|
第34時
実験8 鉄の酸化2017 9 5(火)
普通教室はじめに
「鉄を加熱するとどうなる?」という質問に、あなたは何と答えますか。鉄は身近な物質なので、考えの1つぐらいは浮かぶと思います。何も思いつかないなら、あなたは考えすぎです。とりあえず「熱くなる」、と答えることができれば合格です。関連ページ
実験3 鉄を熱する(酸化)(2年)2003年
実験1 スチールウールを燃やす(2年)2000年
上:スチールール(鉄)を加熱する様子
本時の目標
・鉄を加熱するとどうなるか、これまでの経験から考える
・鉄を燃やすと質量(g)はどうなるか、予測する
・鉄を空気中で加熱すると、酸素と化合して質量が増えることを理解する
・鉄を加熱し、酸化鉄つくる
・鉄と酸化鉄の質量変化を、グラフ化する
・無事故、けがなしで授業を終える準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
- スチールウール(ボンスター1 /班)
- ガスバーナー (1 /班)
- 燃えかす入れ(1 /班)
- チャッカマン(1 /班)
- セロハンテープ (1 /班)
- 電子てんびん(1 /班)
- 小さなダンボール(1 /班)
- ピンセット(1 /人)
- 酸素ボンベ(演示用1)
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)(2)鉄を加熱するとどうなるか考える (5分〜10分)
鉄を加熱するとどうなるか、子どもたちに自由に考えさせます。いっぱい出てくると思いますので、まず、自分のプリントに書かせます。時間は1分あれば十分でしょう。3つ以上書けた子どもから、自由に板書させてください。思いもよらない考えが出てきて、学習に広がりが出ると思います。
上:鉄を加熱するとどうなるか(A組)形が変わる、溶ける、もろくなる、ふくらむ、風船みたいに広がる、赤くなる、もろくなる、黒くなる、赤くなる、熱をもつ・・・どれもこれも正解、味わい深い答えです。これだけで1時間楽しめますが、今日のメインは加熱実験&グラフ化です。ささっと切り上げましょう。
(3)鉄を空気中で加熱すると重くなるか(3分)
あなたも考えてください。「鉄を空気中で加熱すると、重くなるでしょうか。それとも、軽くなるでしょうか」
この質問は、考えるための視点が必要です。さもなければ、先生からのヒントが必要です。何もないなら『ヤマカン』になるので、今日の授業はヤマカンのための10秒間を与えました。生徒たちのヤマカンは以下の通りです。
上:鉄を加熱するとどうなるか、という質問に対する子どもたちの解答(A組)A組はへそ曲がりが多いのでしょうか。それとも、私のフェイントを警戒しているのでしょうか。他のクラスは半数の子どもが軽くなると答えるのですが、上のような分布になりました。約10人挙手していませんが、時間節約でスルー。
ヤマカンで答えさたら、すぐに正解を示します。正解は『重くなる』です。その理由を説明できる子どもがいないか問いかけると、何人かが挙手するでしょう。塾で教えてもらったり予習してきたり教科書で調べてたりした子どもが、以下のように答えるはずです。
主な子どもの考え
(1)酸素と化合するから
(2)化合した酸素の分だけ、重くなるから私は仮説を立ててから実験させる授業(仮説実験授業)より、教科書に書かれていることが本当に正しいのか確かめさせること(検証実験)を好みます。今回は単なる検証だけでなく、どれだけ重くなるか測定させ、その割合をグラフ化させます。そこまでやる必要はないのですが、定量的な実験をすることで、子どもたちはより良い実験結果(データ)を出すための工夫をします。そのための工夫・試行錯誤、手を動かしながらの再工夫・再思考を続けることは、机上で仮説を立てことよりも優れている、という事実を私はこれまでの経験から知っています。授業時間は限られているのです。
(4)実験の手順 (5分〜10分)
少なくとも、1人1回は実験させます。スチーウールを加熱し、重さを測る実験です。火傷すると大変ですが、それほど難しいものではないでしょう。
上:実験手順の板書(A組)4人班なら4つのデータができます。方法は簡単で、全員違う大きさに分ければ良いだけです。それを加熱すれば、自然に4つのデータができます。
上:実験手順の板書(B組)
手順の上には、できた酸化鉄をセロハンテープで添付することを指示した(5)実験データをグラフにする方法(3分〜5分)
横軸は初めのスチールウールの質量(g)、縦軸は加熱後のスチールールの質量(g)です。それらをグラフに記録していくと、直線上に並ぶことが推測されます。もし、直線から大きく外れた場合は、その記録は除外します(下図)
上:実験データをグラフにしたもの
上:同上理想的な実験なら、すべてデータは直線上に並ぶはずです。直線を書かなくても、点を打つだけで自然に直線ができあがります。しかし、授業中にできる実験は多くても10回までなので、理想的な実験をした場合を考え、1本の直線を書きます(上図)。
(6)実習:鉄の加熱実験 (30分〜35分)
別ページ『実験3 鉄を熱する(酸化)(2年)2003年』『実験1 スチールウールを燃やす(2年)2000年』をご覧ください。 このページでは危険性だけを繰り返しておきます。
スチーウールを加熱する実験上の注意
(1)スチールウールをしっかりよじる
(2)スチールウールを加熱前に、軽く叩いて粉末状の鉄を落とす
(3)炎の中に入れると、粉が飛んだり、小片が落下したりする
(4)それらは2000℃以上で、皮膚や衣服を消失させるほど熱い
(5)スチールールをある程度加熱したら炎の中から出し、息を吹きかける
(6)吹きかける方向に誰もいないことを確認する
(7)息は初め弱く、だんだん強くする
(8)息を一気に吹きかけると、鉄が液状化して落下するので大変危険!息を吹きかけてもスチールウール内部が赤熱しなくなったら、再度炎で加熱し、同じように息を吹きかけ、内部まで完全に酸化させる。これを繰り返しても反応がなくなったら終了。冷却してから、質量を測定する。
(9)加熱中、ピンセットが持てないほど熱くなってしまったら、スチールウールが落下しても安全であることを確認して、ピンセットを離す(ピンセットも安全に落下させる)
(10)冷却するときは、燃えかす入れの蓋に置いても良い(ただし、粉末状になった酸化鉄がぼろぼろと落ちてしまうので実験データが悪くなる)
(11)電子てんびんの皿の上には、皿が燃えないようにダンボールを乗せておくが、もし、ダンボールが焦げて煙を出しはじめたり燃え始めたりしたら、速やかにピンセットでスチールウールを持ち上げる(その実験はデータが悪くなり過ぎるので失敗)(7)本時の感想、考察 (5分)
授業を終えて
鉄の酸化の化学反応式の扱い(教えるか教えないか、どこまで教えるか)は学校現場によって大きく変わりますが、スチールウール燃焼実験の楽しさは変わらないと思います。楽しさとは、手軽さ、変化の大きさ、加熱実験の危険性の認知、質量変化の意外性、グラフ化の容易さ、そして、炎から生まれるものです。上の写真を見てください。改善すべきところ、突っ込みどころ満載です。しかし、だからこそこれから始まる実験中心の授業が楽しくなるというものです。どんどん気づかなかったことが分かるようになる、精度が上がっていく方が楽しいものです。
関連ページ
実験3 鉄を熱する(酸化)(2年)2003年
実験1 スチールウールを燃やす(2年)2000年
実験6 使い捨てカイロ(2年)2003年実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』
第4章 化学変化 鉄を燃やそう p.48-p.49
第33時 ←
化学反応式
→ 第35時
実験9 マグネシウムの酸化