HomeMr.Taka 中学校理科の授業記録1年(2016年度)

実験16 エタノール水溶液の分留

2016 9 26(月)〜28(水)
理科室

はじめに
 
エタノールと水は、いずれも無色透明の液体です。匂いをかいだり手で触ったりすれば区別できますが、見た目だけではわかりません。それらを2つのビーカーに同じだけ入れ、生徒の目の前で混ぜてしまいましょう。もう二度と戻らないように思いますが、今日は元のエタノールと水に分ける方法『蒸留(分留)』を学びます。


図1:エタノール水溶液を蒸留する様子


本時の目標
1 蒸留(分蒸)について理解する
2 エタノール水溶液から、エタノールを取り出す
3 蒸留で取り出した液体を脱脂綿につけ、燃焼させる
4 正しい操作で安全に実験する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • エタノール (80mL、演示用)
  • 水     (80mL、演示用)
  • 200mLビーカー  (2、演示用)
  • 50mLビーカー  (1/班)
  • 試験管     (5/班)
  • 試験管立て    (1/班)
  • 沸騰石      (5/班)
  • 鉄製スタンド   (1/班)
  • ゴム栓・ガラス管・ゴム管のセット(1/班)
  • ガスバーナー   (1/班)
  • マッチ  (1/班)
  • 脱脂綿  (適量/班)
  • ピンセット(1/班)
  • ぬれ雑巾 (1/班)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)エタノールと水の紹介、そして、代表生徒による区別 (3分〜5分)
 200mLビーカーを2つ用意し、1つにエタノール80mL、もう1つに80mLを入れます(ビーカーの大きさとエタノールの量は、生徒数に合わせて調節する)。エタノールは瓶から直接、水は水道の蛇口から入れます。

  ビーカー内の液体はいずれも無色透明なので、見た目で区別することはできません。先生は後ろを向き、生徒から見えないようにしてビーカーを入れ替えます。そして、どちらがどちらであるか当てる方法を発表させてください。次の(ア)と(イ)が出るはずです。

(ア)匂いをかぐ
(イ)手につける
 ※密度の違いで区別する方法がありますが、このことはもう少し後で教えます。生徒から意見が出た場合は、その生徒に具体的な方法まで発表させてください。発表できない場合は、のちほど先生から教えることを伝えます。

 上記(ア)と(イ)が発表されたら、元気のある生徒に区別してもらいましょう。匂いをかいだり、手につけたりするだけです。なお、アルコールアレルギーの生徒がまれにいるの注意してください。

(3)演示実験:エタノールを脱脂綿につけて燃焼させる(5分)
 エタノールと水を区別する方法として、脱脂綿につけて加熱する方法があることを紹介します。エタノールの場合は簡単に燃焼しますが、水の場合は燃焼しません。これを先生が演示します。

エタノールつき脱脂綿を燃焼させる方法
 少量の脱脂綿をピンセットに取り、それをエタノールのつけます。あとは点火するだけです。ただし、安全に操作するために、次の注意が必要です。

(1)ピンセットが開き過ぎていないか確認する
(2)エタノールが滴りおちないか確認する
(3)ピンセットは水平に保つ
(4)火傷しそうになったら、ピンセットを離して落とす
(5)落としてもよい場所で行う
(6)燃焼中は、最後まで目を離さない


図2:脱脂綿を燃焼させる生徒
実験7:有機物の燃焼1年(2012年)』から転載

 図2は脱脂綿だけを燃焼させている様子ですが、脱脂綿は最終的に2つの気体(二酸化炭素と水)に変化し、消えてしまうように見えます。

 エタノールつき脱脂綿の場合は、初めにエタノールだけが燃焼し、脱脂綿はまったく変化しません。真っ白なままです(図3)。


図3:エタノールの燃焼

 エタノールが完全に燃焼してなくなると、次に、脱脂綿が燃焼します(図4、図5)。これらは図2と同じです。


図4:脱脂綿の燃焼

図5:脱脂綿の燃焼

図3〜図5:実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』から転載

(4)演示:エタノールと水を混合、そして、蒸留の紹介(5分〜10分)
 (2)で紹介した2つの液体(エタノールと水)を混合します。それらは完全に混合し、無色透明に液体になります。まるで水、のようです。それを生徒に見せながら、もう一度2つに分けることはできないか、2つのビーカーに戻す方法はないか考えさせてください。

エタノール水溶液からエタノールを取り出す方法を考えさせる
   『実験8 蒸 留1年(1999年)』の再編

ポイント
(ア)沸点の違いに着目させる
(イ)水とエタノール、どちらが先に沸騰するか思い出させる
(ウ)エタノールの沸点が78度Cであるこことを確認する
(エ)状態変化しても、物質そのものは変化しない

図6:水とエタノール


図7:エタノール水溶液

 「よくわかりましたね。加熱するだけでオッケーです。混合液を加熱すると、エタノールは78度Cで気体のエタノールに状態変化しますが、水は、100度Cで水蒸気に変わります。ですから、初めに気体に変わるのは・・・エタノールなので、まず、エタノールだけを取り出すことができます。このように物質の沸点の違いを利用して、純粋な物質を取り出すことを蒸留といいます」

 「さあ、理論が分かったところで、実際に、みなさんにエタノールと水を取り出してもらいましょう」


図8:蒸留のまとめ、を発表する生徒

(5)演示:エタノールの蒸留方法 (5分〜7分)
 実験器具を操作しながら、手順をすべて演示します。安全上の注意も怠らないでください。

蒸留装置のポイント
1:
エタノール水溶液の量は、試験管1/5〜1/4
2:
沸騰石を入れる
3:
ガスバーナーは中火 → 沸騰した液体がゴム栓に達したら失敗
4:
発生した気体は、とくに冷却しなくても液体になればそれで良い
5:
液体は、試験管に5mm〜7mmたまったら、次の試験管にする


図9:実験装置(『実験19:いろいろな酒を蒸留しよう1年(2012年)』の図を改変)

安全を確保するための注意
1:エタノール水溶液に沸騰石を入れる
2:ゴム管を折り曲げない
3:ガラス管を抜き差しするときに火傷しない

(6)生徒実験(25分)


図1:ピンセットを使って、次の試験管に移す様子


図10:たまった液体の量を定規で確認している様子


図11:蒸留してできた液体を脱脂綿につけ、燃焼させる様子
 (実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』から転載)

(7)かたづけ (5分)

(8)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 脱脂綿にエタノールを染み込ませて燃焼させる実験は、是非とも行わせたい生徒個別実験の1つです。ただし、実験操作を誤ると大きな事故になるので、安全上の指導を十分にしてください。

 さて、本時はエタノールと水を分ける実験でしたが、次時はいろいろな酒を家庭から持参させます。そして、アルコール・水・その他の成分に分ける実験を行います。

関連ページ
実験7 有機物の燃焼1年(2012年)
実験8 蒸留1年(1999年)
実験19 いろいろな酒を蒸留しよう1年(2012年)

参考図書
実践ビジュアル教科書『中学理科の化学

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→ 実験17 いろいろな蒸留

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