このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

4 タバコから中学生を視る

1 過去のものになりつつあるタバコ
 タバコの有害性が認められてから長い時間が経ち、全世界のタバコ生産量は毎年のように減少しています。日本では、2010年10月1日からタバコの税率が上がり(約65%)、タバコが消え去る日が近づいています。大人が吸わなくなれば、中学生が吸うこともなくなるので、私は20年以内に中学校現場の喫煙問題が消滅するだろうと予測しています。問題がなくなればそれでお終いになりますが、完全になくなってしまう前に、喫煙という歴史的行為について私の経験を残します。これは狭い範囲のものですが、タバコを鍵として中学生を取り巻く環境(大人社会)が変化を視ることができます。10年単位で記しますが、とても大きな変化があることに気付くでしょう。

2 1970年代は、仲間を作るための道具
 私が中学生の頃の話です。タバコを吸うのは、いわるゆる『不良』と呼ばれる人達でした。彼らはとても仲が良い集団で、仲間の一員であることを確認するために喫煙しているように見えました。タバコは1つのステイタス・シンボルであり、一般生徒と区別するための道具でした。友達と一緒に喫煙することで、連帯感を深めることができたのではないかと思います。なお、当時の私は陸上部だったので、心肺機能を損ねるタバコは大嫌いでした。今でもタバコは嫌いです。

3 1980年代は、好奇心をくすぐるもの
 まだまだ一般生徒にタバコが流行していない時代です。ごく少数の生徒だけがタバコを吸っていましたが、1970年代のような連帯感を深める要素は減ってきました。生徒が個人単位で、それぞれの好奇心をくすぐる対象物の1つとして、タバコを吸っていた時代です。高価な珍しいライターやジッポが流行していました。興味本位のことが多いので、喫煙回数も本数も少なく、常習性は低かったように思います。保護者まで指導すると、ほとんど再発しない時代でした。教師は保護者から尊重されていた時代です。

4 1990年代は、大人に反抗する道具
 タバコは大人(親や教師など)に反抗するための道具になっていました。道具としてのタバコは自動販売機で、ライターは100円で簡単に購入できるものでした。しかし、生徒の多くは金を支払うことなく、万引きによって入手していました。この万引きは、日本経済と深い関係にあり、2010年現在も増加の一途です。また、家庭内の環境も悪くなり、それに合わせて少年犯罪が増えてきたように感じます。今から思うと、中学生の喫煙は『愛情不足の子ども達からのSOSだった』ように思います。そして、この『家庭崩壊』は、次の時代の『授業崩壊』と『モンター・ペアレンツ』へつながります。
関連ページ『タバコが蔓延した頃(走らない先生から)』

5 2000年代は、小学校でタバコを卒業する時代
 複数の生徒が教室を立ち歩き、授業が成立しないという『学級崩壊』が始まりました。これは中学校ではなく、小学校で流行しました。私はそのような場面に遭遇したことはありませんが、もし、私が当事者なら、公務執行妨害で保護者を呼び出して厳重注意するでしょう。もし、協力や改善が見られないなら、外部機関へ協力を依頼します。私と同じように、真面目に授業や学習をしたいと努力している子どもの権利を守るためです。このようになったのは、前に述べた『モンスター・ペアレンツ』が登場し、利己的な考えで行動する親が増えてきたからです。最強のモンスターの1人は、次のように先生を攻撃するでしょう。「私は、学校や外でタバコを吸わないように家で吸わせています。いつでも強く言っています。だから、先生もしっかりしてください。学校で吸うのは先生の監督が悪いからです。学校や帰り道で吸うようになったのは先生の責任です。」

 ここで、未成年者喫煙禁止法という法律を紹介しましょう。このようなモンスター・ペアレンツは、関係機関に通報して罰金を払うべきです。

参考資料: 未成年者喫煙禁止法
 日本では、未成年者(満20歳未満)の喫煙が禁止されています。場所は日本国内すべてです。したがって、学校でも家庭でも公園でも吸ってはいけません。これに違反すると、この法律によって次のような刑罰に処されます。

(ア) 未成年者は『タバコと器具を没収』される。
(イ) 未成年者に喫煙目的のタバコを販売した者は『50万円以下の罰金』を払う。
(ウ) 制止しなかった者は、『罰金』を払う。

→ 未成年者飲酒禁止法
→ 
覚せい剤取締法

 さて、このような時代背景の中で、喫煙は小学生3、4年で始まり、中学に入学すると同時に卒業しました。小学生のとって、喫煙は楽しいものではなく、親によって容認された『くさい行為の1つ』に過ぎないのです。したがって、中学になっても喫煙をしている生徒を指導する時は、「普通、タバコは小学生で卒業するモノでしょう。すぐに止めなさい!」と言うようにしていました。「自分だけ遅れている!」という感覚を持った生徒は、この一言で喫煙をやめました。中学生どうしの連帯感がほぼ完全に失われているのも原因の1つです。ただし、親が喫煙を勧めている場合は、完全にお手上げでした。

6 2010年の現状
 「先生、夜の公園に行ってご覧よ。中学生がたくさん集ってタバコを吸っているから。学校だけではダメだよ。ちゃんといろいろなところに目を配らなくては。私はタバコを吸っている中学生の中に入って、いろいろ話をするけれど、話をすると、みんな良い子だよ。ちゃんと話を分かってくれるから。子ども達はそれぞれ理由があって、それぞれタバコを吸っているのだから、話を聞いてあげないとダメだよ。怒っているばかりではダメだよ。」 これは、とある中学の先生から聞いた『保護者から電話』の内容です。みなさんは、この現状をどのように思いますか。私は、法律違反を奨励したり、子どもに迎合したり、子どもを取り巻く厳しい現実から目を背けることはしません。それと同時に、いけないことはいけないと厳しく指導します。理由はともかく、その行為に対して上の法律と同じように対応します。

7 ヘビースモーカーになっている中学生
 子どもは大人の鏡であることを思い出してください。驚くべきことに、最近の喫煙する中学生の多くはヘビースモーカーです。両親など身近なところに喫煙者がいます。大人の真似をして(あるいは勧められて)喫煙を始め、それを継続し、すでに喫煙が日常生活の一部になっているニコチン依存症ともいえる状況なのです。好奇心だけで始め、さっと止められるような子どもは、何度か体験するだけで自主的にタバコを止めるのが最近の実態です。喫煙する中学生は、「学校内ではがんばって我慢している」という現状なのです。

8 喫煙を防止するために
 したがって、たまたま誰か喫煙現場が見つかった程度では、「明日から絶対に吸いません」という約束はできません。私は、何度も繰り返して喫煙する者に無理な約束をさせることは「嘘をつかせるだけ」であることを知っています。私たちがしなければいけないことは簡単ではありません。子どもの家庭に踏み込み、喫煙する大人と一緒に禁煙を試みる。あるいは、彼らのタバコの供給源を遮断することです。数万円単位の小遣いを孫にあげる祖父母、子どもの両親、保護者の生活習慣と意識を変えなければいけません。専門のカウンセラーや医者の助けが必要なレベルです。ちなみに、日本以外のほとんどの国は、タバコ(ニコチン)を麻薬として分類しています。
→関連ページ『タバコ常習生徒にする話
→関連ページ『
麻薬と覚醒剤

9 計画的に大量のタバコを窃盗する中学生
 最後に驚くべきことを記しますが、資金のない子ども達は、タバコを窃盗します。集団で計画し、カートン単位でタバコを盗みます。被害金額は数万円です。かつての警察は、喫煙少年に対して注意するだけでしたが、厳しく追求するようになっているように感じます。
→関連ページ『万引きという窃盗、窃盗犯

2010年10月16日

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