このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 3年(2018年度)です |
第32時
観察2 細胞分裂(解説)2018 7 9(月)、10(火)
普通教室はじめに
今日は細胞分裂の解説、次時は市販の細胞分裂プレパラートを観察させます。観察は顕微鏡を1人1台使います。全員、自分の力で分裂中の細胞を見つけるだけでなく、4つある分裂の段階を見分け、先生の合格印をもらえるようにしたいと思います。そのために、今日はたっぷり1時間、教師用顕微鏡の映像をモニターさせながら、細かいテクニックや見分け方まで解説します。あなたが理科の先生なら、細胞分裂の観察に2時間使ってください。年間スケジュールを見渡しても、悪くない時間配分です。もちろん、理科室が利用できる環境にあるなら、初めの1時間目(本時)から顕微鏡に触れさせてください。授業前半は解説、後半は顕微鏡の使い方の復習をしてください。市販プレパレートを使ったプレ実習をしても良いでしょう。2時間目に同じことを繰すことができれば、学習効率&効果は劇的に上がります。
また、いろいろな植物の種子や球根の水栽培を行い、市販ではない手作りプレパラートに挑戦しても良いでしょう。高い確率で成功、分裂中の細胞を見つけることができると思います。ポイントはプレパラート作りの前段階、水栽培にあります。数cmより短い、幼い根ができれば成功! と言えるでしょう。以下は17年前に実践したタマネギの根の手作りプレパラートです。分裂中の染色体がよく見分けられます。
(上:タマネギの根の成長点で分裂している細胞、『観察3.2 細胞分裂3年(2001年)』から転載)
上部の細長い細胞は、成長点を保護する根冠細胞
上:A組の板書、モニターに映されたタマネギの根のプレパラート
本時の目標
・細胞分裂は、染色体の状態から4段階に分けられることを知る
・細胞分裂の目的は(1)自分自身を新鮮に保つ、(2)細胞数を増やして成長する、の2つであることを確認する
・次時、理科室で細胞分裂の4段階を見つける意欲を高める準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
- 教師用顕微鏡
- 細胞分裂プレパラート(タマネギ)
- モニター用ケーブル
- 指示棒
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)
次時、理科室で顕微鏡観察を行うことを伝えます。プレパラートは、市販のタマネギの根で、細胞分裂をしているものです。今日はその準備として、細胞分裂だけでなく、分裂中の細胞を見分け方のポイントを学ぶことを知らせます。もちろん、理科室での観察は顕微鏡1人1台、プレパラート1人1枚です。できた人には『技能ポイント』が与えられるとても重要な1時間になることも、付け加えます。(2)細胞分裂の解説(30分)
細胞分裂は、前期・中期・後期・終期の4つの段階にわけられます。解説するときは、これに2段階付け加え、下図のような6段階にします。細胞分裂が繰り返されることを表現するために、最後と最初をつなげて1つの輪にするためです。
上:細胞分裂の4つ段階、および、その前後の段階
生徒へ指導・解説方法
まず、『6つのステージ』を準備する(下図)
1)黒板中央に大きな円を書く
2)黒板消しで6箇所を消す (上下、右斜め60度、左斜め60度)
3)残った線を、時計回りの矢印に書き直すそれから、通常の細胞を板書し『核』と『細胞質』を確認する(下図)
4)一番上に、細胞らしきものを書く
「みなさん、先生が書いた『これ』は何ですか? 細胞。おしい! 細胞なんですが、もっと正確に言うと、・・・細胞の輪郭ではなくて、・・・、その通り。細胞膜です。2年生で学習しましたが、これは、細胞の内側と外側をわける膜で、必要なものを取り入れ、不要なものを排出することができるすごい膜です」
5)細胞膜の内側に、核を書き、4)同様考えさせる
6)細胞質を、4)同様考えさせる
7)核について、代表生徒に説明させる
上:上記1)〜7)までの板書8)前期のスケッチを書く(下図)
9)核が染色体になる時期=前期、であることをまとめる
ポイント:生徒の理解度に合わせ、核と染色体の違い(後述)をおさえる10)中期のスケッチを書く(下図)
11)染色体が中央に並ぶ時期=中期、であることをまとめる
ポイント:同じ染色体どうし(相同染色体、後述)で並ぶことを教える
※必要に応じて、教科書や資料集を使うこと12)後期のスケッチを書く(下図)
13)染色体が2つに分かれる時期=後期、であることをまとめる14)終期のスケッチを書く(下図)
15)染色体が核に戻る時期=終期、であることをまとめる
16)核分裂の終了と並行して、細胞質分裂がはじまることを教える
17)細胞質分裂は、動物と植物で違う理由について、考えさせる
「染色体が核に戻ることで、核分裂は終了しますが、これと並行して、細胞質分裂がはじまります。細胞質には細胞が生きていくために必要な水溶性の物質ですが、実は、液体だけでなく、ミトコンドリアやリボソームなどいろいろな構造物、植物なら葉緑体も2つに分ける必要があります。これらは核のように完璧に2等分する必要はありませんが、とりあえず、分ける必要があります」
「さて、これらの分け方ですが、動物と植物で違います。その違いを説明できる人はいませんか? 塾で習ったり家庭で予習したりしてきた人はいませんか? ・・・(A君が正しく説明する)・・・A君、ありがとうございます。完璧ですね。動物細胞は柔らかいので、周りから『くびれる』ようにして分かれることができます。しかし、植物細胞は硬い細胞壁があるので、内部に『しきり板』といわれる硬い壁、将来、細胞壁になるものを形成することで2つに分かれていきます」
ポイント:くびれる、という言葉を知らない子どもが多数いるので、先生の首で説明すること
上:上記17)までの板書18)娘細胞のスケッチを書く(下図)
19)娘細胞が大きくなり、もとの大きさになることを書く
上:上記19)までの板書
上2枚:別クラスでの板書指導上のポイント
細胞分裂は『核分裂』と『細胞質分裂』にわけて考えることができます。初めに核分裂、続いて細胞質分裂が行われます。中学生では、細胞質分裂の違いによって動物と植物を分けます。
補足説明:核と染色体を区別しよう!
細胞分裂は、核分裂と細胞質分裂の2つに分けられますが、重要なのは核分裂です。
核は細胞の中心というより、その生物の設計図(遺伝情報)というべきものです。核に含まれる設計図(情報)は、同じ1個体の生物の細胞なら全て同じです。例えば、あなたの脳細胞と筋肉細胞にある設計図(情報)は完全に同じです。あなたのからだは約40兆個※の細胞からできていますが、そららの細胞1つひとつに、あなたの全身をつくる設計図(情報)が含まれています。
核は、細胞分裂において正確に二等分されなければいけません。そのため、核は分裂前に、『染色体』といわれる特別な形に変形します。染色体は、膨大な設計図(情報)をコンパクトにまとめたもの、と考えれば良いでしょう。染色体はまとめられた状態なので、一時的にタンパク質合成ができない状態にあります。
この染色体の数は、生物の種類によって決まっています。タマネギは16本、ヒトは46本、チンパンジーは48本です。数は多ければ良い、というものではありません。また、調べればわかることですが、ヒトと同じ46本の生物は地球上にたくさん存在していると思います。
次に、相同染色体という言葉を紹介します。
染色体を二等分するためには当然、同じ染色体を2つずつ用意しなければなりません。分裂前に用意された、同じ染色体どうしを『相同染色体』といいます。
したがって、タマネギは8種類、ヒトは23種類、チンパンジーは24種類の染色体がある、と考えることもできます。ヒトの場合、染色体は46本ですが、同じものが2本ずつあるので、23本(種類)×2=46本、となります。
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細胞分裂をしていない時期を『間期(かんき)』といいます。名前は間期ですが、実はこれが細胞のいつもの状態で、ほとんどの細胞は間期です。
間期の核は、決まった形がなく、自由に動き回るようにしてタンパク質合成の命令を出しています。設計図としての仕事をしています。核=DNA=遺伝子、と考えても良いでしょう。とにかく、タンパク質合成のために忙しく働いている様子をイメージしてください。
これに対して、細胞分裂中の染色体は働いていません。細胞分裂で二等分されるためにつくられた特別なカチコチの『物体』というべきものです。
※2013年より、37兆個と記述するものが増えてきました
さらに詳しく知りたい方→ 染色体を数える(3)細胞分裂の目的(2分)
前時でもまとめましたが、細胞分裂の目的を簡単に確認します。
上:細胞分裂の目的(4)顕微鏡を使った演示観察
教師用顕微鏡を40インチモニターにつなぎ、顕微鏡の市販プレパラートを載せて操作します。操作しながら、観察の手順・ポイントを解説します。本時は普通教室で行いましたが、理科室で行う場合も、同じように先生が演示操作してください。ポイントは、初めに準備しすぎないことです。生徒の目の前で、電源を入れ、プレパラートを載せてください。操作はできるだけ失敗しないほうが良いですが、失敗しても大丈夫です。子どもたちは先生よりもたくさんの失敗をするものです。成功したことも失敗したこともすべて言葉にしながら操作を演示することで、生徒たちは失敗の解決策を学んでいきます。
上2枚:モニターには違う部位が写っている具体的な観察のポイントは、次ページ『観察2-2 細胞分裂』をご覧ください。
(5)本時の感想、考察 (5分)
授業を終えて
授業後、テレビモニターの画面で十分に区別できないかった生徒は、前に集まるように呼びかけました。集まった生徒は各スラス5、6人で、いずれも教室後部の座席でした。プレパラートを動かしながら、授業と同じような説明をすると、「近くだとよくわかる」「わかった」と満足げな声を聞かせてくれたので、次回は大いに期待できる1時間になると思います。
関連ページ
3年(2004年)観察5 細胞分裂(市販プレパラートの観察)、観察6 細胞分裂2
3年(2001年)細胞分裂、観察3 細胞分裂、観察3.2 細胞分裂
3年(1998年)観察3 細胞分裂
→ 染色体を数える実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学』
第1章 生命とは何か 顕微鏡を使うときのポイント p.21 科学的スケッチの書き方 p.22 第2章
細胞の構造とはたらき自分を大きくするため、
新しくするための細胞分裂p.28-29 ヒヤシンスの細胞分裂 p.30-31
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