このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第12時
実験11 自由落下する物体の距離 

     2018 5 10(木)、14(月)
     第3学習室

はじめに
 中学3年生の数学で、二次関数(y=ax2)を学習します。これはガリレオ・ガリレイの実験『自由落下する物体の運動』の時間と落下距離の関係を説明するために使われます。数学の教科書をめくれば、自由落下運動する物体の連続写真、あるいは、斜面を滑り落ちる物体の連続写真が掲載されているでしょう。理科の先生は、数学の先生と進度を確認し、学習効果を高めるためのリンクを検討してください。なお、今年度の授業は理科の方が早く、リンクできませんでした。

関連ページ
実験1 自由落下運動(速さ)2004年度
実験2 自由落下運動(距離)2004年度
ニュートンの運動の法則2004年度
実験6 自由落下する物体の速さ2018年度


上:本時の板書


本時の目標
・記録タイマーで自由落下する物体の運動を記録する
・時間と落下距離の関係をグラフにする
・落下距離は、ぐーんと大きくなることを理解する
・速さは、一定の割合で大きくなることを再確認する
・加速度は、変わらないことを確認する
・地球による重力加速度は、決まっていることを理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • はさみ
  • のり
  • 定規
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 記録タイマー(1 /班)
  • 記録テープ(70cm /人)
  • セロハンテープ(1 /班)
  • 古い単1乾電池(1 /班)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日の実験はとても簡単ですが、そのデータ処理がちょっと大変です。これまでと同じように記録テープの結果をグラフにしますが、直線ではなく、曲線になります。しかも、その曲線は、ぐーんと加速的に大きくなる曲線です。放物線、あるいは、二次曲線という名前がついていますが、みなさんは数学で、2学期になってから学習する予定です。(数学の教科書を見せ、該当ページを開きながら)これはA君の数学の教科書ですが、◯◯ページに、自由落下運動の連続写真があります。すでに、みなさんは実験済みなのでわかると思いますが、物体の間隔がどんどん広がっていることがわかります。今日は、どんどん加速度的に広がっていく距離にグラフを書きたいと思います」


上:二次曲線

指導のポイント
 数学の授業がある日なら、生徒に自分の数学の教科書を開けさせても良いでしょう。そして、 自由落下する物体の連続写真を見たり、その写真から落下距離=4.9×(時間)のグラフや数式を導き出す手順を確認したりしてみましょう。

 もし、数学ですでに学習済みなら、理科の授業は簡単で楽しいものになります。子どもたちは、自分の実験結果から二次曲線や放物線を描く楽しみを体験することになります。二次曲線の定数4.9を求める検証実験にしてください。さらに、理解度の高い場合は、地球の重力加速度9.8m/ssを紹介することも可能です(所要時間5分〜15分)

(2)落下実験の説明 (1分〜3分)
 物体を落下させる方法は『実験6 自由落下する物体の速さ2018年度』で学習済みなので、本時は、簡単な確認にします。主なポイントは次のとおりです。

再確認するポイント
・記録テープは短くすればするほど、摩擦や抵抗などによる誤差が少なく良い結果になる
 (学習プリントに添付できる長さは40cm)
・記録タイマーは、60ヘルツにセット
・記録タイマーは、壁や机に垂直に固定する
・スイッチを押してから、落下させる

実験上の注意
 乾電池は落下させると発熱したり液漏れしたりするなどの危険があるので、お勧めできません。専用の砂袋があれば、それを使用してください。

(3)データ処理の説明(5分〜10分)
 データ(記録テープ)は1つ取るだけです。しかも、記録する長さは40cmだけです。テープが長すぎてプリントに添付できないようなら、ハサミで切ってしまうと同時に、余分なデータを取ったために結果が悪くなった(摩擦で加速度が小さくなってしまった)可能性があることを指摘してください。


上:データ処理のための板書

 今回で、生徒によるデータ処理は4回目です。基準(0)の重要性は十分にわかっているはずですが、個別に再確認してください。完璧なスタートができた生徒は『一番初めの点=基準(0)』となり、基準を決める必要はありません。

 次に、学習プリントのグラフ左側に、記録テープを添付します(下図)。ポイントは、グラフの横軸と基準(0)を合わせることです。これができれば、グラフづくりの1/3は成功したといえます。


上:記録テープの実物をセロハンテープで貼った黒板
白チョークで書かれた記録テープの中央に、記録テープの実物が貼ってある
記録テープの実物には、適切な打点(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12)を赤チョークで先生が書くこと

 次に、定規で記録テープ各打点から真横に補助線をひきます。そして、グラフ横軸の各目盛り(1〜12)から真上にひいた補助線との交点を求めます(上図)。理想的な実験(摩擦0)の場合、6打点目(0.1秒後)は4.9cm、12打点目(0.2秒後)は19.6cmになることを知らせます。実際はいろいろな摩擦があるので、それより小さくなりますが、大きくなること(地球の重力加速度より大きくなること)はありません。

 最後に、各点をなめらかな美しい1本の曲線で結べば完成です(下図)。


上:完成した二次曲線クリックすると拡大


上:他クラスでの板書
グラフ中央上にある曲線は、なめらかな1本の美しい曲線を描くための解説図
なめらかな曲線の描き方は、生徒の落下実験が終わってから指導するとよい

(4)生徒実習:落下実験→ グラフ化(分〜分)
 詳細を知りたい方は、『実験6 自由落下する物体の速さ2018年度』をご覧ください。


上:机の縁を利用して、記録タイマーを垂直に固定する生徒


上:記録テープに記録された各打点を、グラフに移す作業をする生徒

(5)美しいグラフの書き方の説明(3分)
 私の実験授業でグラフを書かせる場合は、毎回正しいグラフの書き方、正しいデータ処理の方法を教えています。正しい書き方の原則は、各データ(各点)は正確に書いても、各データを通らない(各データを平均とする、各データから推測される)1本の線にすることです。なぜなら、実験データは完璧でないからです。1本の線は、連続した点の集まりだからです。理想的な実験の場合、すべてのデータ(各点)を通る線を書きますが、実際は、絶対に通りません。そもそも、記録タイマーが正確に1/60秒ごとに打点していると思ったら大間違いです。

 「下図1をみてください。このようなに点が並んでいたとき、どのように各点を結べばよいでしょう。正解は、下図2のように、なめらかな美しい1本の曲線で結ぶことです。今、先生は結ぶ、という表現をしましたが、実際は結んでいません。すべての点を通っているわけではありません。むしろ、すべての点を通らない方が、より的確に各点のデータを使うことになります」

科学的な、なめらかな美しい1本の曲線を描く


上:図1

上:図2

上:図3

 「上図3をみてください。最悪なデータ処理は、定規で、各点を正確に結んでいくことです。その結果が赤い折れ線グラフになります。これは、大変に残念なグラフです。誤った実験データを完璧に信用してしまっている人の処理です。実験は完璧を目指して行いますが、完璧なデータを得ることはできません。それを理解した上で、できるだけ正確な実験を繰り返します。そして、得られたデータをもとに、理想的な完璧な実験をしたときに得られるであろう結果を推測します。いわゆる科学的思考です。上図1をみて推測されることは、なめらかな美しい1本の曲線です。上図1にある点を数えると、たった8個しかありません。しかし、上図2に描いた1本の曲線には無数の点があります。無数の点の連続です。これらの各点は、理想的な実験を行なった場合の結果を表しています。実験には誤差がつきものですが、理想的な実験をした場合のことを考え、なめらかな美しい1本の直線を求めてください」

(6)本時の感想、考察 (5分)
 今回のグラフは、グーンと上がるものになりました。これを前回と比較させるために、簡単なグラフをかきました。また、加速度は時間をとともに変化しなこともの書きました。ポイントは、いずれも横軸が時間になっていることです。

===本時の板書===

 

=== ある生徒の学習プリント ===


授業を終えて
 本時のグラフの縦軸は『落下の距離』、グラフは二次曲線です。

 生徒がよく混乱するものとして、『実験6 自由落下する物体の速さ2018年度』があるので、もう一度確認しておきましょう。
 右図を見てください。 縦軸は『0.1秒毎の落下距離』です。0.1秒毎の落下距離は、落下距離 ÷ 0.1秒、で求められます。これは『距離 ÷ 時間』すなわち『速さ』です。
  つまり、縦軸は『0.1秒毎の速さ』を表しています。このグラフは比例なので、一定の割合で速くなっていることを示します。

上:縦軸『速さ』のグラフ

 この単純なグラフは、距離を時間で割ることで求めました。もし、生徒の興味関心が高いなら、もう一度時間で割るとどうなるか、考えさせてください。考えるための時間は15分以上必要になると思いますが、とても興味深い結論が待っています。

 もう一度時間で割ると(速さを時間で割ると)、加速度が求められます。加速度は、加速する度合い(割合)です。加速する割合は一定なので、グラフは変化しない、単純な横1本の直線になります(右図)。

 速さがはやくなる割合は、地球の場合、1秒につき速さが9.8 m / 秒ずつ速くなっていきます。つまり、1秒毎に9.8 m / 秒変わるのですから、速さの変化の割合(加速度)=1秒毎に9.8 m / 秒 = 9.8 m / 秒 ÷ 秒= 9.8 m / 秒 / 秒、になります。

 この値を地球の重力加速度といいますが、これは実験によって求められた実験値なので、中途半端な値です。測定地や測定条件によって、違う値になります。

note:生徒と先生の会話
 「先生、グラフの曲線がかけません」
 「美術的、科学的センスがない人はかけません。いい感じになるように、定規を使わず、いきなり濃く描くのではなく、全体のイメージをとらえながら、すべての点を通らないように書いてください」
 「先生、何を言っているのかわかりません」
 「君の書いた点が間違っているのです。間違ったものを使おうとするから、美しくないのです。間違ったものは使わないでください。それは単なる参考、にすぎません」

関連ページ
実験1 自由落下運動(速さ)2004年度
実験2 自由落下運動(距離)2004年度←この実践より本時の方がベターです!
ニュートンの運動の法則2004年度
実験6 自由落下する物体の速さ2018年度

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第3章
ニュートンの運動の3法則
 自由落下運動 p.52
 斜面を滑り落ちる台車 p.58

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実験12 等速直線運動
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