このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第33時
観察2-2 細胞分裂(実習)

     2018 7 11(水)、12(木)、13(金)
     第1理科室

はじめに
 事前にしっかり解説しておいたので、ほぼ全員、細胞分裂を観察することができました。

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3年(2001年)細胞分裂観察3 細胞分裂観察3.2 細胞分裂
3年(1998年)観察3 細胞分裂
→ 染色体を数える


上:実習の様子( 分裂中の細胞を見つけ、挙手して点検を待つ)


本時の目標
・顕微鏡の使い方を確認し、正しく方法で観察する
・染色体の形や位置から、細胞分裂の時期を識別する
・細胞分裂の前期・中期・後期・終期を見つけ、スケッチする

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 光学顕微鏡(1 /人)
  • 細胞分裂のプレパラート(1 /人)
  • 光源装置(1 /班)
  • 合格印

授業の流れ
(1)顕微鏡、光源装置の準備の使い方の確認

 始業前から理科室で待機し、入室してきた生徒から顕微鏡と光源装置を準備するように指示します。プレパラートは配布しません。誤った操作で、プレパラートを破損させないようにするためです。

(2)本時の授業内容の紹介 (1分)
 「今日は1時間、まるまる実習です。内容はすでに紹介したように、細胞分裂の4つの時期を見つけ、それらをスケッチするとです。発見したら先生を呼び、合格印をもらってください。できる人は、顕微鏡の一画面の中に4段階全てを入れてください。一度で合格印4個もらます。実は、先生も大変助かります。一度に1個の合格印しかだせないと、1人につき4回点検することになるので、39人×4回で、156回点検することになります。どう考えても無理なこと、みなさんが手を挙げ続けなければいけないことは簡単に想像できると思います。ご協力ください。なお、今日はU先生にも手伝ってもらいます」

(3)顕微鏡の使い方の確認(10分)
 「プレパラートを配布する前に、顕微鏡の使い方を確認します。まず、顕微鏡を正しい位置に置きなさい。(全員の顕微鏡の位置を見て、間違っている生徒を1人ずつ指摘しながら)そことそことそこ、違います! 顕微鏡は、光源装置の正面にまっすぐ置きなさい」

 「次に、反射鏡で光を入れなさい。はい、入れて! おっと、反射鏡の表と裏、じゃなくて、反射鏡の平面と凹面(おうめん)の区別ができない人がいます。初めはどちらでしたか? ・・・ おや、誰も答えてくれませんが、正解は・・・、A君正解です! 平面です。平面鏡を使ってください。平面鏡と凹面鏡を忘れた人が多いようなので、黒板に書いておきます(下図)。必要な人は書いてもいいですが、今日は時間がないので、先生の説明を聞きながら顕微鏡を触ること、正しくセットすることを優先させてください」


上:反射鏡の構造、使う倍率、順序を示した板書

 「おっと、光を入れる前に、しておかなければいけないことがありました。絞り板を全開にすることです。絞り板をまわして、全開にしてください。はい、どうぞ! 絞り板って何か、わからない人は手をあげてください。・・・(10人ぐらい挙手する)・・・あー、残念ですね。周りの友だちに教えてもらってください。これが開いていないと、光が十分にはいりません。それから、絞り板がうまく使える人は上級者で、今回は染色体の状態をよく識別できることになりますが、その仕組みを説明すると時間がかかるので、今回は、しぼりを絞って暗くするとピントが深くなる(良くなる)、という結果だけを黒板にまとめておきます(下図)


上:絞り板の番号、明るさ、ピントの深さを示した板書

 「さらに、光を入れる前に確認しなければいけないことがありました。接眼レンズと対物レンズです。みなさんの接眼レンズは15倍になっているはずですが、大丈夫ですか? (生徒の反応を確かめてから)全員15倍になっているようですね。次に、対物レンズは何倍になっていますか? 正解は、7倍です。一番低い倍率から始めるので、一番短いレンズにしてください。7倍のはずです。対物レンズを変えるときは、レンズを持つのではなく、レボルバーを持って回してください。セットできた人は、もう一度接眼レンズをのぞき、光が入っているか確認してください。十分な光が入っているなら、完璧です。プレパラートを載せれば、必ず見えます。ピントを合わせる必要がありますが、ピント合わせは、光を入れたりコントロールすることより100倍簡単です」

 これ以降の顕微鏡の使い方については、別ページ『光学顕微鏡の使い方』をご覧ください。

(4)プレパラート配布(1分)
 準備室にあるプレパラートは 約50枚でした。生徒数より多いので、ゆとりをもって配布できます。

 「光を十分に入れ、プレパラートを載せるだけで観察できる状態になった人から、プレパラートを取りに来なさい。プレパラートは1人1枚以上あります。もし、初めに観察したプレパラートが良くないなら交換可能です。交換するときは、必ず前のプレパラートを返却してください。2枚持っていくことは禁止です」

 「プレパラートには、当たり外れがあります。当たりのプレパラートは分裂中の細胞がたくさんあり、最高の場合、一画面の中に前中後終、4段階すべての細胞を入れることができます。逆に、外れの場合、ほとんど分裂していません。外れだと思う人は、すぐに他のプレパラートに交換した方が良いでしょう」

(5)生徒実習(30分〜35分)
 初めは、低倍率(接眼レンズ15倍×対物レンズ4倍=60倍)で観察します。そして、前時に学習した『成長点』を探します。 成長点は、根冠の内側にある部分です。目が慣れてくると、60倍でも細胞分裂中の細胞とそうでないものを見分けられるようになります。

 成長点を見つけたら、それが画面中央になるようにプレパラートを動かします。中央になったら、レボルバーを回し、対物レンズの倍率を10倍に上げます(接眼レンズ15倍×対物レンズ10倍=150倍)。そして、ピントを合わせますが、横から見て動く量は1mm以内です。それ以上動かさなければいけない顕微鏡は、壊れていると考えてください。

 150倍でピントがあったら、プレパラートをゆっくり動かし、分裂中の細胞が中央に見えるようにします。中央に移動させたら、前と同様、レボルバーを回して対物レンズを40倍にします(接眼レンズ15倍×対物レンズ40倍=600倍)。600倍になると画面が暗くなるので、反射鏡を反転させ、凹面鏡にします。光を一点に集めることができるので、画面が明るくなると思います。そして、ピントを合わてください。もし、ピントが合いにくいようなら、絞り板で『光が入る部分』を小さくします。光量が減り、画面は暗くなりますが、ピントは深くなります。ピントが深くなるとは、ピントが合う範囲が広くなることを意味します。ピントが合う範囲は上下左右ではありません。奥行きです。つまり、手前から奥までのピントが合うようになります。これは、目の悪い人が目を細めて見るのと同じです。あなたが私と同じように視力が弱いなら、今すぐ確かめることができます。この画面から目を離し、できるだけ遠くを見てください。そして、目を細めてみましょう。ほら、ピントがよくなったことを確認できたと思います。これと同じ原理です。

 このようにして、最高倍率600倍で前期・中期・後期・終期の細胞を探します。

段階 名 称

特 徴
・観察のポイント

1 通 常
(間期)

とくになし(たくさんある)
・核は丸く、よく染って濃い
・ほとんどの細胞はこの状態
・成長点を観察しても、大半はこの状態
・細胞分裂をする細胞は、だんだん大きくなる
・根幹細胞は細長いものが多い

2 細胞分裂
前 期

核が染色体になる(核分裂の開始)
・染色体は糸、紐、点などいろいろな形状がある
・核のように、全体が赤く染まることはない
・染色体は内部まで染まらず、薄い
・比較的、簡単に見つかる!

3 細胞分裂
中 期
染色体が、中央部に並ぶ
・よく見ると、同じ形をした相同染色体がセットになっている
・真横から見ると『中央に並んでいる』ように見えるが、
・正面からみると、わからない(前期のように見える)
・相同染色体は背中合わせに並んでいるように見える!
・真横でないものは不明瞭なので、ほぼ不合格!
4 細胞分裂
後 期
染色体が、2つに分かれる
・真横から見ると『2つに分かれる』様子がわかるが、
・正面から見ると、わからない
・真横でないものは不合格になりやすい!
5 細胞分裂
終 期
染色体が核に戻る(核分裂の終了)
細胞質が2つに分かれる(細胞質分裂)
 動物:細胞膜がくびれる
 植物:中央に『しきり板(細胞壁)』が形成される
 タマネギの場合、『しきり板』の有無で判断する
6 2つの
嬢細胞

とくになし(同じ形、小さな細胞が2つセットになっている
・核は、染色液によく染っている
・細胞の大きさは、まわりの細胞と比較する

(6)本時の感想、考察 (5分)
 5分で4段階見つけてしまった生徒は、それぞれをスケッチします。スケッチのポイントについては、別ページ『』をご覧ください。


授業を終えて
 早い生徒は3分で挙手します。そして、わずか10分で細胞分裂の4つの段階を見つけてしまいます。今回はU先生に助けてもらいましたが、次は早くできた生徒に助けてもらう方法もありだ、と思います。

 それから、子どもたちの命を守るために実習を行った理科室の温度を記録しておきます。気象台が発表した最高気温は11(水)35℃、12(木)34℃、13(金)34℃でした。また、朝8時15分の理科室廊下は閉め切った状態から窓を開けて間もないので、連日35℃以上です。したがって、理科室は熱を帯びた床・壁・天井、および、運動場の照り返しにより、1時間目から最高気温より少なくとも5℃高くなります。理科室にクーラーはありません。今回の顕微鏡実習は窓を開けたり、扇風機を回わしたりすることができますが、子どもたちの命を守るため、理科室にクーラーを設置してください。あるいは、夏季休業を夏至(2018年6月21日)から彼岸(2018年9月20日)までに延長してください。これは命、安全、危機管理の問題です。

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3年(1998年)観察3 細胞分裂
→ 染色体を数える

光学顕微鏡の使い方(若手教師のためのワンポイント・レッスン)
科学的なスケッチの描き方
(若手教師のためのワンポイント・レッスン)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学

第1章 生命とは何か  顕微鏡を使うときのポイント p.21
 科学的スケッチの書き方 p.22
第2章
細胞の構造とはたらき
 自分を大きくするため、
新しくするための細胞分裂
p.28-29
 ヒヤシンスの細胞分裂 p.30-31

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