このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第2時
実習2 時間とは何か 

     2018 4 19(木)、20(金)
     普通教室

はじめに
 前時は距離について考えましたが、今日は時間について考察します。時間とは何か。これはかなりの難問で、私の唐突な発問に誰も答えてくれないのではないかと心配していましたが、じわじわと面白い答えが出てきました。導入のポイントは、子どもの何げないつぶやきを拾い上げることです。


上:時間の単位変換をする生徒


本時の目標
・時間について思いを馳せ、深く考察する
・時間の基本単位がメートルであることを知る
・時間の単位変換ができるようにする
・距離と時間から、いろいろな世界ができることを理解する

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 問題集
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日は、はじめに時間とは何か、について考えてもらいます。みなさんからいろいろな考えが出れば15分、出なければ5分ほどで終了です。その後、小学生でもできる時間の単位変換の練習をします。ここまでが授業前半です。授業後半は、学習プリントの右側になりますが、ここでは前回学習した距離、そして今日学習する時間の2つを使っていろいろな世界を作ります。2次元や立体空間、4次元なの世界について紹介します。うまく進めば、約40分ぐらいで終了するので、その後は自由なまとめ時間になります」

(2) 時間とは何か (5分〜15分)
 「それではさっそく時間について考えてみましょう。時間は、今ここに存在しているようですが、一体時間とは何なのでしょう。この問題はとても難しい問題です。もし、誰もが完全になっとくできるように説明できたなら、あなたは天才の仲間入りでしょう。ではでは、時間とは何か、誰か教えてくれませんか」

誰も答えないようなら、いつも面白い考えを出してくれるA君を指名して
  「ねえ、A君。A君にとって時間って何?」

Bさんが近くの友だちと話ているようなら
  「ねえ、Bさん。まだ考えはまとまっていないと思うけれど、今Cさんとどんなことを話していたのか教えてもらえますか?」

 以下は3つのクラスから出た時間に関する考えです。一番はじめにあるA君の考えは「すぐに眠くなるもの」ですが、これを否定することなく取り上げることで、意外性のある面白い答えが出てくるようになります。考えの多くは科学的ではないと思いますが、物理学は哲学と近い学問であることを考えれば、子どもたちの自由な発想を伸ばすことが本物の科学的思考力を高めること、強いては人類の文化レベルを高めることにつながります。

 
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 私からの時間に関するまとめは、上の板書にあるように『時間は1本の矢にたとえられる』です。時間は止まることなく、つねに一定の方向、過去から未来へ向かって進んでいきます。過去は記録しておけば何があったのかわかります(?)が、未来はわかりません。

(3) 時間の単位 (5分)
 時間にはいろいろな単位があります。秒、分、時・・・、などです。これらのうち、時間の基本単位は『秒(s)』です。しっかり押さえておきたいことは時間(Time、タイム)と時(hour、アワー)の違い、各単位の英語表記と読み方です。以下に、あるクラスでの板書例を示しました。


上:時間の単位に関する板書

(4) 時間の単位変換 (10分)
 「時間の基本単位は秒ですが、1分は何秒でしょう? ・・・ はいはいはい、みなさんが答えてくれた通り60秒です。が、なぜ1分=60秒なのか、誰が決めたのか考えると面白いのですが、それはさておいて、次は時間の単位変換の練習をします。学習プリントを見てください。表が印刷してあります。1分の欄に、60秒と書きなさい。これで終わりです。すぐ次に第2問! 1時間は何分でしょう? その通り! 60分です。表に書きなさい。では、その隣に60分は何秒か書きなさい。おっと静かに! しゃべらないで! 考えている人もいるので、黙って答えを書いてください。書き方がわかったひとは、表をすべて埋めなさい」

 「では、わからな人のために計算方法を紹介します。1時間は60分です。1分は60秒なので、・・・言いますよ。よく聞いていてください。1時間の中には60分、60分はつまり、60秒からできた1分が60個ある、ということなので、60秒を60倍すれば1時間が何秒かわかります。したがって、計算式は60秒の60倍、60秒×60で、答えは・・・、3600秒になります」


上:時間の単位変換の表

 「ここで表が完成した人、完璧に計算できた人にボーナスポイントを差し上げます。チャレンジしたい人は、先生に見せに来てください。チャンスは一度です。先着10人ぐらいにします。・・・(見せにきた生徒に対して)プリントを先生の机の上に出して、ここで待っていてください。もう少し出てくる人を待ちます。・・・(後から持ってきた生徒に対して)プリントを置いて、待っていてください。・・・(5,6人持って来たところで)では、今、席を立っている人で締め切りにします。チャレンジしたい人は、カウント3秒以内に立ってください。3、2、1、終了! では、今立っている人を持って来てください。(全員のプリントを机に並べ、正解者のプリントだけに評価『A』を記入して)はい、お疲れさでした。自分のプリントを持って行ってください。その後、正解を黒板に書いて、全員に確認する(写真上)


上:時間の単位変換のための計算をするB君

以下に、ここまでの板書を示します。

上:D組の板書(クリックすると拡大します)


上:E組の板書(クリックすると拡大します)

(5) 長さを時間でつくる世界(10分〜20分)
 ここから授業後半になります。当初の予定は20分程度使う予定でしたが、子どもたちが想像以上につかれていたので、さらっと行うことにしました。もともと教科書にない内容なので、わかりやすく&面白く説明することにしました。


上:F組の板書

 「授業後半はmとsでつくる世界です。さてと、mって何か分かりますか? mは分、ではありません。mはミュイッ、ではありません。mは前の時間に学習したものです。そうです! mはメートル、長さの単位です。そして、sは何か分かりますか。そうですね。今学習したばかりの時間の単位、秒、セカンドです」

 「まず、m、メートルは長さ、あるいは、距離を表していましたが、では、mとmをかけると何ができるでしょう? 長さと長さを掛けます。小学校でならったことですよ。縦かける横、と考えれば・・・、そうですね。面積です。長さ×長さ=面積、です。数学では、mの二乗といいます」

 「面積に、もう一回長さをかけると何になるでしょう? その通り! 体積になります。これは縦×横に、高さをかけることになります。mの三乗、として表すことができます。これは私たちが生活している空間で、3次元、3次元空間といいます。(黒板の前を横に動きながら)ほら、先生は横に動いたり、あるいは、(子どもの机の方に向かってどんどん歩きながら)前後に動いたり、まあ、これは君たちから奥行きと言えると思いますが、あるいは、(しゃがんでから、ジャンプして)上下に動くことできます。先生もみなさんも、m三乗の世界、3次元空間に住んでいます」

 「ということは、先ほどのm二乗の世界は、2次元、になりますが、みなさんの中で3次元より2次元が好きな人はいませんか! おっと、いますね。アニメやゲームの世界は2次元のものが多いですね。先生は写真や絵画が好きなので、実は2次元が大好きなのですが、ここでみなさんにアンケート調査です。2次元が好きな人! ・・・ほほう、7人ですか。やっぱり最近は2次元が流行っていますね」

 「さらに、もう1つ前に戻ります。m(メートル)、1つだけでつくる世界、mだけの世界は1次元、線、ということになります。が、もしかして、1次元が好きな人はいますか? ・・・2次元はマニアな世界ですが、1次元となると、かなりマニアな世界感をもった人になると思います」

 「次に、mをもう1回かけてみましょう。3次元にもう1回mをかけるのですが、そうすると、4次元の世界ができあがります。この4次元は、空間ではありません。空間を超えています。したがって、私たちが住んでいる3次元空間で、4次元の世界を見えるように表現することはできません。数学的には4次元、5次元、6次元のようにいくらでも高い次元、世界をつくることがでますが、視覚化することは不可能です。君たちの中で、3次元以上の世界に興味ある人は、数学者になって研究してみてください」

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 「次に、時間の単位sで世界を作ってみましょう。s×sは何かわかりますか? ・・・これについては、先生もわかりません。しっかり調べればわかるかもしれませんが、ごめんなさい。今の先生にはわかりません。興味ある人は、調べて先生やみんなに教えてください。。同じように、s三乗についてもわからないので、sだけでつくる世界はここまでにします」

 「いよいよ、今日の授業も残すところ3分ほどになりました。気合を入れてください。いきますよ。mとsで作る世界、m÷sは何ですか? ・・・小学校5年生で習います。・・・その通り、速さです。速さについては、次の時間、1時間つかて復習します。小学校で落ちこぼれてしまった人もいると思うので、1時間だけ復習しますね。ではでは、ラスト・クエッション! 速さを時間で割ると何になりますか? ・・・これは難問です。人類で初めて、この問題について数学的にきちんと説明した人は、400年前の天才、ニュートンです。これは、時間によって速さが変わっていく、ということなのですが、・・・ リンゴが単純に落ちるだけではなくて、どんどん速く落下するようになるという、時間とともに速さが変わる、ということなのですが、・・・その通り! A君がつぶやきましたね。みなさんも聞いたことがある言葉だと思います。正解は、・・・加速度です。加速度については、前の教科書では中学3年生で学習しましたが、今はしません。ただし、数学では中学3年生で『放物線』や『二次関数』というものを学びますが、理科で『加速度』について学んでおくと、かなり理解しやくなると思いますので、私の授業では実験もしながら学習します。数学は、もともと自然現象を説明するために生まれた学問だからです。テスト範囲を終えたら、リンゴを落とす実験、フリーフォールの実験で、どんどん加速していく物体の動きをグラフ化します。とても簡単な実験で、とても面白い結果が出るので楽しみにしていてください!」

(6) 本時の感想、考察 (5分)
 今日は授業を前後半に分けましたが、前半の方が書きやすいと思います。

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資料:G組の板書2枚(上は授業前半、下は授業後半)



授業を終えて
 最近の子どもたちは、2次元の世界をとても身近に感じています。今や、漫画の紙面という2次元の時代を終え、テレビゲーム、スマホやパソコンの画面など、 デジタルの2次元世界を存分に楽しんでいるようです。中には遊び過ぎてしまい、現実世界とバーチャル世界の区別ができなくなっている子ども見受けられます。

 私はリアルな3次元空間で遊んで欲しい、実体験をして積んで欲しいと思っているのですが、時代はどんどんバーチャル化していくように思います。私は時代に逆行しようとも、実際の自然を観察したり実験をしたり、実体験を積ませることが理科教師の使命だと信じています。

参考・関連ページ
理科で使う単位(単位を10の乗数倍する語)2004年度
国際単位系(SI)
物理単位
単位の接頭語
単位の換算

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
第1章 量と単位   単位には意味がある p.8
 国際単位系(SI単位系) p.8
第3章
ニュートンの運動の3法則
 時間の矢 p.44

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(C) 2018 Fukuchi Takahiro