このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第9時
実習8 力の合成  

     2018 5 7(月)
     第3学習室

はじめに
 2つの力が同時にはたらくとき、それらは1つの力(合力)として考えることができます。合力の求め方は簡単で、2つの力を二辺とする平行四辺形を書くと、その対角線が合力、となります。

 さて、この内容は中学1年生で十分に理解できます。中学3年生なら、作図できるようになるまで10分かからない子どもが多数います。また、作図は前時より簡単なので、説明を半分聞いただけですべて理解してしまう子どももいます。

 したがって、本時の学習目標の1つとして、自分ができるようになるだけでなく、友だちに教える力の育成を付け加えても良いでしょう。いわゆる、学び合い高め合いです。

 本時の授業構成にあたり、力の合成と分解を1時間で完了することも考えましたが、欲張りは失敗するので、本時は『2つの力の合成』だけにしました。『3力の合成』についても見送ったので、かなりゆとりのある1時間になったと思います。全員、完璧に理解して作図できることを目指します。

関連ページ
力を矢印で表わす1年(1年、2002年度)
物体に働く2つの力(平行四辺形を作図して合力を求める)2004年度


上:合力の考え方を説明・理解させるための板書


本時の目標
・2つの力が同時にはたらくと、1つの合力になることを理解する
平行四辺形を作図することで、合力をもとめる
・つりあっている2つの力の合力は、であることを理解する
・作図ができない友だちのつまずいている部分を見つけ、できるように教える

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 三角定規セット
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日の内容は、前の時間よりもはるかに簡単です。10分で終わってしまう人もいると思いますが、その人は先生のかわりに、友だちに教えてあげてください。別次元の力が身につきます。その力は、まさに科学的な力といえるものです。通知表で5を目指している人は積極的にがんばってください。逆に、自分1人でできない人は、自分からすすんで教えてもらう力を養ってください。教えて! 助けて! と声を出す力です。面白い1時間になることを期待しています」

(2)合力とは? 合力の考え方 (3分〜5分)
 「黒板を見てください。丸い物体、を書きました。それに2本の糸をとりつけて同時に引っ張ると、どちらへ飛んでいくと思いますか(下図)。糸は、一瞬のうちに一気に引くことにします」


上:物体に糸2本をつけ、同時に引っ張るときの模式図

 「そうですね。2つの力の中間方向に飛んでいきます。この問題は、2つの大きさを同じに設定してあるので、ど真ん中の方向に飛んでいきます(下図)


上:物体が飛んでいく方向を示した図

 「このように2つの力を合わせた力を、合力といいますが、その大きさはどうなるでしょう? (上図のように、とても長い矢印を書きながら)こんなに長くない、大きくない、ということは直感的にわかると思いますが、本当の大きさどれぐらいでしょう? 実は、簡単に求める方法があります。2つの力を二辺とする、平行四辺形を書いてください。それだけで求められます(下図)


上:2つの力を使った平行四辺形

 「できた平行四辺形の頂点が『矢印の先端』、力の大きさを示しています。定期テストでの誤差は、プラスマイナス1mmとします。正確に作図してください(下図)


上:2つの力の合力

 「この合力はしっかり書いてください。始点は『物体の中心』ですが、みなさんは物体の中心にしかっかりと点を打ち、先ほど求めた『平行四辺形の頂点』まで矢印を書きます。それが答えとなる合力です。もちろん、平行四辺形を正確に書くことは絶対条件です。テストでは、作図した並行四辺形も消さずに残しておいてください」す(下図)


上:合力の求め方、合力のまとめ

(3)生徒実習:作図によって合力を求める (5分〜30分)
 (2)で合力の概念を学習したら、生徒実習に入ります。ただし、単純ミスの繰り返しを防止するため、簡単な作図が3つできた生徒から、先生の合格印『A』をもらいに来るように指示します。合格できた生徒は、次の作図問題をどんどんやっていきます。私が用意した学習プリンには合計10個ほどしかないので、本当に10分で終えてしまう生徒がたくさんいます。

はじめの個人点検でチェックする項目
・平行四辺形が正確か
・補助線(平行四辺形)を消さずに残してあるか
・答えとなる矢印(合力)がしっかり書いてあるか
・矢印の先端が明確か

(4)同一直線状にある2つの力 (1分〜3分)
 (3)の途中で、『同一直線上にある2つの力の合力』について指導します。指導するタイミングは、約半数の子どもが初回個人点検を終了したときです。この頃は教室のあちらこちらで、同一直線上の問題でつまずいているつぶやき声が聞こえているでしょう。

 「全員、作業を中断しなさい。すでに理解している人がたくさんいると思いますが、全員で確認したいと思います。下図のように、2つの力が正反対にはたらいている場合、物体はどちらに動くでしょう?」


上:同一直線上にある2力について考えさせるための問題

 「丸い物体は人気者なのでしょうか? 左右から同時に引っ張られていますが、右の方が強いので、右に動きます。図をみれば一目瞭然です。では、どれだけの大きさで動くかということ、それは矢印の長さを調べればわかります。数えてみましょう。左は1、2、3。右は1、2、3、4、5です。したがって、小学1年生でもできる算数、5 - 3、でわかります。したがって、この問題の答えは、右向き2目盛り分の長さの矢印(下図)、となります」


上:左右から引っ張られた場合の合力

(5)つりあっている力の合力 (1分〜3分)
 (4)に連続して、つりあっている2つの力の合力について調べます。

 「連続して、もう1つ紹介します。下図の場合はどうなるでしょう? 真横では面白くないので、ちょっと傾けてみました。ただし、2つの力は一直線上にあります」


上:つりあっている2つの力

 「方向は正反対ですが、大きさが同じ場合です。(少し間をとって)このような2つの力の関係には、特別な名前がついていましたが、覚えている人はいますか? ・・・そうですね。つりあっている、です。ここで『つりあっている条件』について復習しておきましょう」


上:2つの力がつりあうための条件3つ

 「では、問題です。つりあっている場合の合力はどうなりますか? ・・・え、なくなる、ではありません。これまでと同じように作図すると、・・・まあ、作図できないことはわかりますが、それを、どのように表現したら良いのかというと? ・・・その通り、大正解です。点として書いてください。極端に大きすぎる点はいけませんが、ぐるぐるっと、しっかりした点を書いてください」


上:つりあっている2力の合力は0

 「ここでプラスアルファー情報を1つ紹介しますと、この合力の大きさは、0(ゼロ)です。0N(ゼロ・ニュートン)ではなく、だだの0(ゼロ)になります。0(ゼロ)をN(ニュートン)にかけると、0(ゼロ)になるからです」

(6)本時の感想、考察 (5分)
 ほぼ全員できたところで、本時の感想や考察を書かせます。

=== 板書===


上:A組の板書


上:B組の板書


授業を終えて
 先生はたくさんいた方がきめ細かい指導ができるものですが、本時はまさにそのような授業が展開されました。


上:互いに学び合う子どもたち(掲載許可取得中)

 私にできることは子どもたちにもできます。私は立場をワンランク上げ、指導者ではなく監督としての仕事をしました。

関連ページ
力を矢印で表わす1年(1年、2002年度)
物体に働く2つの力(平行四辺形を作図して合力を求める)2004年度

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第2章 静かな力のつり合い   力を矢印で表す p.18
 垂直抗力 p.19
 輪ゴムで調べる分力、合力 p.30
第3章
ニュートンの運動の3法則
 台車にはたらくいろいろな力 p.59
 第3法則『作用反作用の法則』 p.60

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重力

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