このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第31時
観察1 ソラマメ、タマネギの根

     2018 7 5(木)、6(金)
     普通教室

はじめに
 今日から3年生物が始まります。理科室が使えるなら、実験・観察で始めたいのですが、そうはいきません。クーラーなし40度越えの理科室で、公のカリキュラムにしたがって化学実験を始めた2年生へゆずらないわけにはいかないからです。彼らは指示にしたがい、ガスバーナーの炎を安定させるために窓を閉め扇風機を使わずに加熱実験をしているのですから。

 わざわざ2年生のことを記述した目的は、子どもの命を大切にしたいからです。一刻も早く、名古屋市の公立小中学校の理科室にクーラーをつけてもらうためです。熱中症による死亡率は33℃を越えると急激に高くなるという話を聞いたことがありますが、理科室廊下は連日36℃付近をさまよっているから、熱中症になる可能性を論じるレベルではありません。体温を超えた空気の中で、何ができるというのでしょう。

 また、ひどい噂を聞きました。名古屋市では理科室にクーラーを設置する予定だった話が立ち消えになり、来年、話し合いの土俵にさえのらない、という噂です。これが根も葉もない噂であり、2019年夏、30℃以下の理科室で授業ができるようになることを望みます。私は、事実であるかどうか確認しないまま記述したことで不利な立場になったとしても、これが1日でもはやく理科室にクーラーが設置される一助になることができたなら本望です。

 子どもが死んでから考える、のでは遅いと思います。理科の先生の忖度(あるいは、良識ある判断)に頼り、クーラーのある普通教室へ移動させるようではいけない、と思います。子どもの教育を受ける権利、および、理科教師の教育する権利をおろそかにしてはいけない、と思います。お金の問題があるとすれば、それは配分の問題です。あるところにはあります。お金は明るい未来のため、その社会をつくる子どものために投資すべきだ、と思います。

 さて、私の第1時間目の授業は、普通教室になりました。もし、理科室が使える環境なら、ソラマメ、タマネギ、イネなどの生物試料の根の観察から入ると思います。以下に、17年前と20年前の記録を掲載します(それ以降、何度も実践したのですが、記録がありません)。指導技術はかなり上がっているので、もう一度やってみたいなあ。


上:長ネギの根
右:サツマイモの根

上記2つの試料は、
17年前の2001年6月22日に
生徒が持参した試料
観察3細胞分裂3年(2001年)より転載)



上:1998年、生徒が持参したタマネギの根(観察3細胞分裂3年(1998年)より転載)


本時の目標
・生物が成長する理由を考える
・どのように成長するか、どうやって成長するか考える
・細胞分裂する部分は決まっていることを知る
・細胞分裂は(1)自分が成長する、(2)自分自身を新しくする、(3)子孫を残す、などの目的があることを理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日から生物分野です。1時間目の今日は、いつものように教科書を離れた問題を考えます。単元名は『生命のつながり』、その第1章は『生物の成長とふえ方』です。したがって、生物はなぜ成長するのか? を考えてもらいます。その後、細胞レベルでの成長について教科書を読みながらまとめます」

(2)生物は、なぜ成長するのか(15分〜25分)
 この発問は失敗でした。成長とは何か、成長について定義させるべきでした。3クラスも同じ失敗をしてしまいましたが、終わってしまったことは仕方ありません。以下に、子どもたちの発表を紹介します。


上:A組の発表

A組の様子を紹介すると・・・
 A組は「そういうものだから」という回答から始まりました。「生物は成長するものだから」という意見です。まあ、そういうものだから、そう、なのですが・・・ということで、この発表を採用しました。わざわざ板書することで、次の発表が出やすくなるものです。
 次の意見は「生物は成長する意思があるから」というものでしたが、深く突っ込むと面倒なことになるので、発表した子どもの目の奥を3秒間、まばたきすることなくじっと見つめてから、「意思があるから」と板書しました。これで、他の子どもも追求することなく、別視点からの考えることを始めました。
 「子孫を残すため」という意見は、『成長』とは少し離れていますが、これまでの2つの意見よりはわかりやすいものだったので、ほっとしました。ホッとしたのは私だけでなく、他の子どもも同じだと思います。
 「死ぬため」という意見は過激です。死ぬために成長する、というのは違うような気もしますが、一応書くことにしました。
 その後、「細胞が増えるから」という意見が出たところで、黒板を左右2つに分けました。そして、右半分には『どのように成長するか』『どうやって成長するか』についてまとめることにしました。私は、次の時間に学習する細胞分裂という語句を添え、右側に書きました。
 子どもたちの発表はまだまだ続きますが、中略。面白かったのは、上図右B「母乳で成長する」、C「愛で成長する」、D「他のものと心を合わせて」、さらに、E「競い合って成長する」と発展していったことです。生物どうしの競い合いは、単元3で学習する『生態系』なので、ここで飛び出すとは予想していませんでした。


上:B組の発表


上:C組の発表

(3)ソラマメの根の成長(5分〜7分)
 教科書の開け、単元の冒頭から代表生徒に読ませました。そして、『ソラマメの根』のところで、学習プリントに図入りでめとめさせました。以下に、2クラスでの板書を示します。


上:B組での板書


上:C組での板書

根冠(こんかん)と成長点について
 現在の教科書では『根冠』と『成長点』という語句は教える必要はありません。しかし、成長点(成長する部分)を守るための硬い、鉛筆のキャップのような『根冠』は、実際に『根の細胞分裂』を観察するときに、しっかり区別しなければならない部分です。根冠という語句を教えることで、細胞分裂をしていない『根冠』と分裂が盛んな『成長点』を、より明確に見分けられるようになります。顕微鏡観察をするつもりなら、ぜひ、これらの語句を教えてください。
 ただし、子どもや教師の負担を減らすために、教科書に掲載する必要はないでしょう。本来なら、本質から外れる内容や実験・観察に直結しないものを削除し、これらの語句を入れて欲しいのですが、最近の教科書は内容が多すぎるからです。資料集を作られている方に、忘れないように掲載していただければ必要十分です。

(4)タマネギの根の成長(5分〜7分)
 (3)と同じ手順ですが、学習プリントにはまとめませんでした。教科書で、成長する部分が『根の先端』のちょっと手前、すなわち、成長点であることを確認しただけです。


上:タマネギの根(観察3.2 細胞分裂3年(2001年)から転載)

(5本時の感想、考察 (5分)

===3つのクラスの板書===


上:A組の板書(クリックすると拡大します)


上:B組の板書(クリックすると拡大します)


上:C組の板書(クリックすると拡大します)


授業を終えて
 本文でも述べたように、「なぜ成長するか」という発問は不適切でした。「成長とは何か」と発問すべきでした。だだし、成長を定義させる発問に対する回答は検証していません。未知数です。興味ある方は、授業の中で子どもたちの考えを拾い出してみてください。

 今回の実践はかなり苦労しましたが、収穫は、「なぜ成長するか」「どのように成長するか」という問いに対して、子どもたちの経験から幅広い考えが出てきたことです。とくに、成長には『愛』や『ライバルとの競争』が不可欠という意見が出てきたときは、悪くない時間だったと感じました。

 さて、次の時間は細胞分裂を観察するための準備として、教室で細胞分裂のステップを学習します。その次は、灼熱の理科室で顕微鏡観察です。いずれも、お楽しみに!

関連ページ
観察3 細胞分裂3年(2001年)
観察3.2 細胞分裂3年(2001年)
観察3細胞分裂3年(1998年)
生物(生命)とは何か?

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

第2章
細胞の構造とはたらき
 自分を大きくするため、
新しくするための細胞分裂
p.28-29
 ヒヤシンスの細胞分裂 p.30-31

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