このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第84時
観察12 堆積岩(地層をつくる岩石)

     2013 2/27(水)、3/1(金)
     理科室、(中庭)

はじめに
 堆積岩6種類の観察は、2時間使うのが理想です。2002年度は2時間使い、校庭で礫岩やチャートなどを採取しました。しかし、今年は時間の都合で1時間です。何を省略するかは大きな問題ですが、いつものように3クラスで微妙に変化させました。全クラスで確実に行ったものの1つは石灰岩と塩酸の反応です。駒込ピペットに塩酸を取り、私が1班ずつ個別指導しました。画像記録は2002年度をご覧ください。

2002年度(1年生)の実践(3時間完了)
観察6 地層をつくる岩石1(堆積岩)
観察7 地層をつくる岩石2(堆積岩)
. 2001年度(3年生)の実践(2時間完了)
観察8 礫岩・砂岩・泥岩
観察9 凝灰岩・石灰岩・チャート


上:校庭の砂から選別したいろいろな色のチャート(画面右端はピンセット先端部)


本時の目標
 堆積岩=地層をつくる岩石、であることを知る
 堆積岩は、粒の大きさで礫岩・砂岩・泥岩に分けられることを知る
 凝灰岩は、火山噴出物が堆積したものであることを知る
 石灰岩は、サンゴや貝のしがい(炭酸カルシウム)が堆積したものであることを知り、塩酸と反応して二酸化炭素を発生することを確認する
 チャートは、微生物の放散虫のしがい(二酸化ケイ素)が堆積したものであることを知り、屋外にある多様な岩石からチャートを選別し、標本にする

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント、1/人)
  • 堆積岩標本(10種類)
  • シャーレ
  • 先の尖ったピンセット
  • ろ 紙
  • セロハンテープ

授業の流れ
(0) 始業前の準備
 理科室に移動してきた生徒に、堆積岩標本箱(10種類)を準備させました。標本箱は1班につき1つです。


上:堆積岩標本(10種類)
 上段左から右へ1番〜5番、下段左から右へ6番〜10番、クリックすると標本解説

(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)
 2クラスは、泥岩・砂岩・礫岩 → 凝灰岩 → 石灰岩 → チャートの順に行いました。以下(2)〜(6)の通りです。

 しかし、1クラスだけ逆順で行いました。屋外の砂からチャートを選別・標本づくりから始めました。始業前の放課、生徒1人ひとりにシャーレを持たせ、屋外の砂を採取させます。採取方法は第7時『運動場から鉱物を探そう』と同じなので、問題ありません。そして、理科室でチャートを選別させました。選別開始から白いチャート・石英・長石を区別できるようになるまで10分かかりませんでした。ただし、簡単な泥岩・砂岩・礫岩の観察時間は大幅に削れました。他の授業で補う予定です。

(2) 堆積岩の紹介 (5分)
 標本箱(写真上)を開け、その蓋にある解説を見ながら堆積岩10種類を確認します。いずれも水底に堆積してできたものです。古いものほど固く、新しいものは柔らかいです。とくに泥岩の標本はとても柔らかく軽いもので、それを手にした生徒達は驚いていました。

(3) 泥岩・砂岩・礫岩の観察 (15分)
 標本箱から泥岩・砂岩・礫岩を取り出し、蓋の上に並べて観察・スケッチさせます。ただし、泥岩と砂岩はスケッチできる特徴がほとんどないので、観察してわかったことを日本語で記録させます。「スケッチ時間は約3分とします。泥岩と砂岩は特徴が少ないので、それらの違いがわかるように言葉で書いた方が良いでしょう。3分たったら、スケッチの途中でも発見したことを発表してもらいます。友達の発表をまとめながら、スケッチを続けます。それでは3分間、3つの岩石の違いがわかるようにスケッチしてください! ポイントは粒の大きさの違いです。」


上:泥岩・砂岩・礫岩(左端)をスケッチする生徒


上:短時間で粒の大きさを表現したA組の板書

泥岩・砂岩・礫岩の指導上のポイント
 砕屑物、という語句は使わない
 ※10年後には教えられるようになっているかもしれませんが・・・
 泥岩が固くなると、頁岩や粘板岩になることを知らせる
 これは、堆積岩が時間(熱や圧力による変成、長い時間をかけた化学変化)によって変質することを教えるために重要です。堆積岩標本箱には、それらが入っていると思うので、クイズ形式で指導すると良いでしょう。 「泥岩はスケッチできるような特徴がほとんどないので、発見したことを言葉で記録しておきましょう。では、何か気づいた人? ・・・(写真下のように、生徒の発言を板書する)・・・さて、この泥岩は触るだけでぼろぼろ壊れそうですが、その理由はできたの岩石だからです。しかし、もっと長い時間をかけると、上から圧縮されたり、熱が加わったりして固い泥岩になります。固い泥岩は、違う名前に変わりますが、みなさんの標本箱には2つ、固くなった泥岩があります。その2つを当ててください。班で相談する時間は1分間とします。岩石番号で答えてもらいますので、番号を覚えておいてください。ヒントは、岩石標本箱の蓋にあるので、見たい人は見てもよろしい! では、シンキングタイム、スタート!」・・・(写真下のように、岩石標本の番号と名称を板書して)・・・ それでは、全員に答えてもらいましょう。相談は班の友達としたと思いますが、最終的な決断は個人にしましょう。自分の考えで手を挙げてください。(後略)


上:黒板右側に、岩石標本の番号と名称を書いた板書

 砂岩はざらざら
 礫岩はいろいろな種類の石の粒がある
 「礫岩の粒について確認しておきましょう。(礫岩を構成する1粒に『ダイヤモンド』と板書して) 例えば、礫岩にはダイヤモンドが含まれていることがあります。直径2mm以上の粒なので、かなり目立つと思います。砂岩や泥岩にもダイヤモンドが入っている可能性がありますが、サイズが小さくなるのでわかりません。ダイヤモンドをすり潰して直径2mm以下にすれば砂、直径1/16mmにすれば泥になります。初めはダイヤでも、小さくすると砂や泥になってしまうわけです。
 さて、もう1つ紹介しましょう。(黒板に『プラスチック』と書いて) 礫岩にプラスチックが含まれることがあります。プラスチックは人類がつくったもので、熱よってなくなってしまう可能性もありますが、この標本箱のようなできたてに近い泥岩のような状態でできるなら、とても珍しい礫岩として含まれる可能性も否定できません。
 さらに、(黒板に『ヒトの骨』と書いて) ヒトの骨が入っている可能性があります。ヒトではなくて動物や植物が入っていれば、それは? ・・・そうですね、化石です。昔の生物が生きていた証拠を化石といいますが、化石は次の時間に勉強します。楽しみにしていてください。
 最後にもう1つ。(『砂岩』と板書して) 礫岩の中に砂岩が入っていることがあります。同じように、泥岩が入っていることもありますし、礫岩の中に別の種類の礫岩が入っていることもあります。
 ということで、礫岩はいろいろな粒が含まれている楽しい石です。楽しい石と書いて礫、礫岩は楽しい石なのです。みなさんの標本箱にある礫岩はちょっと面白いだけですが、世界には楽しい礫岩がたくさんあります。楽しい礫岩にはいろいろ含まれているので値段も高くなりますが、それだけ面白くなります。


上:B君の学習プリント

(4) 凝灰岩・石灰岩・チャートの主成分と特徴 (7分)
 下表のように、凝灰岩・石灰岩・チャートの成分や特徴について簡単にまとめます。

凝灰岩 石灰岩 チャート
マグマ 炭酸カルシウム 二酸化ケイ素
・火山噴出物
(火山灰、軽石)
・生物の死がい(サンゴ、フズリナ、貝)
・セメント、石灰と同じ成分
・塩酸と反応し、二酸化炭素を生じる
・熱変成で大理石になる
・生物の死がい(ケイソウ、放散虫)
・いろいろな色がある
 (白、黒、赤、黄、緑、茶)
・塩酸と反応しない


上:板書例
(これは一気に書いたものではありません。石灰岩とチャートは、以下の(5)〜(7)に合わせて少しずつ追加していきました)

(5) 石灰岩について調べよう! (10分)
 実習を2つ行います。1つは石灰岩の標本づくり、もう1つは石灰岩と塩酸の反応の確認です。

石灰岩の標本づくりのポイント
 写真下のように、水素発生用の石灰石を学習プリントに添付させました。


上:理科室の窓際のテーブルに置いた石灰石


上:石灰石を添付したD君の学習プリント

石灰岩と塩酸を反応させるときのポイント
 塩酸は、原液を5倍〜10倍に薄めたものを使います。この塩酸20mlを50mlビーカーに入れ、もう片手に5ml 駒込ピペットを持ち、理科室の各班を回ります。それぞれの班で、標本箱の岩石10種類1つひとつに塩酸1滴ずつ落としていきます。反応しないものから試したり、反応するものを当てるクイズ形式にしたりするのも良いでしょう。


上:校庭で採取した岩石を、教卓に準備した塩酸で生徒自身が確かめる様子(2002年度の実践から

(6) チャートを集めよう! (10分)
 校庭の砂からチャートを選別、さらに、それらの標本をつくります。時間があれば、生徒に採取させるべきですが、ない場合は先生が校庭から集めておきます。下の写真は、私が集めてきた砂〜礫です。これを水で洗ったものを生徒に配付しました。

水洗いする→

左:横幅45cmのバットに集めてきた校庭の砂〜礫
右:それを洗浄したもの


上:自分で集めてきた砂を洗浄する生徒


上:同上

洗浄後の砂からチャートを選別させる方法
 
「初めに確認します。シャーレに水が入っていますか? 石の選別は水中で行います。次に、シャーレの下は黒ですか? バックを黒にして、石の色がよくわかるようにしましょう。準備ができたら、さっそくチャートを探します。

 まず、緑色のものを3つ選びなさい。それがチャートです。・・・(あった! という声がすぐに聞こえるはずです)・・・緑色があれば、99%チャートです。

 次に、青、または、青緑のものを探しなさい。それもチャートです。・・・(これも、あった! という声が聞こえますが、先ほどの1/5程度になります)・・・ 次に、黄色や黄土色のものを探しなさい。それもチャートです。・・・(あった! という声はたくさん聞こえますが、感動は薄くなっているはずです)

 次に、赤や茶色の石を探しなさい。それもチャートです。・・・ということで、もう気づいた人もいると思いますが、チャートは何色でもあり!です。つまり、黒色、灰色、白色もあります。ピンク色、水色もあります。探してみなさい。

 チャートを見分ける、選別するポイントは質感です。ガラスのような質感です。チャートとガラスの主成分は、2つとも『二酸化ケイ素』です。さらに、二酸化ケイ素は石英(水晶)の主成分ですが、石英とチャートは透明感が違います。石英は透明ですが、チャートは不透明感です。もう一度確認すると、チャートのポイントは『ガラスのような質感』です。白いチャートと白っぽい石英を区別できれば、かなりのものです。

 上級者は、長石の白とチャートの白を区別できます。長石の白はぼさっとしていますが、チャートの白はガラスのようです。長石はガラスのような質感がないので、洗っても汚れた感じします。逆に、チャートはガラスの白、不透明なガラスの白を感じます。長石とチャートを区別できるようになれば、上級者です。がんばってください。


上:ろ紙の上に取り出されたチャート(クリックすると拡大)


上:チャートに関する板書


上:全てチャートだと思います!


上:A組の板書


上:B組の番粗


上:C組の板書


上:Eさんの学習プリント


上:Fさんの学習プリント


上:G君の学習プリント


授業を終えて
 今日は3つのお楽しみがありました。1つは礫岩が楽しい岩石であることの発見。1つは石灰岩から発生する二酸化炭素。1つはチャートです。どれもこれも捨て難い魅力があるので、どこかで穴埋め補習をしたいです。

関連ページ
観察6 地層をつくる岩石1(堆積岩) 1年(2002年度)
観察7 地層をつくる岩石2(堆積岩) 1年(2002年度)

実践ビジュアル教科書『中学理科の地 学
 第章 地層と堆積岩   泥岩・砂岩・礫岩   p.99、p.97 
 生物が堆積したチャート、石灰岩   p.98、p.99 
 火山噴出物が堆積した凝灰岩   p.100 

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観察11 地層の広がり(柱状図)

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観察13 化 石

中学校理科の授業記録1年(2012年度)

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