このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 3年(2018年度)です |
第11時
力に関するまとめ2018 5 9(水)
第3学習室はじめに
今日はいつもと違う1時間です。とても簡単な内容と難しい内容が混在しています。とても簡単な内容は、教科書を一読すれば十分に理解できるものです。ノートにまとめ直すのは時間の無駄、といえるレベルです。授業では教科書をよみ、赤ペンでチェックささせました。今日のタイミングで読み直したのは、数週間後に迫ってきた中間テストに慌てないようにするためです。
とても難しい内容は、これまでに学習してきた力学の内容の分類・整理です。現行の学習指導要領の配置は子どもの発達段階に適していないだけでなく、いわゆる静力学と動力学が混在しています。中学を卒業すれば、もう二度と力学に触れるチャンスがなくなる子どももいるので、少々難しくても整頓することにしました。
自分がどこで何をしているのか、を知らせるのです。学習内容の詳細は十分に理解できなくても、どの位置にあるものなのかを知ることで、頭の中がスッキリするのではないかと思います。さらに、力学に興味がある子どもは、飛躍的に理解が深まるだろうと期待しています。とても難しい内容=とても面白い内容、であることを体感できるよう、子どもたちの様子・反応を見ながらできるところまで紹介したいと思います。
関連ページ
『力を矢印で表わす1年(1年、1999年度)』
『力を矢印で表わす1年(1年、2002年度)』
『実験12 力を矢印で表す(1年、2012年度)』
本時の目標
・つり合っている条件を確認する
・垂直抗力について確認する
・力学は、静力学と動力学に分類できることを知る
・静力学は、1年で学習した圧力・水圧・大気圧・浮力・垂直抗力、3年で学習する力のつり合い・合成・分解などであることを知る
・動力学は、3年生で学習する力と物体と運動に関するニュートンの運動の3法則に集約されることを知る準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- ファイル
- 本日の学習プリント(1 /人)
授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)
「今日は中間テストが迫ってきましたので、教科書をこれまで学習したところまで読みます。そして、重要なところをチェックしたり、授業で飛ばしたことをおさえます。それが終わったら、今学習している力学という学問がどういうものか、簡単に紹介します。力学には、1年で学習した圧力・水圧・大気圧・浮力などがありますが、それらは1年生にとっては難しくてさっぱり忘れてしまった人もたくさんいると思いますが、それらがどんなもので、どういう位置にあるものか紹介します。数字や計算問題は出したりしませんので、安心してください」(2)教科書を読んで、重要ポイントをチェックする(15分〜25分)
「それでは、さっそく教科書をひらいてください。◯◯ページです。では、読んでくれる人を募集します。・・・(中略)・・・
教科書でチェックした内容
(1)力をF(Force)、F1、F2などと表現すること
(2)つりあっている力の条件
実践例は『力を矢印で表わす1年(1年、1999年度)』
『力を矢印で表わす1年(1年、2002年度)』
(3)1年で学習した垂直抗力の確認(10分程度)
実践例は『実験12 力を矢印で表す(1年、2012年度)』垂直抗力について
垂直抗力はとても不思議な力で、ある物体が他の物体に力を加えた瞬間に発生します。どうしてできるのか、と質問されても、それが自然なのですから、それ以上に答えることはできません。垂直抗力は、ニュートンの第3法則『作用反作用の法則』の重要な一例として紹介すると良いでしょう。
上:垂直抗力に関する板書また、斜面上にある物体が受ける垂直抗力について、このタイミングで復習すると良いでしょう。授業では、子どもたちに好きな角度の斜面を書かせ、そこに垂直抗力を作図させました。以下はその指導手順です。
斜面上にある物体にはたらく垂直抗力を作図させる手順
(1)任意の斜面を書く
(2)斜面の中央あたりに、物体(直径1cm弱の丸)を書く
(3)物体の中央に点(質点)を書く
(4)質点から、真下に重力(下図)を書く
(5)質点から、斜面に垂直な補助線(下図@)を書く
(6)重力の先端から、斜面に平行な補助線(下図A)を書く
(7)(5)と(6)の交点を終点、質点を始点とする矢印を書く
(8)(7)に『物体が斜面を押す力』と書く
(9)(8)とつりあう力を書く
(10)(9)に『斜面が物体を押す力=垂直抗力』と書く
(3)静力学と動力学の紹介(10分〜15分)
力学を静力学と動力学に分類することは、力学の世界では一般的ではありません。一般的な教科書で教えることも、子どもたちの混乱を招くおそれがあるのでお勧めしません。しかし、私がここで教えることには理由があります。それは、子どもの頭の中を整頓させることです。中学1年生から系統立てたカリキュラムを編成し、1つひとつの学習内容を子どもたちの反応を見ながら指導すれば、力学を楽しく学習できると思います。中学で学習する力学は、他の分野と違い、答えが1つしかない明快なものばかりで、曖昧な点がほどんどないからです。さて、授業における静力学と動力学の分類は、以下のように行いました。
静力学
静かな力のつりあい・力のつり合い
・力の合成&分解
・物体を押す力、垂直抗力など(触れあう力)
・重力、磁力など(触れあわない力)
・フックの法則
・圧力(固体による圧力)
・水圧、大気圧(流体による圧力)
・浮力(流体による力)動力学
力を物体の運動の関係・速さ、時間、距離の関係(小学5年生)
・運動方程式
・慣性の法則
・作用反作用の法則上:中学までに学習する力学の内容を静力学と動力学に分類した表
※太字は、現行の学習指導要領で中学3年で学習するもの重要参考資料
以下に、子どもの実態に即した学習カリキュラムを示します。文科省の方は参考にしてください。日本からより多くの科学者が生まれるようになると思います。
小学校 ・いろいろな力(触れあう力、触れあわない力)
・速さ、時間、距離の関係(計算問題)=== 中1年 ・物体を押す力(垂直抗力を含む)
・力のつり合い
・力の合成&分解(平行四辺形の作図)
・フックの法則静力学 ・仕事(仕事率まで教えるなら週4時間必要) 熱力学 中2年 ・圧力(固体による圧力、計算問題)
・水圧、大気圧(流体による圧力、計算問題)
・浮力(流体による力)静力学
(熱力学)中3年 ・慣性の法則(ニュートン第1法則)
・運動方程式(ニュートン第2法則)
→ 数学の二次関数と完全にリンク※させる
・作用反作用の法則(ニュートン第3法則、垂直抗力)動力学 ・カロリー(熱量)
・ジュール(熱量)(電力量の学習後にすること)
・熱エネルギー、仕事率熱力学 ※数学は、もともと自然を理解するための道具(言語のようなもの)として生まれ、発達してきたものです。例えば、中学3年で学ぶ二次関数(高校で学ぶ微分・積分)は、ガリレオ・ガリレイがつくった道具(自由落下運動を説明するためのもの)と考えてよいでしょう。同じように、小学校で学習する足し算、引き算、割り算、掛け算も、自然を理解するための道具です。その他、集合、確率などすべての数学的内容を、不思議で複雑な自然を簡単に説明できる道具であることを体験的に学ばせれば、数学に興味を持つ人が世界に溢れるようになると思います。
力学(静力学&動力学)を含めた物理学全般、および、数字や単位について楽しく学びたい方は、私の著書『実践ビジュアル教科書中学理科の物理学』をご覧ください。たくさんの写真に目がひかれると思いますが、目次作りに多くの時間を使った本です。
静力学&動力学の記述がある授業実践例
『実験12 力を矢印で表す(1年、2012年度)』さてさて、本時の授業では、中学3年生でニュートンの運動の3法則について学習することを紹介するにとどめています。今月の中間テストを終え、そして、来月の期末テストを迎える前後に時間を確保できれば、もう少し詳しく紹介し直そうと考えています。
(6)本時の感想、考察 (5分)
盛りだくさんで、ばらばらする内容でしたが、授業の最後に自分でまとめまとめ直すことで、力学全体が見えるようになったのではないか、と思います。=== 本時の板書===
授業を終えて
暴投にとても難しい内容と書きましたが、カリキュラムがきちんとしていれば難しいことは何もありません。すべて楽しいこと、になります。知らないことを知ること、その喜びを共有することが私の仕事だと信じています。関連ページ
『力を矢印で表わす1年(1年、1999年度)』
『力を矢印で表わす1年(1年、2002年度)』
『実験12 力を矢印で表す(1年、2012年度)』実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学』
第2章 静かな力のつり合い 力を矢印で表す p.18 垂直抗力 p.19 フックの法則 p.20 輪ゴムで調べる分力、合力 p.30 第3章
ニュートンの運動の3法則台車にはたらくいろいろな力 p.59 第3法則『作用反作用の法則』 p.60
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実習9 力の分解
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実験11 自由落下する
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