者はわずか数人でした。生徒の発表はどれもこれも正解。しかも、生活体験から拾い上げたものなので大変良いのですが、・・・。今日、自分の手で静電気を発生させることに価値はある、と思いました。
(3) 帯電列 (15分)
静電気は、2種類の物質を擦りあわせると発生します。一方は+、もう一方は−の電気を帯びます。以下に、授業での説明例を紹介します。
帯電列までの説明例
「下敷で髪の毛を擦ると静電気が発生することは正解ですが、問題です。下敷で手を擦ると、静電気は発生しますか? する・しない、どちからに全員挙手してください。する、と思う人? ・・・ しない、と思う人? ・・・ 正解はする、です。理由は後から説明することにして、第2問。下敷で紙を擦ると、静電気は発生しますか? する・しない、どちからで挙手してください。する、と思う人? ・・・ しない、と思う人? ・・・ 正解はする、です。問題は続きます。第3問。紙と紙を擦ると、静電気は発生しますか。同じように挙手してください。する、と思う人? ・・・ しない、と思う人? ・・・ 正解はしない、です。さて、何人かの人は規則性が分かったと思いますが、第4問。紙とチョークを擦るとどうですか? する、と思う人? ・・・ しない、と思う人? ・・・ 正解はする、です。おや、迷ってしまった人がいますね。次はラスト問題です。チョークと金属を擦りあわせると、静電気は発生しますか? する、と思う人? ・・・ しない、と思う人? ・・・ 正解はする、です。
この5つの問題で、静電気をつくるための条件が分かった人はいますか。もちろん、擦りあわせることは絶対条件ですが、静電気ができるために擦る物質の条件は何ですか?」
以上のように発問すれば、『物質の種類は何でも良いが、同じ種類の物質では発生しない。2種類の物質を擦る必要がある。』ことに気づくでしょう。状況の応じて、問題の内容を変更してください。実際に、下敷で髪を擦ったり、紙で髪を擦って静電気を起こして見せると効果的です。
上:「じゃあ先生、手で髪を擦っても静電気ができるんだね」と言って、突然、友達の髪を擦りあい始めた男子生徒。いつものパフォーマンスですが、やっぱり楽しいですね。
上:A組の板書例A組の板書の手順は、下段の<まとめ> 2種類の物質をこすると、一方が(+)、もう一方が(−)の電気を帯びる(帯電する)を書いてから、上段の一覧表を書きました。
上段の一覧表については、左端から順に紹介すると良いでしょう。プラスとマイナスの間、どちらにもなる可能性がある中性的なものとして『皮膚』や『紙』を紹介します。右端にある下敷(塩化ビニール)は、対極に位置する左端『髪、毛皮』と擦りあわあせると最高に静電気を発生する、と紹介します。
(4) 静電気で水を引き寄せる実験
筆箱から塩化ビニール製品を探し、純毛のセーターで擦らせます。それを流水に近付けると、驚くほど水が曲がります。水が曲がる現象を正しく説明するためには、水分子の極性を紹介する必要がありますが、ここでは触れません。自分の手で静電気を発生させ、できた静電気を感動的に確かめることに重点をおきます(小学生レベルで申し訳ありません)。
静電気で流水を曲げる実験のポイント
1 はじめに、以下の模式図を書かせる
上:定規が−になることは、2年生で学習します2 高級定規は、静電気が発生しないことがある
3 大きなプラスチック下敷でも良い
4 化学繊維やプラスチックからできた衣服は、発生しにくい
5 純毛の衣服、髪を使うとよい
6 静電気対策をとっているシャンプー、リンス、トリートメントに注意
7 静電気は、水に触れると、一瞬でなくなる(水へ移動する)
8 実験日の天気について触れる。例えば、「雨の日に静電気はできにくい、って知っていた? 逆に晴れた日、つまり、静電気は冬によく発生するけれど、太平洋側の日本の冬は乾燥するから、簡単に発生します。乾燥した冬になると、毎日バチバチ、静電気人間になる人はいませんか? ・・・ だから、今日のような晴天で乾燥した日は、静電気の実験日和です。がんばってください。」
9 雨の日は、ほぼ失敗なので延期しましょう!
静電気の実験は何をしても、同じように失敗するだけです。
上:シャープペンシルでもやっていますね。がんばってください!
上:実験大成功!
授業を終えて
この授業は2年生で学習する内容を含んでいます。教科書に目を通すだけ、お話だけにするべきだったかも知れませんが、微妙なところです。現場が迷わなくても良い、洗練された教科書をつくってください。私は文部科学省に提案することが多いのですが、今回は教科書出版社に提案です。1年の授業時間数は2・3年より25%少なくなっています。したがって、ページ数も同じように減らすべきです。『教えなくて良い内容』であっても記載されていると、子どもや親は心配です。先生は心配を取り除くことが仕事なので、心配の根本原因となる過剰なページを削除してください。さらに、1年だけでなく2・3年の教科書も短期間でページ数を増やすために追加されたような部分が40ページ分程度あります。執筆現場(と教育現場)はそれがどれか指摘できるはずす。重要な部分が手抜きに見えてしまうのは、急造したページに目がいってしまうからです。最終的に残るものはよく推敲されたもの、つまり、読者や利用者のために時間を使った、思いやりの心がこもる洗練された書物です。安心して本物をつくってください。これまで実績があるから大丈夫です。応援しています。
そして、文部科学省に要望です。1年の授業時間数を2・3年と同じ、週4時間にしてください。そうすれば、出版社も各学年のページ数を揃えることができます。学校現場もゆとりができます。もちろん、指導内容は増やすことはできません。現場の中学1年担当の先生や現在中学1年の子どもに聞けば、誰もが現行の学習内容がオーバーフローであることを指摘してくれるでしょう。ちょっと耳を傾ければ、わかることです。
関連ページ
・電子と静電気 2年(2000年)
・実験1 静電気 2年(2003年)
・実験4 いろいろな力 1年(1999年)
・実験15 いろいろな力 1年(2002年)実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学』
第7章 電界と磁界 離れた力がはたらく世界 p.124 静かなる電子(静電気) p.125 静電気の引力と斥力 p.126、p.127 磁石がつくる空間『磁界』 p.128、p.129
実験15 重さと質量の違い |
実験17 鉛筆で調べる圧力 |