このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第24時
実験21 運動エネルギー

     2018 6 14(木)、18(月)、20(水)
     第2理科室

はじめに
 前時『位置エネルギーと同じ実験装置で、運動エネルギーと速さの関係を調べます。今日もたっぷり1時間、実験とグラフ作りを楽しみます。


上:玉を指で弾き、その速さと木片の移動距離の関係を調べる生徒たち

関連ページ
振り子のもつエネルギー(力学的エネルギー)2004年度
国際単位系(SI)


本時の目標
運動エネルギーについて知る
・専用の実験器を使い『運動エネルギーと速さ』の関係をグラフにする
・グラフから、運動エネルギーは速さの二乗に比例する、ことを確認する
・運動エネルギーと質量は比例する、ことを知る
位置エネルギー = 質量 ×速さ×速さ、を理解する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • エネルギー実験器(1セット /班)
    玉は『ステンレスの大玉』のみ使用

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 「今日も楽しい実験です。前回と同じ装置を使って、速さと運動エネルギーの関係を調べます。運動エネルギーは、もちろん速さが大きいほど大きくなりますが、比例の関係ではなく、加速度的にぐーんとエネルギーがアップしていきます。たくさんデータを取ると、自然にそのような形になるので楽しみにしていてください。赤外線で速さを測定する装置も使います」

(2)運動エネルギーとは (2分〜4分)
 運動エネルギーの定義は、ずばりそのままです。難しいポイントは『速さ』で、 運動エネルギーの大きさは『速さ』ではなく『速さの二乗』に比例します。

指導の手順
(1)空欄をつくりながら、まとめる
(2)早く書けた生徒に、空欄を書かせる

上:空欄に語句を書く生徒

(3)空欄をふくめ、定義を確認をする
(4)「@〜Bを式にすると次のようになります」と言い、公式を書く
   運動E= 質量 ×(速さ)


上:運動エネルギーに関する板書(もう1枚上の写真とは違う学級のもの)

(3)運動エネルギーは、速さの二乗に比例する (2分〜7分)
  運動エネルギーと速さの関係は、『実験11 自由落下する物体の距離』で学習した距離と時間の関係と同じです(二次関数)。グラフの形も同じで、グーンと加速度的に増える形になります(放物線)。

 とはいうものの、子どもたちの多くはピンと来ていないので、今日は自転車事故の話をします。自分の体験と重ね合わせることで、速さとエネルギー(事故の大きさ)の関係をイメージさせるのです。想起体感(taka先生の新作造語 2018june18公開)させる作戦です。

速さとエネルギーの想起体感
 「運動エネルギーが質量に比例することは、簡単にイメージできます。例えば、誰かが体当たりしてきた場合です。小さな人なら良いのですが、質量が大きな人がぶつかってくると大変です。(教室からざわざわと、太った生徒の名前が出ても無視する)わざとではなくて、相手が気づかない場合でも、大きな運動エネルギーで吹き飛ばされることがあります。とうことで、運動エネルギーは質量、すなわち、g(グラム)、kg(キログラム)に比例します

 「さて、問題は速さです。速さには比例ではなく、その二乗に比例します。(自転車事故のケガ: スピード2倍で  倍、と板書して)まず、問題です。スピードが2倍になると、エネルギーは何倍になるでしょう? ・・・(A君が答える)・・・その通り、4倍になります。では、速さが3倍になると? ・・・(Bさんが答える)・・・完璧ですね。3 × 3で9。9倍になります」

 「これだけでは納得できないので、自転車の速さと事故の大きさを思い出してもらいましょう」

以下は、省略可
 「その前に、最近、自転車に乗れない・乗らない人が増えてきたようですが、自転車に乗れる人? ・・・
(大半の人が挙手する)・・・自転車に乗れない人・・・(教室中の生徒が挙手した友だちが誰か、興味深く探す)・・・やはり、最近は乗れない・乗らない人が増えてきましたね。自転車に乗ったことがない人は、速く走って転んだ時のことを思い出してください」

 「自転車で事故(じこ)った人はいますか? ・・・(大半の人が挙手する)・・・そのうち、大怪我をした人は?・・・(5、6人の手が伸びる)・・・その中で、みんなに体験談を話してれる人はいませんか! ・・・(全員手を下ろした場合は、前の5、6人に頼めば話してくれると思います)・・・(C君が体験談を話す)・・・(Dさんが体験談を話す)・・・(中略)・・・とうことで、自転車事故はスピードを2倍にすると、ケガをした時の大きさは2倍ではなく4倍になりますので、スピードには十分注意してください。もちろん、ブレーキをかけて止まろうとする時にも4倍の力が必要になりますし、全力で止まろうとしても距離は確実に長くなります」

(4)グラフの書き方&実験概要の説明(3分)
 「学習プリントと筆記用具を出して、グラフを書く準備をしましょう。軸を書きます」

 「横軸は速さ、単位は m / s です。1目盛0.2で、1.0まで書いてください。(速さ、 m / s 、0.2、0.4、0.6、0.6、0.8、1.0を板書)。縦軸はエネルギーですが、実験では『木片の移動距離』、単位はcmとして求めます。(エネルギー、木片の移動距離、cm、を板書)

 「次に、実験結果ですが、(グラフに点、データを打ちながら)こんな感じになります。速さゼロなら木片は動かないので、ゼロゼロの原点を通りますが、・・・ 速さと木片の移動距離の関係は比例ではなく、速くなると木片は一気に動くようになるので、グラフ形は2週間ほど前に実験した『自由落下する物体の距離』のようにぐーんと伸びる曲線になります。(さらに、データを打ちながら)こんな感じです(下図)」


上:グラフの書き方を説明するための板書

 「データは少なくとも20回とってください。誤差が多い実験になりますが、データを書いていくうちに、自然に放物線ができあがります。同じデータになった場合は、点を太くしてください。同じようなデータで重なってしまった時も、点をこんな風に(黒板で示しながら)、点を太くます。ほら、いい感じなってきたでしょ(上図)」

(5)実験手順の説明 (2分〜3分)
 赤外線で速さを測定する『ビースピ』という装置しくみ&使い方を説明してから、良いデータを得るためのポイントを紹介します。


上:本日の実験装置(中央にある青いものが速さ測定器『ビースピ』)

速さ測定器のしくみ&使い方
(1)測定器には赤外線センサーが2つある
(2)それらを通過する時間差から、速さをデジタル表示する
(3)速さの単位を m / s にする
(4)バグったら、電池を外して入れ直す

良いデータ、美しいグラフを得るためのポイント
(1)レールが反っているので、軽くセロハンテープで固定する
(2)ビースピもセロハンテープで固定すると良い
(3)毎回、基準となるピンを確認する
(4)すべてのデータを、毎回グラフ上に書く
(5)とてつもなく遅いもの、0.1m/sについても数回測る
(6)とても速いもの、1m/sについて数回測る
(7)中間の速さでは、変化をつけたつもりでも同じようになるが、同じデータになってもグラフ上に書くこと(書き方は前述のとおり)。
(8)本日は、ステンレスの大玉のみ

(6)生徒実験(25分〜30分)
 しっかり説明しておけば、楽しい実験くりかえします。ただし、ビースピの読み方やグラフの書き方がわからない生徒が若干いると思います。机間巡視して、班ごとに確認していきましょう。

実験の様子

@:レール端から、玉を弾くようにして走らせる

A:ビースピで、玉の速さを読み取る


B:木片の移動距離を読み取る


C:AとBのデータをグラフ化する

(7)本時の感想、考察 (5分)
 いつものように5分確保します。

===本時の板書===

===生徒の学習プリント===


上:A君の学習プリント
 オレンジ色は大きな鉄球、その下の曲線は中ぐらいの鉄球


授業を終えて
 直線ではなく、曲線になることが面白かったようです。自主的に何度も繰り返している姿が印象的でした。単純な実験ですが、どのような結果になるのか予測しながら試すことができるので、飽きないのだと思います。

 なお、最終的なデータ処理ですが、授業では『1本の曲線』を書かせてしまいましたが、今回は書かなくても良かったように思います。たくさんのデータを取った実験だからです。

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

第23時 ←
実験20 位置エネルギー

→ 第25時
実習22 力学的エネルギー
↑ TOP
[→home
(C) 2018 Fukuchi Takahiro