このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 年(2017年度)です

第22時
観察22 セキツイ動物と水

2017 6 14(水)、15(木)
普通教室

はじめに
 生物の進化は、生活範囲を拡大させるように進みます。生命が誕生した水中から陸上へ、そして、へと広がっていきます。それは生存競争のためであるかもしれません。しかし、私は『生物進化の原理は、物理法則と対峙させることで得られるのではないか』と感じています。その物理法則とは、熱エネルギーの第2法則『エントロピー増大』です。生物は、他の生物と一緒になろうとせず、自己や自分の種を残そうと命をかけて争います。そうしなければ、自分が死んだり種が絶えてしまうからです。生物界は複雑さ(エントロピー)を求めている見えますが、私は自分を守るために可能性を追求し続けているのだと思います。自分を守るための可能性の追求は、複雑さ(エントロピー)を大きくすることと真逆のものである、と私は思います。

 さて、今回のはじめには難しい内容になりましたが、授業は新出語句が多い楽しい内容だと思います。


上: Kさんの学習プリント(クリックすると拡大します)


本時の目標
セキツイ動物を5つに分類するための視点を学ぶ
・体のつくりは、水と深い関係があることを理解する
・セキツイ動物は、水中から陸へと生活範囲を広げるように進化してきことを知る(逆に、陸から水中へ進化した生物もいる)

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 色鉛筆
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)セキツイ動物を5つに分類する (3分)
 黒板いっぱいに表を書きます。セキツイ動物は『魚類』『両生類』『ハ虫類』『鳥類』『哺乳類』の5つに分類します。これら5つは、ほぼ全員の生徒が知っています。もちろん、もっと詳細に分類することもできます。

 しかし、今日のポイントは分類の『視点』にあります。 1)分類基準は1つではないこと、2)複数の分類基準を合わせることで5つに分類できること、3)水との関連性によって分類基準を考える、ということです。したがって、なぜ5つなのか、なぜ5つにしたのか、については深入りしないようにしましょう。

本日の表について
  横6列、縦12行ぐらいです。 黒板の縦はいっぱいになりますが、横はメモ書き用に少し残します(下図)。


上:黒板いっぱいに書かれた表(クリックすると拡大します)

先生用、表の書き方
 初めに横線を書きます。長さ4m以上のものを10本以上、等間隔に書きます。初心者の先生は事前に練習しておいてください。さくさく60秒で書けるようにしましょう。

 縦線は、横線をすべて書き終えてからにします。これを失敗すると悲しい結果、書き直しになるので、よく集中してください。横線を書くコツは、遠くをみて、手元は視界のふちでみるようにすることです。そして、横線の右端は揃えるのではなく、長めに書きます。

 縦線は左から右へ、6本書くことになりますが、最後の1本(右端)を書く前に、黒板消しで右端をそろえるように消します。つまり、右端をあまらせるように、横線を長めに書いておくのです。そうすれば、横線の右端を揃えるために神経を使う必要がなくなり、生き生きとした横線になります。

※ 生徒用学習プリントには、事前に表を印刷しておきます。

(3)5つの生活場所についてまとめる (3分)
 もっとも重要な視点は、生活場所です。 その生活場所をよく調べると、水中から陸上へと変わっていくことがわかります。陸上へ移動するためには、水を確保するための工夫が必要です。すべての分類基準は、水と関連しています。

(4)複数の視点から、5つの動物の境界線を調べる (分〜分)
 一番初めの分類基準(視点)は、受精場所です。

 受精場所を選んだ理由は、魚類と両生類を区別するために最適の基準だと思うからです。魚類は生まれてから死ぬまで水中生活をします。メスは水中に卵を、オスは水中に精子を放出します。精子は水中を泳いで卵に到達し、受精します(体外受精)。新しい生命は、こうして誕生します。

 両生類も同じように体外受精をしますが、魚類よりもメスとオスが接近します。カエルの場合、オスがメスに抱きつきます(抱接)。前脚でがっちり抱きつくと、後脚でメスの腹部をこすり産卵をうながし、産卵と同時に精子を放出します。カエルの中にはモリアオガエルのように樹上で産卵&受精するものもあります。

 ハ虫類からは体内受精になります。ほとんどの生徒はこれを知りません。カメ、ワニ、ヘビなどは、メスの体内で卵と精子が出会います。メスの体内に入った精子は、体内中の液体を泳ぎ、卵に到達します。鳥類も哺乳類も同じです。

 なお、精子が泳いで卵に到達しようとすることは、すべての生物に共通しています。コケ植物や藻類など、植物の精子も泳ぎます。精子は泳ぐことによって競争を行い、強いものだけが受精するチャンスを得ます。生物界は強いものしか生き残ることができないのです。

 さて、授業における2番目の分類基準は『呼吸』にしましたが、その前に、『受精卵を保護するもの』という視点を入れると面白くなります。下表のように、水を確保するためのしくみが高度になっていくことがわかります。

受精膜を保護するもの
 魚 類  受精膜
 両生類  受精膜、寒天
 ハ虫類  柔らかい殻
 鳥 類  硬い殻
 哺乳類  子 宮


上:脊椎動物の分類(クリックすると拡大します)

 上図の左端をみてください。分類基準です。上から順に、水のとの距離がだんだん離れていくように配置してあります。

  1. 生活場所
  2. 受精
  3. 呼吸(外呼吸)
  4. 心臓のつくり
  5. 体腔(たいこう、胸と腹とそれらを分ける横隔膜、下図)
  6. 育て方
  7. 体温
  8. 産むもの
  9. 産卵数
  10. その他いろいろ
  11. 主な動物の例

上:体腔の説明図など

(5)本時の感想、考察 (5分)


上: Kさんの学習プリント(クリックすると拡大します)


授業を終えて
 動物の例は、テストによく出題されるものを中心に紹介します。その他、無限にあるので子どもたちの興味に合わせます。また、図の最上部には、それぞれの動物の模式図を描かせます。時間が足りないと思うので、宿題にすると良いでしょう。興味関心の程度がよくわかります。その図に、その動物を分類基準となる特徴を書きこませるように指導すれば完璧です!

note:生徒と先生の会話
「ペンギンは鳥じゃないの?」
「ペンギンは水の中を飛ぶ鳥です。陸上での前脚はカワイイだけですが、水中では力強く羽ばたきます。水は空気より抵抗が大きいので、筋肉のかたまりのような翅へと進化しています」

関連ページ
セキツイ動物のなかま2年(2003年)
セキツイ動物の分類2年(2000年)
生物の分類

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

第8章 進化と分類  水との距離から体の構造を考える p.146-p.147

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