このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第20時
実験17 滑 車

     2018 5 30(水)、31(木)
     第2理科室

はじめに
 見たり聞いたりしたことはあっても、実際に手にするのは初めてなのでしょう。嬉々として滑車に触わる子どもたちを見ていると、自分でやってみることの楽しさが伝わってきました。実験は大切なものではなく、単純に面白いものだと再確認しました。私が教えたばかりのことを、まるで世界で初めて発見したかのように確かめたりまとめたりする子どもたちと時間を共有できるのは本当に幸せなことです。

関連ページ
仕事の原理2004年度
国際単位系(SI)


上:本時の板書


本時の目標
・仕事の道具の1つに滑車がある、ことを確認する
・定滑車と動滑車の2つに分けられる、ことを知る
・定滑車は力の方向をかえる装置(道具)、であることを知る
・動滑車は力を1/2、長さを2倍にする道具、であることを知る
・1つの滑車の装置をつくる
・複数の滑車の装置を考え、つくる
・つくった装置で、力の大きさが何分の1になるか考え、調べる
※ 力は三要素『大きさ』『方向』『作用点』があるので、正確には『力の大きさを1/2』とするべきである。しかし、『力を1/2』と表記すれば、『力の大きさを1/2にする』ということがわかる(方向や作用点は1/2にできない)。また、質量や距離は『大きさ』しかないので、わざわざ『質量や距離の大きさを1/2』とは書かない。

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • 滑車(2 /班)
  • 2連の滑車(2 /班)
  • 太さ2号のタコ糸(70cm〜2m/班)
  • 鉄製スタンド
  • 1m 定規(1 /班)
  • 合格印

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

(2)定滑車と動滑車(10分)
 滑車は2つに分けることができます。1つは天井の固定された定滑車、もう1つは上下に動く動滑車です。動滑車は糸で吊り下げられているので、糸を持っていないと落ちてしまう滑車です。


上:定滑車と動滑車についてまとめた板書

 定滑車は、力の大きさを変えることはできませんが、方向を変えることができます。例えば、上図のように物体を持ち上げる場合、糸を下に引きます。糸はぶら下さがるように引けば良いので、最大、自分の体重を同じ重さの物体を持ち上げることができます。力の方向を変えることで、楽に持ち上げられるようになるわけです。

 動滑車は、力の大きさを半分(1/2)にします。上図を見てください。糸が天井に固定されています。天井は何もしていないのではなく、あなたと同じ力で物体を持ち上げています。その証拠に、とても重い物体を持ち上げようとすると、天井がゆがんだり落ちてしまったりします。したがって、動滑車を使うと、あなたと天井(糸)が同じ大きさで持ち上げていることになるので、力の大きさは1/2になります。しかし、引っ張る長さは2倍になります。嘘だと思う人は、実際に動滑車を作って動かしてみればわかります。糸を引っ張っても、なかなか物体は上がってきません。

中学校理科の先生へ
・初期設定は『200gの物体を2m持ち上げる』とします
・すると、重力は2N
・定滑車の仕事は、2N×2m=4Nm=4J
・動滑車の仕事は、1N×4m=4Nm=4J
※距離が2倍(4m)になることは、次の実験で検証します
・以上、仕事の原理が成立します

糸の角度に注意
・物体をつなぐ糸は、鉛直方向
定滑車は、どちら方向でもよい
(極端な場合、定滑車から糸をはずすことができる)
・ただし、上図のようにできるだけ真上・真下方向にそろえること

動滑車は、真上・真下方向にする
(角度をつけると『力の大きさ』が変わる→ 『実習9 力の分解』)

(3)滑車に関するまとめ (3分)
 以下のように簡単にまとめます。

上:滑車についてまとめた板書

(4)実験:滑車を組み立て、糸を引いてみよう (30分)
 組み立てを指示する滑車装置は6つです。(1)定滑車、(2)動滑車、そして、下図の複数の滑車による装置4つです。 なお、下図は2連滑車を使うものもあります。


上:本時の滑車装置の設計図
※120Nという数値は、糸を引く力を考えるための設定

滑車装置を組み立てるための注意点
 以下の内容を実演しながら、90秒以内で説明すること!
・滑車をつるす場合、鉄製スタンドの自在バサミの適当な位置で工夫する
・物体は、分銅とする
(分銅が軽すぎると、糸が外れやすいのので、装置に合わせて調節する)
・糸は、長さは70cm程度
(複雑な装置は長くなるので、班で考えて用意する)
(使用後は、捨てずに指4本に巻き付けるようにして片付ける)
定滑車1個の装置
(1)滑車を自在バサミにつるす
(2)分銅を糸にひっかける
(3)滑車に糸をかける
(4)できあがり→ 先生の合格印をもらう
動滑車1個の装置
(1)糸を自在バサミに固定する
(2)分銅を滑車にかける
(3)糸の上に滑車をのせる
(4)できあがり→ 先生の合格印をもらう
 「合格印をもらったら、班員全員が糸を持ち、交代で糸を引っ張ってください。なかなか分銅が上がらないことを、自分の目と手で確認してください。
(実演しながら)ほら、先生の手を見てください。こんなに上下させているのに、分銅が動いていないのがわかりますか。定規を当てて調べると正確な比率がわかるので、調べたい人のために1m定規を用意してあります。動滑車1個の場合、糸を20cmで分銅10cm、2:1、になります。今度は、分銅を見ていてください。(分銅を上下させながら)あまり上下していませんが、先生の手はこんなに動いています」
複数の滑車の装置
 滑車1個の装置ができるようになれば、複数の装置は応用できます。ご心配なく! できたら、先生の合格印をもらうように指示してください。

複数の滑車で、力は何分の1になるか
 考え方は、終了5分前に紹介します(後述)。全員理解できなくても、もう1時間同じ実験を行うので心配しないでください。本時は、以下のように指示して実験開始です。
 「複数の滑車を使うと、力は1/2だけではなく、1/3や1/4や1/5や、その他いろいろな値になります。その値は、設計図から求めることもできますが、まず、実験で調べてください。 糸と分銅の動き方、動く量を比べます」
 「 分銅が1/2しか動かないなら、力は1/2。分銅が1/3しか動かないなら、力は1/3です。正確に調べたい人は、1m定規がありますので、使ってください」
  「何分に1になるかわかったら、糸を引く力の大きさを設計図に書いてください。正解だった人は合格印を追加します。重力は120Nに設定しておきますので、いろいろな数字で簡単に割り算できると思います」
 「 なお、装置づくりの合格印は班員全員に差し上げますが、設計図の合格印、および、数値の合格印は個人プレーです。同じ班でも、もらえない人がいます」

 なお、以上の追加説明(30秒〜45秒)は、実験開始から5分後(半数の班が合格印2つをもらったころ)で行います。

設計図のポイント
・糸の方向は、真上か真下(前に書いた通り)です
・2連滑車は、2つをつなぐ部分を確実に書かせてください
・2連滑車の装置の場合、装置のどこかに『フック』を書く
・フックに、糸を固定する
・1本の糸は、そのフックから始まり、君の手で終わる

 終業10分前に「片付け!」と声をかけたいところですが、生徒の熱気 & 合格印を押す忙しさ、で忘れることが多々あります。ご注意ください。


上:ひと段落終えた班

(6)本時の感想、考察 (5分)
  いつものように自由な発見、工夫、疑問などを書かせる時間を5分程度確保したいです。もう1時間追加するなら、ここで、力の大きさを設計図から求める方法を紹介します。解説する時間は1分〜2分です。2分で理解できないようなら、5分かけてもできないと思うので、集中力をもって説明してください。

設計図から、力の大きさを求める
 「何人で持ち上げているか、を考えます」


 「上図の場合、@とA、2人持ち上げていることになるので、答えは1/2、60Nになります。最後は下向きの力になっていますが、最後は定滑車なので、上図のように順に向きを変えていけば、糸は、滑車から外れます。つなわち、@とAだけ、になります」


 「上図はたくさんの糸がありますが、何本の糸で持ち上げているのでしょう! 3本なら1/3、4本なら1/4になります。1本にかかる力はすべて同じなので、均等割です。さもなければ、一番大きな糸の方向に持ち上がってしまいます」
 「では 、糸の始点から数えていきましょう。フックから順に数えます。
(順に板書しながら)@、A、B、まではいいのですが、最後の4本めはどうですか。数えることができますか、それとも、できませんか? ・・・そうですね。最後は向きが変わっているだけなので、Bで終わりです。先ほどと同じように、最後の糸は外してしまうことができます。したがって、3人で割ることになるので、答えは120N÷3=40Nで、40Nです」


 「上図もフックから順に数えていきましょう。
(順に板書しながら)@、A、B、・・・、で、最後の1本は数えることができますか? できませんか? ・・・これは上向きなので、当然、持ち上げているので、数えなければいけません! (Cと書いて)Cです。したがって、答えは4人で均等割りなので、120N÷4、30Nです」

=== 本時の板書 ===


授業を終えて
 半数以上の生徒が、もう1時間やりたいと言い出しました。かなり面白いようなので、時間に余裕があれば、ぜひ2時間滑車で遊ばせてやってください。理論ではなく、滑車に触らせてください。

 実験中のポイントは、糸を引っ張る量です。なかなか分銅が動かないことが実感させてください。装置を組み終わったら、交代で全員、自分の手で引っ張るようにさせてください。

 先生にとっては単純な実験のように思いますが、子どもたちはそれぞれにいろいろなポイントに興味関心をもち、小さな発見を重ねていました。

note:生徒と先生の会話
「時間です。もうやめて、片付けに入ってください。といっても前のクラスはやめてくれなかったのですが、みなさんはどうますか? もう1時間やりたいならやるけど?」
「やる、やる」
「じゃあ、やりたい人は手を挙げてください」
「はーい!」
「じゃあ、次回も滑車やります。片付けてください」
「はーい!」

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実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

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