Home 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)

第86時
観測11 88星座と黄道12星座

     2019 1 8(火)、9(水)
     普通教室

はじめに
 14年前の記録『観察10 黄道12星座 3年(2004年)』を読むと、 へびつかい座を入れた星座占いが流行していました。血液型占い、その他の占いも流行っていたと思います。その結果、星や星座に対する生徒たちの興味関心は高かったようです。当時の私は、占いに騙さない大人になるように、と頑張っていました。

 今年度の調査では、子どもたちの間に占いは流行っていません。流行っているように感じるのは昔の若者、といえそうです。最近はネットから溢れ出る低俗・脳を異常に興奮させる・操作された情報で、占いよりも撹乱されている、と思います。

 星に関する興味は廃れてしまった、と感じる今日この頃ですが、星を満足に見たことも感動したこともない生徒たちを相手に、がんばって、黄道12星座の学習をしたいと思います。

 他教科・他分野においても、知識や理解や技能や考え方より、それらを自分のものにしたいという欲望を育てることの方が重要、だと思います。とくに、日本の子どもは(大人もそうですが)、黙って立場が上の人の言うことを聞く人になり下がっているように思います。星が見たい! と叫び、行動できるように育るべきだ、思います。


図1:教科書の図を見て、黄道12星座をスケッチする様子


本時の目標
・宇宙には、88星座があることを知る
・それらのうち太陽と重なる12星座を、黄道12星座ということを理解する
・自分の誕生月の星座(星占い)は、誕生日に太陽と重なって見えないことを理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)88星座と黄道12星座の紹介 (15分〜20分)
 今でも条件が良いところでは、地上から約6000個の星を肉眼で見られるそうです。世界100カ国を歩いた私は体感したはずですが、遠い記憶になってしまい、その体験談を熱く語れなくなりました。再び奮起し、さらに辺境の土地を歩かなければいけない、と感じます。自然で感動したことを人から人へ伝えることこそ、人類の使命ではないかと思う今日この頃です。


図2:初めにまとめること

星座に関する小話
 世界の国々は、それぞれ星に関する物語をもっています。古代日本に
も様々な星に関する話があったのではないか思います。しかし、天文学
が発達してくると、星の住所が必要となり、世界中の天文学者が集まっ
て88星座を制定しました。
 以下は 『観察10 黄道12星座 3年(2004年)』の抜粋です。

5000年前 メソポタミア地方(現在のイラク)のバビロニアの羊飼い達

     という説は間違っているらしいのですが、詳細は各自でお調
      べ下さい。
3000年前 ギリシャやローマに伝わり、現在のようなロマン溢れる星座
     の伝説や神話ができた。
1922年 国際天文同盟(現在の国際天文学連合)が星座の問題に着手
1928年 88星座にする案を総会で可決
1930年 出版

 ここで、日本の星座にまつわる話をしても良いと思います。興味ある生徒に話をしてもらったり、社会や国語の授業をリンクできたりすれば最高なのですが、、、

(3)88星座と黄道12星座を書く(20分〜25分)
 星座を形作るのは、6000個の星です。その星までの距離は、地球レベルでは非常の遠いものですが、銀河レベルでは微々たるものです。図3は『観測8 宇宙のおける私の住所』で学習済みです。


図3:天の川銀河における地球の位置、および、88星座をつくる星の範囲

 図3を確認してから、学習プリントいっぱいに星を6000個ではなくて、60個程度書かせます。星はあらゆる方向ににみえます。北方向に『北極星(こぐま座)』『おおぐま座』『カシオペア座』、南方向に『南十字星(サザンクロス)』を書かせると良いでしょう。ただし、それらの名前は聞いたことがあっても、形を知らなかったり位置関係を知らなかったり、書ける生徒はほぼゼロです。

 学習プリントの周辺部に星を書いたら、黄道12星座をスケッチさせます。所要時間は10分前後です。生徒にとって初めての作業なので、時間を確保してください。


図4:黄道12星座と四季の星座

 黄道12星座を書くことができたら、四季の星座を書かせます。なお、図4・図5の地球の位置(春夏秋冬)と季節の星座の位置が不整合です。このあたりの表現はかなり微妙です。なぜなら、季節の区分は明確ではなく、春について考えると、立春は2月4日、春分は3月21日頃です。天文学における春は『春分から夏至まで』ですが、3月〜5月、あるいは、4月〜6月、とする場合もあります。

(4)本時の感想、考察 (5分)


図5:Pさんの学習プリント(クリックすると拡大します)


図6:Qさんの学習プリント(クリックすると拡大します)


授業を終えて
 星占いブームが去り、ではなくて、世界的な光害で星が見えなくなり、でしょうか。星を絶滅させた人類は、星を忘れたのでしょうか。

 2019年1月、中国が月の裏側を撮影し、世界を驚かせました。月の鉱物資源、所有権を狙っているとの話もありますが、そのような噂話に花が咲くようでは人類はおしまい、と私は感じています。


図7:私の誕生日(誕生月)に『やぎ座』は見えないことを説明する私

 人類は小さく無力ですが、無限の知的探究心があります。星に感動できる力と心があります。太陽の光で溢れた真昼の空に、無数の星が輝いていることを想像できる力があります。眩しい太陽の背後で輝く今日の星座(1月9日はやぎ座)を思い、私は自分の星が瞬いていることを嬉しく思い、元気に仕事しています。そんな大人になって欲しいなあ、と思うからです。


図8:季節による星座の見え方まで教えようとした学級の板書


図9:同上

 今回は図8、図9のように季節の見え方まで教えることはできませんでした。これは生徒や私が原因ではなく、日本社会全体が星(星占い)に興味を失った結果です。次回がんばります。新しい自作プリントで、楽しみたいと思います。

参考・関連ページ
観察10 黄道12星座 3年(2004年)
黄道12星座 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地学

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地球の時間と方位(天の北極から見た図1)

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の見え方(天の北極から見た図2)
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