このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第10時
実習9 力の分解  

     2018 5 8(火)
     第3学習室

はじめに
 前時は『力の合成』を学習しましたが、本時は『力の分解』を学習します。前時と同じように作図中心、子どもたちが自主的に教えあう授業を展開します。なお、これらは中学1年生で十分にできる内容であり、本来、中学1年生で学習内容だと思います。学習指導要領の見直し、よろしくお願いします!

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上:本時の板書


本時の目標
・ある力は、任意の方向の2つの分力になることを理解する
平行四辺形を作図することで、分力をもとめる
・作図ができない友だちのつまずいている部分を見つけ、できるように教える

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 三角定規セット
  • 本日の学習プリント(1 /人)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日は前の時間と同じように、完成した人から終了です。終了した人は、できない人を助けてあげてください。できない人は、積極的に声をかけてください。全員できるようになることが本日の目標です。よろしくお願いします!」


上:本時の学習プリント(黒板横の掲示板に画鋲でとめたもの)
 作図問題12個を印刷してある。

(2)まっすぐではなく、角度をつけて持ち上げるとどうなるか(3分〜5分)
 分解の前に、楽しい演示実験を行います。画像があれば簡単に説明できるのですが、撮影し忘れてしまったので、言葉で説明します。

代表生徒による演示実験

 クラスの人気者に出てきてもらいます。できれば、力自慢の生徒が良いです。そして、その生徒に水が入ったバケツを持ってもらいます。持ってもらうものは、ある程度の重さがあるれば何でも構いません。

 先生は「それを持ってください」とお願いしてください。生徒は、腕を伸ばしてバケツをつかみ、真下から真上に持ち上げると思います。そこで、次のようにお願いします。

 「次に、バケツを上に持ちあげてもらいますが、条件があります。腕を曲げないでください。体も傾かないようにしてください。できるだけゆっくり持ち上げ、体と腕の角度が45度になるまで持ち上げてください」

 生徒はがんばってバケツを持ち上げると思いますが、理論的に1.4倍の力が必要になるだけでなく、違う筋肉を使うことになるので、とても大変です。顔がゆがんでくるでしょう。

 生徒が「全然平気です!」と答えるようなら、さらに持ち上げるように指示してください。体が傾いているようなら「まっすぐにするように!」、それでも頑張るなら「では、あと3分持っていてください」などとお願いしてみましょう。

 この演示実験のねらいは、角度を変えると力の大きさが変わることを理解することです。友だちの頑張っている姿や変化していく顔をみることで、どれだけ大きな力になっていくか、まるで自分が体験しているかのように感覚的に理解することができます。

(3)力の分解の理論(5分〜8分)
 (2)は1本の腕で持ち上げましたが、ここでは2人が協力して持ち上げる場合を考えます。力は2つに分解されますが、角度をつけるほど大きな力になっていくことは同じです。

 「下図は、いろいろな角度で、2人で協力して物体を持ち上げる場合の力の大きさを考えるためのものです。角度は、左から120度、90度、30度、0度になっています」


上:2人で協力して、いろいろな角度で物体を持ち上げる図

 「学習プリントには物体は書いてありません。点と、力を分解するための点線しか書いてありません。物体を書くと混乱する人がいるので、わざと書かなかったのですが、黒板には、丸い物体を薄く書きます」

 「みなさんは左端の図に、真下方向に、長さ3cmの矢印を書いてください。その矢印は、何という力かわかりますか? ・・・そうですね。重力です。1cm=1N、とします」


上:3Nの重力がはたらいている図(左端)

 「では、問題です。右端は120度の角度になっていますが、2人はそれぞれ、どれだけの力で持ち上げれば良いでしょう。算数ができる人は、わかるはずです。誰かわかる人はいませんか? ・・・おや、誰も手が挙がりませんが、・・・120度ということは、すべて120度になるということで、・・・平行四辺形を書いた時、正三角形ができるから、・・・え、ここまで言ってもわかりませんか! ・・・(A君が正解を答える)その通りです。3Nになります。せっかく2人で持ち上げているのですが、1人で持ち上げているのと同じ3Nの力が必要になります(下図)


上:120度で持ち上げる場合(左端)

 「90度の場合も同じように、平行四辺形を書いて、力の大きさを求められます。その準備として、物体から真上に長さ3cmの矢印を書くことになりますが、みなさんに配布した学習プリントには印刷してあります。そして、平行四辺形を書くわけですが、(平行線を書きながら、下図)こんな感じになりますが、・・・よくある形(正方形)になることは簡単に想像できますね。・・・(後略)」


上:90度で持ち上げる場合(左から2つめ)

 「以上で、先生からの説明は終わりです。わかった人は、どんどんやってください。平行四辺形を書いて分力を求めてください。あ、分力についてまとめるのを忘れていましたので、先に書いておきましょう」

分解、分力に関するまとめ
 1つの力を2つに分けることを力の分解、分解してできた力を分力という。

 「それから、みなさんから質問が出る前に、もう1つやっておきましょう。分力の角度が0度の場合です。2人が協力して、まっすぐ上にも持ち上げる場合です。このときの力の大きさは? ・・・簡単ですね。2人で半分ずつ分担しているので、半分の長さ、1.5cmずつになります。矢印を書く時は、作用点を同じにするとわからなくなるので、少しずらして書くことにしましょう(下図)


上:2人が協力して、まっすぐ上に持ち上げる場合(右端)

(3)生徒実習:作図によって分力を求める (5分〜30分)
 (2)で分力の考え方を学習したら、生徒実習に入ります。ただし、単純ミスの繰り返しを防止するため、簡単な作図が4つできた生徒から、先生の合格印『A』をもらいに来るように指示します。作図4つのうち、2つは上記(3)で解説ずみです。

左:簡単な作図問題4つ

チェックする項目
・平行四辺形が正確か
・補助線(平行四辺形)を消さずに残してあるか
・答えとなる矢印2本(分力2つ)がしっかり書いてあるか
・矢印の先端が明確か

 上図の問題が合格した生徒は、応用問題(下図)に進みます。私が用意した学習プリントの問題は合計12個ないので、本当に10分で終えてしまう生徒がたくさんいます。

左:応用問題

右下をよく見ると、
黄色と緑色のチョークで書かれて
いるものが2つあります。こられ
らは斜面上の物体にはたらく重力
を分解する問題です。重力の分解
は『実習7 物体にはたらく重力
で学習ずみです。黄色は斜面、緑
色は補助線をあらわしています。


上:三角定規を使って平行四辺形を書く生徒

(4)生徒どうしで教えあう (20分)
 すべての作図問題ができた生徒は、先生の点検を受けます。先生は、完成度に応じて『A』の数を増減させてください。私は気前が良いので、最高5つ出しました。

また、合格した生徒は、黒板に自分の氏名を板書します。板書した生徒は指導者として、私の代わりに友だちを教えます。


上:黒板右端にある表は、合格者に名前を書かせるためのもの
(終業までに、9割以上の生徒が自分の名前を書くことができた)

(5)本時の感想、考察 (5分)
 いつものように、感想や発見などを自由に書かせます。

=== 本時の板書 ===


授業を終えて
 生徒どうしで教えあう授業はいいですね。生徒は喜んでいるし、先生は楽できるし。もちろん、楽をするためには、それだけの努力が先生に求められます。先生が監督になり、生徒どうしで教えあう授業を実践するための方法は、私の著書『中学教師が絶対知っておきたい一斉授業の教科書(学陽書房 2015年)』に詳しく書いてありますので、興味ある方はご覧ください。

関連ページ
実習7 物体にはたらく重力(3年、2018年度)
力を矢印で表わす1年(1年、2002年度)
物体に働く2つの力(平行四辺形を作図して合力を求める)2004年度

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第2章 静かな力のつり合い   力を矢印で表す p.18
 垂直抗力 p.19
 輪ゴムで調べる分力、合力 p.30
第3章
ニュートンの運動の3法則
 台車にはたらくいろいろな力 p.59
 第3法則『作用反作用の法則』 p.60

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