このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2018年度)です

第25時
実習22 力学的エネルギー

     2018 
     第2理科室

はじめに
 理科室の天井からバレーボールを吊るし、ぶらんぶらんさせます。何が始まるのだろう、とワクワクしますが、実は力学的エネルギーを説明するための『振り子』です。

 たった1つのボールが、大きな期待感を持たせ、力学的エネギーが何やら面白いものに感じてしまうのですから、是非ともお試しください。サッカー部をはじめ、元気があるこどもや目立ちたがり屋の子どもにヘディングさせてください。

関連ページ
振り子のもつエネルギー(力学的エネルギー)2004年度
国際単位系(SI)


上:大きな振り子を設置した理科室


上:


本時の目標
・位置エネルギーと運動エネルギーは力学的エネルギーであることを知る
・それらは互いに移り変わることを理解する
・力学的エネルギーは時間によって変化しないことを知る
・いろいろなエネルギーについて確認する

準 備

生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • ファイル
  • 本日の学習プリント(1 /人)
  • バレーボール(1)
  • 紐とガムテープ(1)
  • 天井に固定したフック(1)

授業の流れ
(1)本時の授業内容の紹介 (1分)

 直近2時間で学習した『位置エネルギー』と『運動エネルギー』、および、その他のエネルギーについてザックリまとめることを示します。

(2)振り子の紹介 (10分)
 教室中央に振り子を取り付けると、子どもたちの集中力は一気にたかまります。揺らしてください。もう、振り子しか見ていないことに気づくでしょう。先生がSports好きなら、ヘディングしてください。大喜びです。


上:ヘディング失敗(空振り)で盛り上がる(授業最後にトライするA君)


上:鮮やかに何度も決めるサッカー部のB君

 授業では、ヘディングをしたい生徒を募集して遊んでもらいました。ポイントは、運動エネルギーと位置エネルギーですが、はじめは難しい言葉を言わないようにすることです。へディングの成功や失敗、それを見る子どもたちの自然な言葉に合わせ、少しずつ用語を混ぜていきます。『エネルギー』、『運動エネルギー』『位置エネルギー』の順に追加していくと良いでしょう。

 位置エネルギーが最大になるのは、振り子が最高点に達した時です。この時、振り子は静止(運動エネルギー)がゼロになることを確認してください。

 「位置エネルギーがゼロになるのはどこですか? 指でさしてください。・・・(子どもたちが、最高点を指さしたら)・・・え、わからない人がいるみたい! しっかり指さしてくだい! ・・・(多くの子どもたちが指さしたら)・・・そうですね。(最高点を指さしながら)ここです。(振り子がいってしまったら、戻ってくるのを待ち、最高点に達したら「ここ」と言うことを数回繰り返す)・・・(その後、最高点に達した振り子を、下から受け取るように捕まえて)最高点で振り子は一瞬、静止します。この一瞬をつかまえることができるSports選手は、正確にスパイクしたりボールを打ったり蹴ったりヘディングしたりすることができます。けん玉という遊びでは、この位置を見極めることで、簡単に玉をとらえるとができます」

振り子の実験上のポイント
(1)手で打つのはダメ(力が大きくなり過ぎて危険)
(2)ボールに紐を何重か巻いて、最後に布テープで固定する
 ※『振り子のもつエネルギー(力学的エネルギー)2004年度』は太い紐を使用
(3)紐は、天井に確実に固定する(今回はモグネジ式フックを使用)

(3)力学的エネルギーの紹介 (1分〜3分)
 
位置エネルギーと運動エネルギーは、合わせて力学的エネルギーと言います。


上:力学的エネルギーの板書

(4)力学的エネルギー保存の法則(5分〜10分)
 位置エネルギーと運動エネルギーは互いに移り変わりますが、それらの合計は変わりません。これを力学的エネルギー保存の法則といいます。なお、中学の教科書は『時間』を考えていませんが、次のようにまとめることもできます。

力学的エネルギー保存の法則
 力学的エネルギー(位置エネルギーと運動エネルギーの合計)は『時間によって』変わらない。

右:一般的な教科書に準じたまとめ

エネルギー保存の法則(熱エネルギーの第一法則)
 エネルギー(力学的エネルギー、化学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなどすべてのエネルギの合計は『時間によって』変わらない。

 指導方法は、2004年度の実践『振り子のもつエネルギー(力学的エネルギー)2004年度』をご覧ください。


上:振り子による、力学的エネルギー保存の法則の板書

(5)振り子はなぜ、止まるのか(3分〜5分)
 力学的エネルギー保存の法則が成立するなら、振り子は永遠の動き続けるはずです。同じ高さまで上がったり下がったり、一番下ではいつも同じ速さになるはずです。しかし、実際の振り子はだんだん元気がなくなっていきます。なぜでしょう?

 子どもたちに質問すると、「空気抵抗があるから」と答えます。

 確かに、空気抵抗が一番大きな原因ですが、今日の授業で欲しい単語は『エネルギー』です。振り子が持っている力学的エネルギーが他のエネルギーに変わったことを知らせ、実際、何になったのか考えさせます。そして、自然界にはいろいろなエネルギーがあること、それらのエネルギーの総和が一定であること(エネルギーの保存の法則、熱エネルギーの第一法則)へ導きます。

 「振り子をみてください。だんだん元気がなくなっていきます。これは当たり前ですが、力学的エネルギー保存の法則によれば、永遠に動き続けるはずです。実際、高性能な振り子にすればするほど、長時間同じように動き続けるであろうことは、簡単に想像できると思います。ということは、今、みなさんの目の前にある振り子は、なぜ、止まってしまうのでしょう。一番大きな原因は空気抵抗ですが、空気抵抗と答えるのではなく、『エネルギー』という言葉を使って答えてください。振り子のもつ力学的エネルギーは、一体、何というエネルギーに変わっていくのでしょう!」

 「もう一度振り子を見て(振り子をしっかり揺らして)ほら、どんどん揺れ幅が小さくなっていきますが、それは何エネルギーに変わったからですか? 少なくとも、みなさん全員が納得できるエネルギーは2つあります。何エネルギーと何エネルギーでしょう? わかった人!」

振り子の力学的エネルギーは何エネルギーになるか
(1)熱エネルギー
  「天井のフックに着目してください! そして、とても重い振り子を使った場合を想像してください」
(2)音エネルギー
 「目を閉じなさい。目を閉じると、みえてくるエネルギーがあります」
(3)空気を動かすエネルギー(空気の質量 × 動かした距離)
 エネルギーの大きさ(J、ジュール)=力の大きさ(N)×距離(m )

 「(中略)・・・ということで、熱エネルギー音エネルギーの2つは簡単に理解できると思いますが、最後の空気を動かすエネルギーは深く考えるとかなり難しいものです」

(6)その他のエネルギー & エネルギー保存の法則(5分〜10分)
 (5)で熱エネルギー、音エネルギー、空気を動かすエネルギーが出たところで、その他のエネルギーについて考えさせます。以下は、A組での発表です。


上:力学的エネルギー、その他のエネルギーに関する板書

 教科書にいろいろなエネルギーの例が出ているので、それを参考にさせるとよいでしょう。その後、力学的エネルギーを含む、エネルギー全体の総和は変わらないこと(エネルギー保存の法則、熱エネルギーの第一法則)についてまとめます。

エネルギー保存の法則(熱エネルギーの第一法則)
 エネルギー(力学的エネルギー、化学的エネルギー、熱エネルギー、電気エネルギーなどすべてのエネルギーの合計)は『時間によって』変わらない。

(7)本時の感想、考察 (5分)


授業を終えて
 子どもたちの反応に合わせて脱線し、知識を膨らませたり深くしたりすると良いでしょう。ただし、名古屋市の公立中学校の理科室にはクーラーがありません。

 室温が30度Cを超えているような場合は、無理しないでくださいね。梅雨の真夏日には、体感温度は猛暑日のようになります。また、32度C以上になると、死亡する危険性が一気に高くなるそうです。十分に気をつけてください。

関連ページ
振り子のもつエネルギー(力学的エネルギー)2004年度
国際単位系(SI)

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学

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(C) 2018 Fukuchi Takahiro