このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第4時
実習4 記録タイマーで速さを測ろう!

     2018 4 23(月)、24(火)
     第3学習室  ※ 理科室を譲ったため

はじめに
 3年生になって、初めての実験らしい実験です。私のわくわく感が子どもたちにしっかり伝わっている、ということを感じながら授業を始めました。

関連ページ
導入 運動とは何か?(記録タイマーの基本操作) 2004年


上:2種類の記録タイマー (『導入 運動とは何か?(記録タイマーの基本操作) 2004年』から)

本時の目標
・記録タイマーの原理とその使い方を知る
・手でひっぱる速さを変えながら、記録テープをひく
・記録テープを正く処理、グラフ化する
・グラフから手を動かした速さを解析する
・(グラフにある一定時間の速さ、を求める)

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • はさみ
  • のり
  • 定規
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 記録タイマー (1 /班)
  • 記録テープ(70cm /人)

授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日は実験をやります。とても簡単ですが、先生の話をよく聞いて、いい感じに実験してください。とても気持ちいい結果ができると思います」

(2)記録タイマーの紹介 (5分〜8分)
 「じゃーん、これをみてください。(記録タイマーをみんなに見せて)記録タイマーです。どんな装置かというと、ま、みていてください。電源があるので、まず、電源をつないで(タイマーのプラグを延長コードに差して)、これは押しボタン・スイッチですが(スイッチを持ち上げて)、押してみましょう。押しますよ! (生徒全員を注目させてから、スイッチ・オン!) ・・・(教室シーン=変化なし)・・・わかりましたか? そうですね、変化なしです。・・・(教室ざわざわ)・・・あれっ、テープを入れてなかった!(と、とぼける)

 「では、どんなテープを入れるかというと、(記録テープをみんなに見せて)このタイマー専用の記録テープを入れます。このテープは入れる方向が決まっていて、遠くの人は見えないと思いますが、タイマーの挿入口に黄色の三角マークがあるので、三角マークの方向に入れてください。近くでみれば誰でもわかります。安心してください」

 「この記録テープは、ただの紙テープではありません。電流が流れる物質が表面に塗ってあり、電流が流れるとその表面が焦げて黒くなるようになっています。感熱紙、のようなものです。それほど高価なものではないように見えますが、これ一巻きで700円ほどします。学校の教材はぼったくりのようですが、他に買う人がいないのでしたないですね。今日は一巻き使いますが、「先生、失敗したからもう1本ください」という人が全員になると、もう一巻き必要になりますので、みなさん、失敗しないようにご協力をお願いします」

 「では、テープを入れて、もう一度スイッチを押しますよ。(テープを入れて、スイッチ・オン!) ほら、わかった?! そうです。小さな音がするでしょ。(大きな動作でスイッチを押したり離したりする)音が聞こえる人、手を挙げてください。あれ、前の方の人しかわからないようですね。とても小さな音だから仕方ないと思いますが、もう一度スイッチを押しますよ。とても小さなジジジジジジ、という音がします。耳を澄ましてください。(全員が耳を澄ましたら、何度か、大きな動作でスイッチを押したり離したりする)わかった人! ・・・おおお、ずいぶんたくさんの人が聞こえたようですが、まだわからない人がいますね。次でラストチャンスとしますが、今度は記録テープを手で引っ張って動かします。すると、音が大きくなるので、おそらく全員、一番後ろの席の人もわかると思います。では、やってみます。・・・(中略)・・・

 「このジジジジジという音は、実は1秒間に60回鳴っています。2年生で学習しましたが、家庭の電気は交流といって、プラスマイナスが入れかわるものでしたが、名古屋は1秒間に何回入れ替わるのか、覚えていますか? ・・・その通り、60回です。だから、この記録タイマーは1秒間に60回打点します。テープを見ると、焦げが黒い点がたくさんついていますが、テープを引っ張る速さで点の間隔が変わります。(ここで、最前列のA君に記録テープを見せると、A君が「本当だ!」とつぶやきます! 本当です)もちろん、早く引っ張れば、打点の間隔は広くなりますか、それとも、狭くなりますか? ・・・当たり前ですね。早く引っ張れば打点の間隔は広くなります。ゆっくり引っ張れば打点の間隔は狭くなり、テープを動かさなければ、打点は同じところを何度も打つことになるので真っ黒になって、穴があきます。実は、テープを動かさないと壊れてしまうこともあるので、スイッチを押したら、テープは必ず動かすようにしてください」


上:記録タイマーをまとめた板書

ワンポイント
(1)
記録タイマーに、ヘルツ変更ボタンがある場合
 60ヘルツの他に30ヘルツと120ヘルツの打点音を聞かせてください。子どもたちは、感覚的に記録タイマーが打点していることを実感します。
(2)記録テープに匂いを嗅がせる
 前の席の子どもから、「くさい!」という声が聞こえたらチャンスです。くさい匂いを嗅ぎたいという子どもが出てくると思いますので、匂いを嗅がせてあげてください。テープが焦げることがよくわかると同時に、スイッチを押したらテープを動かさなければ危険であることが実感できます。

(3)記録テープの処理方法 (5分〜8分)
 次に、打点された記録テープの処理方法を説明します。下の板書をみてください。まず、赤いチョークで記録テープを黒板の端から端まで書きます。下の写真は右端が切れてしまっていますが、授業では全長5mになっています。テープの準備ができたら、白チョークを手に持ち、記録タイマーになりきって打点を開始します。


上:赤チョークで記録テープを準備

 「(ほぼ全力でチョークを黒板に打ちつけ、激しい音を出しながら)本当は、記録タイマーは1秒間に60回打点しているのですが、先生はこれが限界です。(ふー、と息を吐いてがっくりのポーズ。そして、復活)が、みなさんのために全力で打点します」

 「さて、本当は記録テープを動かしたいのですが、黒板に書いたテープは動かすことができないので、先生が打点しながら動くことにします。先生の打点間隔は一定です。間隔、すなわち、打点する速さは変えませんが、先生が動く、歩く速さを変えます。はじめはゆっくりですが、だんだん早く、最後に走ります。とても大変なので、1回しかやりません。よく見ていてください」


上:打点した後の記録テープ

実演、打点するポイント
(1)記録タイマーになりきる
(2)スイッチオン! と叫んでから打点する
(3)テープ動かします! と叫んでから、ゆっくり歩き始める
 →この時、手首だけを動かし、肩・肘は動かさないように固定する
 →からだ全体を動かすようにする
(4)歩く速さを、だんだん速くする
(5)最後は駆け抜ける
 →最後にチョークや指が折れないようにする

 次に、1打点ごとに番号をつけていきます。

 ここでのポイントは、一番はじめの基準をどこにするか、です。理想的な実験、つまり、スイッチ・オンと同時に記録テープが動き始めた場合は問題ありません。しかし、多くの場合、スタートがうまくできません。スイッチが遅ければ、はじめの記録が失われます。スイッチが早ければ、はじめが真っ黒になります。実際、子どもたちの多くは、スイッチを押してからぼやぼやしているので、スタート地点がわからず、番号がつけることができなくなっています。

 「次に、1打点ごとに番号をつけていきます。もし、理想的な実験ができたなら問題ありませんが、君たちの多くはスタートを失敗して、真っ黒になっています。その場合は、打点が数えられるところからにしましょう。真っ黒な部分や、細かすぎて打点が重なって区別できないところは切り捨ててください」


上:基準『0』をつくり、打点に番号をつけたもの

(4)記録テープのまとめ (3分)
 写真下のように、記録テープを引っ張る速さと打点の間隔の関係をまとめておきます。ごく簡単にまとめることがポイントです。今日の目的は記録タイマーの原理、基本操作の習得だからです。このいちばん大切な目標が達成できたら、60打点で1秒(6打点で0.1秒)であること、テープの長さから速さを求められることを教えます。


上:記録テープを引っ張る速さと打点の間隔の関係

(5)実験方法の説明:テープの動かし方 (5分〜8分)
 記録テープ70cmを全員に配布します。そして、テープを引っ張る速さを教えます。理想的な速さは、しゅうううっ、て感じです。だんだん速くするものです。あなたが理科の先生なら、理科室で何度か予備実験をしてください。感覚がつかめるまで5•6回やれば、理想的なしゅうううっ、がわかると思います。これができるようになったら、しゅううっ・しゅー・うっっ、を練習してください。これは速くしていったものを途中から遅くして、最後にかなり大きく加速するものです。記録テープに打点されたものをみて、いい感じに処理できるか確認してください。以下(6)のようにグラフ化できるなら、合格です。

 先生自身が予備実験で十分にできるようになったら、授業本番で子どもたちに教えます。子どもたちに練習させる方法は以下のとおりです。先生が実演しながら、5•6回繰り返し練習させてください。

テープの引っ張り方を練習させる方法
(1)記録テープ70cmを全員に配布する
(2)テープを利き手ではない方の手の親指と人差し指の2本で持たせる
(3)テープを利き手で引っ張る
(4)引っ張る速度は、しゅうううっ、て感じ
(5)次に、しゅううっ・しゅー・うっっ、て感じで引っ張る
(6)テープが曲がってしまった人は、まっすぐに直す

(6)速さの変化をグラフにする方法、の説明 (5分〜8分)
 下の写真のように、データ処理の手順を説明します。ポイントは前に述べたように、基準となる『0』を作ることです。そこから、6打点ごとにテープを切り、棒グラフになるように貼らせます。 


上:記録テープのデータ処理の手順

記録テープをグラフにする時の注意点
(1)基準を『0』とする
(2)打点と打点の間ではなく、打点(の中央)を切る
(3)6打点ごとに切るとは、0、6、12、18を打点を切ることである
(4)テープは横ではなく、縦に貼る

上:左のテープ番号@ABと右のグラフ番号@ABは対応している
(5)テープとテープは、隙間なく貼る
(6)打点は2つずつ記録されるが、 写真下のようにズレている場合は、どちらか一方を無視すること。そして、採用した方の点からまっすぐ下に線を引くこと。そして、その線にそってハサミを入れること。ハサミで切ったテープは、順に貼り、速さの変化のグラフにすること

上:打点がズレている場合の、テープを切る位置

その他、以下の注意を繰り返すこと
(1)記録テープを挿入する方向
(2)スイッチを押したら、すぐに動かすこと
(3)遅すぎると番号がつけられないこと
(4)速すぎると打点間隔が大きくなりすぎること

(7)生徒による実験 & データ処理 (15分〜20分)
 記録タイマーは4人に1台の割合であったので、1台につき、練習用テープを1本ずつ配布しました。これで、代表生徒が練習をして、記録テープに打点されてものをみて、もう一度、各班そろって練習させます。その上で本番を迎えれば、失敗する生徒の割合は5%程度に抑えられます。実験時間は早い班で5分、遅い班で10分ほどです。

 テープができた生徒からテープ処理、グラフ化を行わせます。

(8)自分の手の速さの変化を解析する (3分)
 下図の赤字のように、自分のテープを引っ張った速さの変化を解析させます。


上:棒グラフの高さの変化から、速さの変化を解析する

手の速さの変化の解析
(1)だんだん(ゆっくり•急に)速くなる
(2)ほぼ同じ速さ
(3)だんだん(ゆっくり•急に)遅くなる

(9)本時の感想、考察 (5分)
 (8)の場面で、速さの変化は突然ではなく、連続していることを指摘した。これを理解できた生徒は、1つの棒グラフに前後2つの矢印が重なるように解析、まとめることになる。例えば、だんだん速くなってから連続して遅くなる場合、その中央にあたる棒グラフは、『だんだん速くなる』と『だんだん遅くなる』が重なる。


授業を終えて
 実験はやっぱり楽しいですね。臭い臭いと言いながら、みなさん楽しんでいたようです。

 また、打点の間隔が異常に細かい生徒がいて、「もう1本あげようか?」と提案しても、自分の記録に愛情をもって番号をつけている姿が可愛かったです。

関連ページ
導入 運動とは何か?(記録タイマーの基本操作) 2004年
平均の速さと瞬間の速さ2004年度
記録テープの処理方法2004年度

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第3章
ニュートンの運動の3法則
 速さを記録し、計算する p.48
 斜面を滑り落ちる台車 p.58

第3時 ←
実習3 速さについて復習しよう

→ 第5時
実験5 斜面を滑り落ちる台車
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