このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第5時
実験5 斜面を滑り落ちる台車

     2018 4 25(水) 
     第3学習室  ※ 理科室を譲ったため

はじめに
 本格的な実験です。今回は教室後方にスペースがある学習室を使いました。記録タイマーをつなぐ電源コンセントがないので、延長リールやコードを準備するのは不便でしたが、実験器具の斜面の設置は簡単でした。床は木のフローリングなので、子どもたちは床に座り、リラックスして実験することができていました。


上:斜面を滑り落ちる台車の実験をする様子

関連ページ
実験3 斜面を滑り落ちる台車(等速直線運動)2004年度
実験4 斜面を滑り落ちる台車(テスト)2004年度
物体に働く2つの力(平行四辺形を作図して合力を求める)2004年度
斜面上の物体に働く重力を分解する2004年度
物体が斜面上を滑り落ちようとする力2004年度


本時の目標
・斜面を滑り落ちる台車のようすを、記録テープに記録する
・記録テープを6打点ごとに切り、グラフにする
・グラフが速さの変化を表すことを理解する
・斜面の角度を変え、同じ実験を行う
・急な斜面ほどグラフが急になることを理解する
・各グラフ(6打点ごと)の速さを求める

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • はさみ
  • のり
  • 定規
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 斜面(1 /班)
  • 台車(1 /班)
  • 記録タイマー(1 /班)
  • 記録テープ(1m /人)
  • セロハンテープ(1 /班)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日は、斜面と台車と記録タイマーと記録テープを使った実験をします。早くできた班は、斜面の角度を変えて2回実験することができます。手際の良い人は、ぜひ、斜面の角度を変えた実験もしてください」

(2)斜面を滑り落ちる台車によってできる記録テープ (5分)
 「斜面を滑り落ちる台車は加速していきますから、記録テープの打点の間隔はどうなるかというと、だんだん・・・、だんだんどうなりますか? ・・・そうですね。だんだん、広くなります。前の時間に練習したように、今日も同じように記録テープを6打点ごとに切り、それを順に貼ってグラフを作ります。すると、右肩あがりの階段状のグラフができます。前回と違うことろは、斜面の角度が一定なので、美しい一直線のグラフができることです。失敗するとしたら、それはスタートのところだけです。スイッチを押す前に台車を動かしてしまうと、はじめの記録を失ってしまいます。スタートで台車がひかかっていると、はじめの記録がだらだらして原点を通らなくなります。このようにスタートは失敗しやすいのですが、台車がいったんスタートしてしまえば、後は斜面の横にぶつかったり台車が横から落下したりしない限り、完璧な直線が得られると思います」

 「これができたら、斜面の角度を変えます。前よりも急な斜面にしてみましょう。すると、台車は前よりも加速しますから、グラフは前よりも、・・・前よりもどうなります? ・・・そうですね。急なグラフになります。もう少し正確にいうと、グラフの傾きが大きくなります」


上:なだらかな斜面と急な斜面を滑り落ちる台車の記録

グラフを分析するための赤線
上図のグラフの赤線は、次の手順で示します。
(1)各テープの中央に赤点を打つ
(2)赤点を1本の直線で結ぶように書く
(3)赤線は、原点を通る

 このような赤線を引くためには、各テープの高さ(長さ)を正確に書いておく必要があります。それぞれのテープが同じ長さずつ長くなっていくことはわかると思いますが、ポイントは1本目の長さです。これは、長くなっていく幅の1/2になります。つまり、1本目のテープの長さを0.5、2本目は1.5、3本目は2.5、4本目は3.5、のようにします。これを正しく板書できていないと、赤線は原点を通らなくなります。

 理解できなかった先生のために、別解説をしますと、テープの長さは1本目から順に、 1、3、5、7・・・、のようになります。

 それでもわからない人は、上図グラフをの各テープの増え幅、および、1本目のテープの幅をじっとみてください。各テープの増え幅:1本目のテープの幅=2:1、になっています。

(3)データ処理の方法 (3分)
 前時に、記録テープの練習ができているので、今日はごく簡単な確認で大丈夫です。ポイントはスタートです。スタートはテープを切るときの基準=『0打点め』となることを確認します。


上: データ処理の方法を確認するための板書

(4)斜面の設置 & 台車の転がし方の説明 (5分)
 斜面の設置方法については、各学校にある斜面によって違います。購入したメーカーの説明書をよく読み、正しく設置してください。

 本校にある斜面は、斜度を5度、10度、15度の3段階に変更できるものでしたが、利用時からネジが緩みはじめ、初年度でいくつかを紛失しました。私は、斜面の補修に2時間ほど時間を使いましたが、安い斜面ではなかったので、とほとです。

台車に関する注意点
・台車の上に乗って遊ばないこと
・斜面を滑り終えた台車を、壁に激突させないこと
・斜面を滑らせる前に、近くの班にも声をかけてぶつからないようにすること

記録テープに関する注意点
・失敗してやり直す場合、前より短いテープになること

テスト走行について
・斜面を設置したら、何度か台車を転がしてテスト走行をすること

記録タイマーの設置方法
・記録タイマーは斜面上に固定するか、誰かが確実に抑えること
・斜面に対して平行に固定すること

スタートを成功させる方法
・台車は手で持たないこと
台車にとりつけた記録テープの末端をもつこと
・記録テープは、斜面と平行、まっすぐになるようにすること
・テープの長さは、斜面よりやや短いもの、になること
・記録タイマーのスイッチを押してから、テープの末端を離すこと


上:記録テープの末端を持つ生徒

その他の注意
・自分の記録テープは自己責任となるので、自分で持ち、自分で離すこと
・記録タイマーのスイッチは押し続けること
・記録テープの処理は、各自で行う


上:実験のポイントをまとめた板書

(5)生徒実験:斜面を滑り落ちる台車 (10分〜20分)
 十分な説明をしておけば、子どもたちは教え合いながら楽しく実験を進めることができます。

  .  
 記録タイマーに記録テープを通してから、テープを台車に固定する。順序を逆にすると、記録タイマーの接点が壊れるので注意すること。
 

 記録タイマーはセロハンテープで固定されているが、位置が良くようにみえす。斜面中央になっていない。しかし、その後の台車の様子をみると、斜面の壁面に接触してないので、問題はない。

 

 
 運動を始めた台車
 
 その後の台車

(6)記録テープの処理 (10分〜20分)
 全員の記録が取れた班から、各自の机へもどり、記録テープの処理を始めさせます。


上:テープの処理方法について解説するための板書


上:6打点ごとに切ったテープに、糊をつける生徒

データ処理が速い班、生徒への対応
 実験がはやい班と遅い班は、15分以上の開きが出ます。さらに、データ処理の早い生徒は、すぐにテープを階段状に貼り付け終えてしまうので、斜面の角度を変えて2回目の実験をさせても良いでしょう。

(7)記録テープの分析、考察 (5分)
 1回目の 台車の実験が終わったタイミングを見計らって、記録テープの分析方法を紹介します。2回目の実験をしている生徒は席に戻らせます。

 下図は、階段状に貼りつけられた記録テープです。一見、よくできているように見えますが、本当によいデータなのか分析する必要があります。以下に、分析方法を4段階で解説します。


ステップ1:各テープの中央に赤い点を打つ

ステップ2:テープ後半に着目し、定規を置く

上: 定規を正しく置いたもの
 後半の赤点について、平均的に通るように定規をおく。この時、すべての点を通る必要はないこと、各点を結ぶ折れ線グラフにしてはいけないこと、を教える。
ステップ3:定規にそって、赤線を引く

上:直線を正しく引いたもの

考察方法(その1)
 上のグラフの赤線を見てください。原点を通っていません。これは、スタートがよくなかったことを示しています。一見すると、一番はじめのテープを破棄すれば原点を通るように見えますが、実は違います。はじめの部分をよく見てください。はじめから5つ6つめのテープです。よく見ると、この部分の速度変化(階段の上り方)が少なくなっています。つまり、この部分で台車が壁面にぶつかったりテープがひっかかったりするなど、何らかのトラブルがあったことがわかります。

考察方法(その2)
 下のグラフの赤線を見てください。完璧です。素晴らしい実験をした結果です。この生徒は、各テープの平均の速さも求めています。

上:各テープの平均の速さを求めたもの

考察方法(その3)
 下の写真には、2つのグラフがあります。上段はゆるやかな斜面、下段は急な斜面です。とくに注目してほしいポイントは、急な斜面のデータに関する考察です。下の写真のさらに下に、その考察があります。

上:上段はゆるやかな斜面、下段は急な斜面

考察方法(その4)
 この生徒は、赤線を書くことで、基準(0)の取り方を間違えていたことに気づくことができました。ただし、よーく見ると、この生徒はテープの切り方も間違えています。正しくは、打点の中央を切ります。この生徒は各打点がなくなってしまわないように、少しずつ上で切っています。


上:基準(0)の取り方の間違いに気づいた生徒

(7)本時の感想、考察  (5分)
  斜面後半はかんたんに美しい階段状のグラフができますが、前半は注意深さが必要です。たとえ実験が失敗していたとしても、失敗した原因を指摘することができれば、科学的思考力に高いポイントをつけることができます。

=== 本時の板書 ===


授業を終えて
 床に座って実験できたので、いつもアットホームな感じになりました。また、実験とデータ処理の場所を別々にできたので、それぞれ集中してできたと思います。結果として、理科室よりも良かったと思います。

 また、半数以上の班が1つの斜面しかできなかったので、次の時間も同じ実験を行うことにしました。


上:学習室の後ろで実験をする生徒たち


上:実験を終えて机へもどり、テープを処理する生徒たち

関連ページ
導入 運動とは何か?(記録タイマーの基本操作)2004年度
実験3 斜面を滑り落ちる台車(等速直線運動)2004年度
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物体に働く2つの力(平行四辺形を作図して合力を求める)2004年度
斜面上の物体に働く重力を分解する2004年度
物体が斜面上を滑り落ちようとする力2004年度

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第3章
ニュートンの運動の3法則
 自由落下運動 p.52
 斜面を滑り落ちる台車 p.58

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速さを測ろう!

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滑り落ちる台車2
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